はじまりのそのあと
なんで、私はここにいるんだろう・・・?
「おはよう」
唖然としている私の唇に、軽いキスを落としながら彼はさわやかに微笑んだ。
「トースト、チーズのせる?バターは?」
「・・・・両方」
さわやかに微笑む、彼に答えながら、ベッドから降りた。
なぜかパジャマは着ている、自分で着た覚えがないということは彼が着せたのだろう。
腹立つぐらい、紳士だ・・・いやいや・・紳士だったらあんな暴挙に出ないだろう!!
・・・・!!!ダマサレテハイケナイ!!!・・・
・・・・確かにあおったのは私だが・・・。
「卵はどうする?目玉?スクランブル?」
「チーズオムレツ!!」
キッチンから、笑い声が聞こえる。
・・・・・・むぅ・・悔しい、嫌がらせになってないようだ・・。
着替えを探すが、見当たらない。たずねるのも悔しいので、パジャマのままキッチンに向かった。
「皿とって」
言われて、差し出すと、湯気のたったきのこのチーズオムレツが乗った・・。
悔しいほんと嫌がらせをされてるのは私のようだ・・・。
「・・・きのこすきだろう?」
じっと皿をにらみつける私に気づき、彼はいった。
「・・・嫌いじゃない・・・・」
悔しいので、そう答えた・・。くそうぅ・・・笑うな・・・なんでそんなにご機嫌なんだろう?
「パジャマ、だいぶ大きいな?今日必要なものを買いに行こうか?」
・・・・はいぃ?・・
「5日もあるしね、着替えもいるだろう?」
・・・も~し もしぃ?・・・
「からだ、きつくないか?初めてだったんだろう?」
・・・・・言うな・・・・・思い出させるな・・・・
・・・・あんたのためにとってたんじゃない・・・・・機会とその気になれなかっただけだ・・・。
「おれは、うれしかったよ、6年我慢した甲斐があった。」
涙目で、にらみつける私の目じりに彼はキスを落とし、・・まあ怒るなって
・・・・・・俺の性別は認識してくれたよな?ってにが笑いしながらささやいた。
・・・・・・いたしましたよ?このなんともいえない場所の違和感と、
・・・・・・全身の筋肉痛が、その成果だと思います・・・。
「食べないとさめるぞ」
悔しい、何でおなかはすくんだろう?
悔しい、何でこのきのこオムレツおいしいんだろう!!
ご飯を食べて、おいしい紅茶をいただいた。
「お腹膨れた?」
彼は、極上の微笑を私に向ける・・・。やな予感・・・。
「・・・うん・・・」
「じゃあ、腹ごなしの運動しようか・・?」
!ちょっとまったぁ! 出かけるって話は!?
「だって、おまえ、まだ隙あらば俺から逃げようとおもってる・・・よね?俺はお前の助言どうりへタレは卒業したんだ、もう逃がさない」
後ずさりしようとしたが、後ろは壁だった。 逃げ場をふさがれる。
私の願い、抵抗もむなしく・・・ベッドルームに引きずられていった・・・。
別に、バージンにこだわっているわけではない。
結婚まで清い体で、というこだわりもない。
なのにこの年まで?・・とびっくりされるかもしれない。
そんな、機会がなかったといえばうそになる。
「ぜータイヤだ!行きません」
小さいころからずーっと、となりの12歳年上のいとこの優ちゃんが大好きだった。
お医者になるんだと、医学生になったその人は本当に毎日忙しそうだった。
中学に入り、優ちゃんも医師試験に合格し、お医者になったらますます忙しくなり、あえない日が続いた・・。
あまりにもかまってくれない彼に少しすねて、何で美香と遊んでくれないのと聞くと、自分は不器用だから人の倍努力しないとおいていかれるんだよ、と笑っていた。
親たちの間では、なんとなく結婚の約束が出来ていた。
もちろんそれは、優ちゃんが親に頼んだことで私が中学2年生の夏に申し込まれた。
ロリコンだね・・とよく笑っていた、でも美香が高校に行って変な奴に捕まったら、後悔しきれないから・・。
美香のバージンは僕のものだからね、と言っては私にどつかれて、それでも笑ってた。
高校2年の夏休み、珍しく休みが取れたので旅行しようと誘われた。もちろん1泊で・・。
当然のごとく、私は抵抗した。
「ゼッタイやだ」
「なんで?」
「恥ずかしいもん」
「なにが?別に良いじゃないか?いまさらだろう?」
でも恥ずかしいし、怖いものは怖い・・。それでなくとも、美香のバージンは僕のものだと公言し、会うたびに押し倒されている、なにもないはずはない。
「美香が嫌がることはしないって、約束するから・・ね?」
うぅ・・負けそう・・・ 。
・・・・・・・いやいやいや
「でっでもまだ、約束の年じゃないじゃん」
「美香は僕のこと信じてないんだ・・。」
いやいやいや・・・そういうことではなくって!!
