8,平原にて 日々を振り返って 後編 【桃香視点】
二話連続で、他の子視点は初めてですね。
それでもやはり、一章のしめは彼女にしてもらいたかったんですよ。
休暇を言い渡され、それまでに仕事を終わらせようとみんなが協力し合って仕事をしているのはこれまでにないくらい充実していて、仕事をしているのにこの三日間がとっても楽しく感じられた。
もちろん遊んでたわけじゃないよ? 自分が書庫に行くついでに参考になる資料を持って来たり、互いに目が行かないところの話をしたり、四半刻の休憩の間にみんなでちょっとお茶したり、そんなちょっとした変化が日常の一部に入っただけ。
立場とか関係ないなんて言ってる私たちが気づいたらそれを一番気にしてて、同じ席についてお茶を飲んで一息ついたとき、まるで憑き物が落ちるみたいに自然と思いはどこかへとおさまった。
あぁ、きっと私たちの理想ってこうしたことだったんだなぁ、って。
いろいろあったし、遠回りしちゃったけど、これでいいんだって今は思える。
『私たち、いつから肩肘張ってたんだろうね?』
けど、そんな当たり前のようなことを私たちはしてなかったことに気づいて、みんなで顔を見合わせて笑っちゃった。
そうそう、朱里ちゃんは残ってお仕事なんて言われてたけど、周倉ちゃんの試験を見る以外はあまり仕事がなくて、実際はほとんどお休みと同じなんだってことをこっそりと王平さんが教えてくれた。朱里ちゃんもそのことを知らないし、法正さんが『仕事の緊張感をなくすから』って言わないつもりだったみたい。
『城を完全に空けるわけにもいかないじゃーん?
でも、私も正ちゃんも客将扱いだしー。黄巾乱が終わって、一段落してー、余裕が出来ても、筆頭軍師見張りにつければみんなも安心っしょー?』
そのことで少し王平さんとは口論っていうか、私が一方的にあれこれ言っちゃったんだよね・・・・ だって、そんな気遣いしてくれる人たちが私たちに何かしてくるなんて思うなんて、私には出来ないよ。
王平さんは笑って明確な理由を結局話してはくれなかったけど、もしかしたらそれは私たちにではなく、他の諸侯へ見せるためのものだったとしても、二人を疑ってるなんて形にだってしたくない。だって二人はもう、大切な仲間だって私は思っちゃってるもん。
「それも私の勝手な想像なんだけどね」
『信じることは、真名を預けること』、それが当たり前だと思ってきた私には真名を預けてくれない二人に戸惑っていて、でも、信じたいと思う不思議な人たち。
「不思議だよね、怒られてばっかりなのに」
信じたいから、信じる。私がそうしたいから、そう思うから、信じる。
とっても単純な答えを日記に書いてみると、なんかこれと同じようなことを王平さんが言ってたような気がする。
「うん! これでいいんだよね」
難しいことは後から考えればいいし、何かあったらその時に私がしたいようにしよう。その時、どんなに苦しくなっても、私は受け止めてみせる。
「一人じゃない、もんね」
それから周倉ちゃんの試験内容は流石に教えてくれなかったけど、もっと愛羅ちゃんの傍にいることが出来るから張り切ってるみたい。周倉ちゃんは愛羅ちゃんが私たちに距離を置いていた時からずっと慕ってたし、嬉しいんだろうなぁ。ただ、愛羅ちゃんが居ないとちょっと変わっちゃうけど。
でも、私たちが見てないときでも慕ってくれた周倉ちゃんに愛羅ちゃんは無自覚に救われた部分はあるだろうし、そんな子が副官になってくれたら心強いと思う。愛紗ちゃんが将軍である以上、戦場だとそんなに一緒に行動できないから、武官の数は足りてない現状だと鈴々ちゃんとの行動もよっぽどのことがない限り出来ないもんね。
それに、もし周倉ちゃんのあれが普段の仕事に支障きたすようなら、法正さんがお説教しないわけがないしね・・・・
「はぁ・・・・ これでいいかな」
日記を書き終えて筆を置いて、寝台に横になる。
みんな、明日の休暇のために仕事を終わらせようとしてい努力の甲斐もあって、奇跡的にご主人様も私も仕事を終わらせることが出来た。
「法正さん、何も言わなかったなぁ」
何か一言くらい言ってくれてもいいのに、書簡を確認した後は何も言わず頷いて、自分の部屋へと戻っていってしまった。
「考えても仕方ないよね、もう寝ちゃおっと」
楽しい明日のために私はいつもより少しだけ早く灯りを消して、寝ることにした。
そうして休日である今日、何故かお弁当を持っているのは担当した筈の愛紗ちゃんではなく鈴々ちゃん。しかも、愛羅ちゃんは心底驚いたような顔をしていて、ご主人様も青ざめた顔をして、お弁当を凝視してる。何かあったのかな?
