表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/22

次へのステップ


世間はいわゆるクリスマスと言うイベントにさしかかろうとしていた。

世間一般の常識?にはずれることなく、クリスマスプレゼントをリサーチしてくる彼をのらりくらりとかわしながら(だって、宝飾店に誘うんだよ?いい機会だからとかいいながら・・・。)私は日々の生活に追われていた。



休みをあわせて、珍しく外で映画を見る約束をした。甘あまの恋愛ストーリーを希望する彼の提案を却下し、アクションホラーを目指す。開演まで時間があるので、隣の店を覗こうと連れて行かれた先は、いわゆるジュエリーショップだった。

「・・・何しに行くの?」

「クリスマスプレゼント、この間雑誌見ておまえが欲しいって言ってたネックレスがこの店においてあるんだって。」

・・・なんで、宝飾品の売り場の品揃えをこいつが知ってるんだ?しかも人の行動をよく見てるよね?怪訝そうな顔をしている私に、彼は、

「実物見て、気に入らなければやめればいいし、見るだけならいいだろう?」

彼の言葉に、もっともだと思い直し、あのネックレスの値段を思い出しながら促されて店に入る。

店の中は、クリスマスの飾り付けで華やいでいた。

「いらっしゃいませ」

笑顔の店員に向かって、彼はネックレスの特徴を伝え案内を頼む。

にっこり微笑んだ店員が、私と奴を促すように奥に設けられたクリスマス用の特設コーナーに案内する。

「ご希望のものはこちらにあると思うんですが。」

店員に促されて、ショーケースを見ると、あった あの時雑誌に載っていたネックレスだ。でも、名のとうったブランド物のそれは値段もそれなりだった。

「どう?」

いつの間にか、隣にたって肩を抱いてきた彼の顔をみながら、私は、ためらいがちに口を開いた。

「どうって・・・素敵だとは思うけれども・・・ねえ・・。」

私のためらいをきずいてないのか、無視しているのか、試着可能ですか?と彼は店員に言った。・・・いやいや、そんな簡単に着けさせてくださいって言う値段じゃないし・・・。

 店員はそんな私をまったく無視して、彼にネックレスを渡す。彼は私の後ろに回りこみ強引にネックレスを止めた。前に回り私を見て満足そうに言った。

「よく似合ってる、これでいいか?」

いやいやいや、お兄さん値段ちゃんと見てますか?桁見間違えてませんか?

たじろいでいる私に苦笑しながら、店員にプレゼント用でといっている彼がいる。!!!だから!!!桁を見間違えてませんかって!!!

そんな私をまったく見ずに店員はここぞとばかりに彼にセールトークを繰り広げる。

「実はクリスマス限定で同メーカーから、ネックレスに合わせたリングもございまして。」

へっ??リング!?

「石はダイヤモンドでクオリティももちろん絶対の自信を持ってお勧めできます。単体でエンゲージとしてお買い求めになられる方もいらっしゃるんですよ。」

興味深そうに奴は耳を傾ける。現物はあるの?と言う彼の声に(やめてくれ!!!)私は逃げ腰になる。


「こちらになります」


逃げようとした私の手をつかみ、彼は引っ張った。店員の出してきたリングを仕方なく見る。ううう、ほんとだかわいい、私好みだ。でもエンゲージ?

「サイズ調べられますか?」

いやいやいや、いらないし、しないし、やめて頂戴。彼の台詞に首を振って抵抗して見せたが、俺に恥をかかせるのか?という無言の圧力に屈する。

「まあ、よくお似合いですわ」

いや、やめて頂戴、これを受け取る心の準備が私にはまだない。

泣きそうになってる私の顔を見て、彼はため息をつきながら店員に今日はやめときますと言った。取りおきいたしましょうか?と言う店員に貴公子の笑顔を向けながら近いうちに来ますから良いです。と返していた。

ほっとし脱力中の私に彼はため息をつきながら言った。映画始まるよ、行こうか・・・。と

 衝撃的なイベントのせいで映画の内容は殆んど覚えてない。夕食どうする?ときいてきた彼の言葉に答えあぐねていると、彼の携帯が鳴った。

「・・・はい、はい、レントゲンとって当直医に診察してもらってください出来れば血液ガスと一般採血も出しておいてください。僕もそちらに向かいます。」

彼は患者さんの血中酸素飽和度が上がらないらしいちょっと病棟に顔を出す夕食はこの次にねといいながら私を軽く引き寄せてほほに唇を寄せる。いやいや公衆の面前だしここ!!思わず身を硬くする私に笑って、じゃあなまっすぐ帰れよと言った。

小走りで横断歩道を渡りひとごみにまぎれていく彼の後姿を私はその背中が見えなくなるまでずっと見送っていた


・・・・・ゴメンナサイ・・・・・・。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