16.彼と彼女の外情
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考えて、考えて、考える。
同性間の恋愛。平たく言えば、同性愛だ。
それは、古来一貫して異性間恋愛が普通であると考えられ、同性愛は異端視されて排斥され続けてきた歴史があるから、どこか背徳的な気配がするのではないだろうか。
しかし、現代は違う。
世界へ視線を向けてみれば、もう一概に非難されるような感情ではない。
国連に向けてもたびたび同性愛者への差別撤廃を謳った宣言が提出されているし、某大国の大統領はつい先日にも公的に認可する旨の声明を出したし、それに後押しされる形で著名人も次々と『カミングアウト』していった。そして、おおよそ世間にも受け入れられている。
アジア・アフリカ圏ではまだ認められない地域も少なくないが、ヨーロッパへ行けばかなりの地域で法的に保障されているのだ。
宗教においてさえ、教派によっては認めているものもあったはず。
そうだ、古来排斥されてきていたとはいえ、確か古代ギリシャにおいて同性愛は一般的ではなかっただろうか。あそこは男性間恋愛だった気もするが、まあ同じと考えていいだろう。それどころかその当時では、そもそも異性愛との区別がなく、同性愛という概念すら存在しなかったとか。そして、それは現代に至っても違和感なく受け入れられ………て、る? 昔、高校教師(男)が話していたのだが、若い頃に友人(男)と連れ立ってギリシャへ旅行した際、とある地区に入ったところ恋人同士と認識されたという………本当か?
いや待て。古代ギリシャの同性愛、少年愛はあれ、ちょっと違う理由があった気もする………青少年を正しく導く、だとかそういう。
………やめておこう。泥沼化しそうだ。
しかしギリシャと言えば、アポロンとヒュアキントスの神話があった。
事の顛末は………確か、こうだ。
太陽神アポロンは最高神ゼウスの息子、ヒュアキントスを愛していた。二人はしばしば仲睦まじく遊戯に興じた。
しかし、実はこのヒュアキントスを愛する者がもう一人いた。西風の神ゼピュロスである。彼は以前に、ヒュアキントスに求愛して拒絶されていた。
ゼピュロスはアポロンとヒュアキントスの仲を羨んだ。嫉妬した。
そして嫉妬に狂ったゼピュロスは凶行に走る。
ある日、アポロンとヒュアキントスは仲良く円盤投げに興じていた。
ゼピュロスは、アポロンが円盤を投げた瞬間、それがヒュアキントスに当たるように風を操った。
ヒュアキントスは、頭部に向けて逸れてしまったアポロンの投げた円盤を受けて、死亡する。
死因は恐らく頭蓋陥没骨折。
そして、ヒュアキントスの頭部から流れる血から花が咲き始め、その花はヒヤシンスの名が付けられたという――――
「…………………………」
何で俺、こんなにいろいろ知ってるんだろう。
別に、調べたことはなかったよな……………?
「…………………………」
ああ、そうだ。いつだったか忘れたがかなり前に、ゼミのプレゼンでこういうことを発表していた奴がいたのだ。
どんな思い入れがあったのか不明だが、妙に熱を入れて議論していたので印象に残っている。
名前は………そう、確かタカハシ。
サンキュータカハシ。
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