「鈴々殿、それは・・・・?」
「その中身は、昨日のあれじゃないよな?」
「あれ?」
恐る恐る聞いてる二人と、状況がいまいちわからない私。愛紗ちゃんはどうしてか視線を逸らして遠くを見てるけど、何で?
不安になってる二人の前で鈴々ちゃんがお弁当を開けると、そこにはいつだかご主人様が言っていたお米を握って作った『おにぎり』が綺麗に並んでいた。もっとも、ご主人様が言ってた白米じゃなくて、チマキの形を変えたものと、大きな漬物に包まれたものが並んでいてすっごく美味しそう。
「ほぅ、これは美味そうだな」
そう言って覗き込んできたのは華陀さんで、華佗さんたちも診療所が本格的に始まる前である今しか休暇をとれないだろうからって、私たちと一緒に近くの森に遊びに行くことになったんだよね。でも、私たちも休暇なんて、誰に聞いたんだろう?
「あらん、あたしもこれくらいは作れるわよん?
ダーリンとご主人様が望んでくれるなら、女体盛りだってしちゃう」
華佗さんとご主人様を交互に見てから頬を染める貂蝉さんは恋する乙女で、なんだか微笑ましいなぁ。
「絶対にすんな!」
「期待されちゃったわん、これでしなくちゃ漢女の名が廃れるねぇ」
「前振りじゃねぇし?!
つーか、頼むから腐の文化と一緒に廃れてください! そんな男にとって危険な名は!!」
そう言いながらご主人様は、貂蝉さんに接吻を交わしちゃいそうな距離で叫んでる。ご主人様は怒るといろいろ見えなくなっちゃうけど、特に距離感は忘れがちだよねー。
「ご主人様と貂蝉さんは仲良しさんだねー」
「桃香?!」
おもわず思ったことを口にすると、ご主人様は悲しそうに叫んでる。ちょっと誇張はあるかもしれないけど、朱里ちゃんが書いてる話はあながち間違ってないのかも? それに内容はともかくああした話って仲良くなきゃ、考えることも出来ないもんね。
うん、私の方からも朱里ちゃんの執筆活動は応援しようかな。私たちが仲良いっていうだけで、民のみんなも安心しそうだし。何より、普通に読んでいても面白いもんね。
「誰とでも仲良しって、すっごく素敵なことだよね」
「桃香ーーーー???!!!」
だから、どうしてご主人様はそんなに悲しそうな顔するんだろう?
「ところで鈴々。
その弁当は一体どうしたんだ? まさか、自費で買ったのか? それにご主人様が持っている釣竿は・・・?」
愛紗ちゃんのその問いかけに、鈴々ちゃんは口に指を当ててからにっこりと笑った。
「お弁当は内緒なのだ。
それが作ってくれた人と鈴々のした約束でもあるのら」
「ほら、弁当だけだと足りなかったときのためにと思ってさ。
あと、山菜とか食べれる植物も自分で調べてみたんだけど、役に立つかな?」
ご主人様も自分で進んで何かを学んでるのがなんだか微笑ましくて、愛羅ちゃんも私と同じように微笑んでいた。
「ご主人様・・・・ 変わられましたね」
「相変わらず、馬鹿なまんまだけどね。
みんなの足元にも、曹仁さんのつま先にも及ばないよ・・・ はは、同じ天の遣いなのに情けないよなぁ」
「そんなことはありません!
