17.彼と彼女の世情
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考えろ。考えろ。考えろ。
思い出せ。思い出せ。思い出せ。
あいつの話を思い出せ。
タカハシの話を思い出せ。
日本ならどうだ。
日本では………古くは古代に遡る。明治以前までは、同性間恋愛にはかなり寛容だったのだそうだ。
ただし、記録に残っている限りでは、古代から存在していたのは男性間恋愛の方である。『歴史』と言うものの特性上、女性については歴史に残りにくいからわからないが、ない、ということはなかったろう。
あ、いや。
正確には、男性間恋愛、ではないかもしれない。
記録に残されているのは、率直に言ってしまうところの、男色。つまりは肉体的関係が主だ。必ずしもプラトニックなものではなかったかもしれない。
とにかく、わかっているところで少なくとも男性間恋愛は割に公然と行われていた、ということだ。
さすがは万象に寛容な日本。よく言っておおらか。悪く言って節操がない。
それでも、江戸時代に最盛したのちは明治期に文明開化の煽りを受けて地下に忍んでいったということだが。
つまりは根源的に、日本人は同性間恋愛を忌避するということはない、と考えていいだろう――――
あ?
いや、違うだろう。いつの間にか趣旨がずれている。
考えるべきは、別に同性間恋愛の歴史を考察することではない。
山代は、城ケ崎に訊いたのだ。
女が女を好きだなんて、変でしょう? と。
城ケ崎自身が、どう考えているか、だ。
城ケ崎が探していたのは、城ケ崎の気持ちである。
かなり回り道したようだが………いや、でも、無駄ではなかった。
考えが、まとまった。
気持ちが、定まった。
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