14.彼と彼女の実情
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『こいつがこの間話した城ケ崎』
佳世が美樹の紹介で初めて城ケ崎に会ったとき、城ケ崎に対して抱いた率直な印象は『何だか冴えない愛想のない奴』だった。
『あ、君が城ケ崎君! 私、山代・佳世。よろしくー』
『ん、ああ』
何だか気の抜けた顔をしていて、どうして自分はここにいるんだろうとでも思っていそうな表情だった。
もっとも、城ケ崎は今でもたいていそういう顔をしているが。
事前に美樹から、城ケ崎はかなり人見知りで愛想がないと聞いていたが、確かに城ケ崎は無愛想だった。
無表情で。
寡黙で。
いるかいないかわからない奴。
それでも、美樹と一緒になってつるんでいると、段々と慣れてきたのか少しずつ自分から話すようになっていった。
どんな本が好きだとか。
どの先生が気に入らないだとか。
真面目なことも、下らないことも、いろいろ話した。
城ケ崎は妙なところに熱意をもって、いつだったかにはロリコンについて大真面目に話していた。
ロリコンの起源はナントカっていう小説家の著作にある、だとか。
もともとのロリコンは少女によるおっさんへの恋心だったのだ、だとか。
佳代も美樹もドン引きしていることにも気に留めず、滔々と一時間ほど話し通したりした。
その後は美樹と一緒に大いにからかい倒したものだ。
もちろん、城ケ崎にはできない話もあった。ガールズトークに男の城ケ崎は入れないし、女子の悩みにも城ケ崎は口を入れられない。佳代も美樹も、そういう話は城ケ崎のいないところで話していた。いや、美樹は割と平気で城ケ崎がいても気にせず話していたか。
でも、少なくとも相談事に関しては、佳代はほとんど美樹だけにしていた。男子には理解できない悩みだってあるし、佳代は美樹を信頼していたからだ。
だから、佳代は城ケ崎に相談をしたことはない。
少なくとも、『相談』としては、一度も。
城ケ崎は全く気付いていなかっただろうが、佳代は実は何度か、城ケ崎にかなり真剣な相談をしたことがある。
もちろん。それが相談だなんて全く思わせずに、あくまでも何でもないことのように装って調子も軽く、冗談を言うかのように。与太話として、四方山話だとして、自分のことだ、などとは決して悟られないように。
美樹にもできない相談を。そして、誰にもできない密かな悩みを、密かなままに。
美樹なら、そういったところにはかなり聡いから、どんなに誤魔化しても看破されていたかもしれない。だが、良くも悪くも、城ケ崎は『鈍感』だった。
佳代がそう装ったように、冗談として、軽い話のネタとして、話を聞いて。
そして真面目に答えた。
真剣に考えて。
本気で答えた。
佳代の偽りが見破られていたということはまずないように思う。そういうときはいつだって、城ケ崎は最後には「何を真面目に考えてんだかな」などと照れていたのだから。
城ケ崎は、自分は誰かに相談されたことなど一度もないと、本気で思っているだろう。
恋愛相談などされたことは、ないと。
でも、実を言うと、佳代は城ケ崎に、恋愛相談をしたことだってあったのだ。
当時好きだった男子との話だったのだが、全く関係ない架空の話として持ちかけた。
そして、一度口を滑らせかけて、背筋の凍る思いをしたのだが、城ケ崎は全く気付かずにふんふんと聞いていた。
全て聞き終えた後で、これはあくまでも俺の個人的な意見なんだけれども、といつものように一言前置きして、とつとつと城ケ崎は自分の思うところを話してくれた。
今となってはそんな些細なこと、城ケ崎は全く覚えていないだろうが。
それがどれだけ佳代の力になったことか。
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