ご主人様は曹仁殿のようになる必要などなく、あなたらしくあってください。
その・・・・ 私が惹かれたのはそんな情けなくとも、優しいご主人様なのですから。
そう、たとえ貂蝉殿と愛し合っていたとしても・・・・ 私は諦めません。ご主人様を正しい道へと導いてみせましょう」
「何でそこで貂蝉が出てくるの?!」
なんだかご主人様、次は愛紗ちゃんといい雰囲気になってるね。うんうん、良いと思うよ~。
でも、お姉ちゃんとしてはもう少ししっかりした人を選んでほしいなぁとか思っちゃう。だって、愛紗ちゃんを幸せに出来るような人じゃないとお姉ちゃん心配。まぁ、本人たちが愛し合ってるならいいよね。結局それが、一番幸せなことだと思うもん。
「あらん? それは宣戦布告、ということでいいのかしらん? 関羽ちゃん」
「あぁ、これは私、関雲長の・・・ 女としての宣戦布告だ!」
貂蝉さんと愛紗ちゃんが向かい合って仁王立ちしてるところを、ご主人様がおろおろしてる。うんうん、恋に障害は付き物って本当なんだね。
「春だねぇ~。陽射しも、人も」
二人には聞こえないように呟きながら、体を伸ばして綺麗に晴れた空におもわず目を細める。
優しい日差し、時々浮かんで日を隠してくれる雲、お出かけにするにはこれ以上ないんじゃないかなって思うほどいいお天気。
「桃香様は主とああしなくて、よろしいのですかな?」
鈴々ちゃんを肩車しながら、不思議そうな顔をしてくる愛羅ちゃん。
えっ? どうしてそこで私に聞いてくるの?
「私? どうして?」
「桃香様が我々と出会い、選び、その先に居た方であり、共に君主という道を歩む方。それだけで恋情を抱くことは自然ではないかと。
何より以前、川に落ちた際に抱きつかれた姿を見て、そう言った感情があるのではないかと思ったのですが・・・・ 的外れでした?」
「え? 愛羅ちゃんでも、鈴々ちゃんでも抱きついてたよ?」
呼吸が止まって青い顔をしたご主人様を見て、あの時華佗さんたちが居なかったらと思うと今でもぞっとしちゃう。だから、ご主人さまが息を吹き返して元気よく叫んだとき、凄くほっとした。
でもきっと私は、あの時川に落ちたのがご主人様以外の他の誰かであってもまったく同じことをしたと思う。
「今の私の気持ちは、多分愛紗ちゃんとはちょっと違うんじゃないかなぁ?って思うんだ」
愛紗ちゃんの好きと、私の好きはきっと同じじゃない。それが変化するかどうかも、今はちょっとわからない。
でも、もし仮に変化しても私たちは姉妹で、互いの幸せを横取りしあうことは絶対にないっていう確信がある。
「だから今はまだ、ご主人様のとの関係は『相棒』でいいかも?」
半人前同士の私たちは『君主』の二文字をわけあっていて、二人揃ってようやく一人前。その関係は、相棒っていう言葉一番しっくりくると思う。
別に手を取りあうのは恋人じゃなきゃ成立しないわけじゃないし、焦ることでもないから、今はこれでいいと思っちゃうんだよね。
「それに・・・・」
前を行く私たちは不意に足を止めて、後ろで騒ぎながら歩いてくる愛紗ちゃんとご主人様、貂蝉さん。それからさらにその後ろを見守りながら歩いてくる華佗さんを映った。
「見てるのも楽しいでしょ?」
「ふっ、確かに」
「愛紗、楽しそうなのだ」
眉間に皺を寄せて、何かに駆り立てるように動いていた愛紗ちゃんはもうそこには居ない。誰にも譲らないとでもいうようにご主人様と腕を組み、貂蝉さんへと挑発するように笑っていた。
「あーーー、もう! 勘弁してくれよ!!
てか、三人も助けてくれよ?!」
ついにご主人さまが耐え切れなくなって私たちへと助けを求めてきたけど、私たちは顔を見合わせて笑った。
「どうしよっか?」
「馬に蹴られたくはないので、ここはあれでしょう」
「逃げるが勝ちー、なのだー!」
そう言って三人一緒に、目的地へと走り出す。
後ろから聞こえてくる焦ったような声と悲鳴、それでも楽しげな声と怒った声を置いてきぼりにしながら、走っていく中で私たちはずっと笑顔で、追いかけてくる四人もきっと同じ笑顔なんだろうなぁって走りながら信じてた。
やっと着いた目的の場所は一面の花畑で、近くには浅めだけどそれなりに幅のある小川が流れていた。これなら川遊びをしても安全だし、大人も安心して子どもたちを遊ばせるのに最適な場所。
そんな花畑に、愛羅ちゃんに肩車されていた鈴々ちゃんが文字通り飛び込んでいった。
「にゃははははーーー! きれーなのだー!!
すっごく甘い匂いに包まれて、きもちいーのだー!」
花びらがつくのもおかまいなしに寝転んだり、バタバタしてるその姿は年相応で、なんだかこんなに喜んでもらえると来てよかったって思っちゃった。
「こら、鈴々!
お前は相変わらず風情というものが・・・」
「あっいしゃっちゃん!」
「何でしょ・・・ぶっ?!」
そう言って鈴々ちゃんへとお説教を始めようとした愛紗ちゃんへと、私はパッと集めた花びらを頭にかける。私にしては早くたくさん集めることが出来たから、髪にも顔にもたくさん綺麗な花びらがついてて、なんだか愛紗ちゃんが少し幼く見えちゃった。
「にゃははは! 愛紗も花びらだらけで、鈴々とお揃いなのだー!!」
「あ~ね~う~え~~~!」
笑う鈴々ちゃんと、どこからどう見ても怒り心頭な愛紗ちゃん。そういえば、愛紗ちゃんが私に怒ったことなんてこれが初めてかも? 法正さんは怒るけど、他のみんなは私に対して怒らないもんね。
「あ、愛紗ちゃんが怒ったー。鈴々ちゃん、逃げよう!」
「わかったのだー!」
「逃がすか!」
私が鈴々ちゃんと手を取って駆けだすと、愛紗ちゃんがすぐさま追いかけてきた。走ったり、捕まったり、転がったりしながら、姉妹三人ではしゃぎまわっちゃった。
「昼の用意が出来ましたよ。姉上、桃香様、鈴々殿・・・・ っと、これは凄い。
土と花びらが体中についていますので、小川で軽く落としてから来てください。その間に私は、主たちが釣ってくださった魚を焼いておきますので」
「ありがとー・・・・」
体力がない私が一番へとへとで、二人はまだ体力の余力残してるみたい・・・ ちょっとは体動かそうかなぁ。毎日町を散歩するとかして、法正さんも顔を覚えてもらった方がいいとか言ってたし、お仕事が始まる四半刻くらいなら平気かな?
「桃香お姉ちゃん、体力ないのだー」
「最近書簡仕事ばかりですからね、最後に剣を握られたのはいつですか?」
「曹操さんたちとの時が最後かも・・・・?」
本当にいろいろな意味で、あの剣は持ってただけだしなー。
剣の心得なんてなくて重たくて使わないけど、なきゃいけないものっていう認識しかなったもん。
「はぁ・・・・ やはり護身程度にはお教えした方がいいかもしれませんね。それはご主人様にも言えることですが」
呆れるような溜息を吐いた後に考える仕草をして、こっそり呟いたのを私は見ないふりをして愛羅ちゃんたちのところへ急ぐ。
「あっ、桃香お姉ちゃん逃げたのだ。愛紗」
「ふふ、法正も護身は修めろと言っていた。いくら逃げても、やらなければならないことに変わりはないだろうさ」
「それもそうなのだ」
何にもきーこーえーなーい。
耳を塞いで私は疲れていたのはどこへやら、一直線にご主人様たちが待つ木陰へと駆けていった。
お弁当を食べて、木陰でのんびりしていたら、何かが一直線へとこちらに走ってくるのが見えた。
特徴的な黒の大き目な上着、額には長い鉢巻をしてる。前はその鉢巻きで一つ縛りにしてたのに、愛羅ちゃんに出会った日にバッサリ切っちゃたんだよね。女の子なのに男の子みたいな服を着てるし、最初会ったときはあの胸がなかったら男の子って勘違いしちゃってただろうしね。
「愛羅様!」
愛羅ちゃんの前にすぐさま膝をついて、満面の笑みを向けるのはいつものこと。
「紅火、どうかしたのか?
今日は試験だった筈だろう?」
「はっ! 本日、無事試験を合格し、名実ともにあなた様の右腕になる権利を勝ち得ることが出来ました。
これからもこの紅火、愛羅様のために腕を磨き、その背を守りたく思います!」
「何度も言っているが、主たちのために使ってくれ・・・・
私は将にしか過ぎないのだから、そんなことを言われても正直困ってしまう」
いつも通り、押しが強い紅火ちゃんに困った顔をする愛羅ちゃん。
まぁ、山賊だった紅火ちゃんを改心させたのは愛羅ちゃんだもん。仕方ないよね。
「紅火? あのー、なんかあったからここに来たんじゃないのか?」
「あぁん?」
「「紅火」」
「チッ・・・・・ はっ、主殿のおっしゃる通りでございます。
つい先程袁紹より『董卓討つべし』という檄文が届き、それに伴う緊急会議のため、筆頭軍師である朱里様より、皆様を呼び戻すよう命ぜられました。
ことがことであったため一兵ではなく私に任されたわけですが、ご理解いただけたでしょうか?」
尊敬する愛紗ちゃんと愛羅ちゃんに注意されて、舌打ちをしても丁寧な言葉に直したのはだいぶ進歩したよね。でも、最後の一文はいらないよね?
「わかりやすく言うとどうなるのだ? 紅火お姉ちゃん」
「『とんでもねぇことになったから、全員さっさと帰って話し合いだ』だとさ、鈴々殿。
話し合いの時間は今から半刻後、玉座にて行うとのことです。
私はそれまで警邏隊の方へ指示を出す仕事も残っているので、お先に失礼」
鈴々ちゃんの質問にすぐさま答え、その場で軽く一礼した後、すぐさま城へと駆け出そうとする紅火ちゃんへと私は声をかけた。
「ありがとう、紅火ちゃん」
「あんたのためじゃねぇし」
そう吐き捨てて、紅火ちゃんの背は遠ざかっていく。
紅火ちゃんは出会った時から力を必要として、物理的な力で自分を超えた者しか認めようはしてくれない。
男だろうと、女だろうと『強い者が正しい』っていう考えでしか彼女は動かない。武官である愛紗ちゃんたちに対して礼儀を払って、文官や君主である私たちに対する態度は仕事だと治ってきたけど、日常生活ではほとんど変わってないんだよね。
でもそれは、私が諦める理由にも、手を取らない理由にはならないんだって気づいたから。愛羅ちゃんが信じる紅火ちゃんを、私は信じる。紅火ちゃんが嫌がっても、無理にでも手を繋いじゃえばいいしね。
「みんな、帰ろう!」
『みんなと並んで、手を取りあって、これからどんなことがあっても乗り越えていってみせる』それを決めたのはずっと前。
だから、私はみんなの手を硬く握りながら、心の中で誰にでもなく誓う。
『守るなんて言えるほど私は強くないし、出来ないことだらけだけど・・・』
道を塞ぐみたいに広がって手をつなぐ先には愛紗ちゃん、鈴々ちゃん、愛羅ちゃん、ご主人様、ここにはいないけど朱里ちゃんたちだって繋いでいてくれる。
『私はもう、この繋いだ手を絶対に離さない。この手の先にいるみんなから、絶対に目を背けない』
ようやく、次は再臨に行けますね。
ずっと決めていた次を、週一投稿できればいいですが・・・・