「だめなものはだめっ! 」
何であの時、一緒に行かなかったんだろう・・。
何で、もっと上手にもう少し待っててっていえなかったんだろう。
あのときの、優ちゃんの傷ついた笑顔が忘れられない。
そして・・・その知らせは、学校に届いた。
「橘!お母さんが迎えに来ているから、すぐ帰れ!」
私は、優ちゃんの申し出を喧嘩別れした形で断りクラブ活動に出ていた、
母が何で?教室を出ると、真っ赤な目をしたお母さんが震える声で言った。
「美香、すぐ来て・・」
・・・怪訝な顔で、母を見たが、詳しいことは教えてくれない。
仕方がないのでついていった。いやな予感がした。
母は、私をタクシーに押し込んだ。何で自分で運転しないんだろう?
1時間ほどして、救急病院にタクシーが着いた。
母は、痛いぐらいの強さで私の手をつかみ廊下をかけた、病院だし廊下は歩かないと・・・。
などと、妙に覚めた目で私は母を見ていた。
外科病棟の病室の前で母が止まった。
「美香を連れてきました・・」
ドアが開き、おじさんが出てきた・・真っ赤な目をして・・・。
その向こうに、おばさんが座り込んでいる、ないているようだ・・・。
誰かが、ベッドに寝ているようだ、でも、器械と包帯だらけでよく見えない。
お父さんが、私を後ろから抱きしめてくれた。何か言っているがよく聞こえない・・・。
優ちゃんがいない、いつも、美香が困ったときには必ず大丈夫だよっていってくれるのに・・・。
どこにいるんだろう?おかしいな?こんなときほどそばにいてほしいのに、何してるんだろう?
お父さんが何か言ってる・・・?聞こえないって!!
お母さんが何か言ってる?聞こえない!!
ゆうちゃんはどこ?優ちゃんはどこ?ねえ?誰か教えて?意地悪しないで?
!!!!!!!!!!!!!!!!!いやだ!!!!!!!!
周りが真っ白になった。
無免許の飲酒運転だったらしい・・・。
横断歩道で信号待ちをしていた、優ちゃんに突っ込んで行ったと聞いた・・。
何にも悪くないのに・・・。
お医者さんになりたてのとき、自分の持った患者さんのおばあちゃんに、プロポーズされたけれど、美香がいるからって断ったよってうれしそうに言っていた。
私も、看護婦になるっていたら、じゃあ将来は二人で田舎に行って開業しようね・・ってうれしそうに言っていた。
優ちゃんのうそつき・・。
美香のバージンどうしてくれるのよ?
美香死ぬまでバージンじゃんか!
責任とってよ!!!今すぐ帰って来い!!
誰かにゆすられて、目が覚めた・・。
あれ・・・?
「ちょっと、だいじょうぶか?・・ごめん、気がついたか?」
覗き込んでいる、心配そうな瞳、コノヒトハダレ?ユウチャントハカオガチガウ・・・。
私が、怪訝そうな顔で見ていると、奴はあせった顔で
「・・・本当に大丈夫か? 俺が誰かわかるか?」
・・・・・・えぇ・・えぇ・・わかりますも。私が育んでいた友情を粉々にした、日置真一・・。
・・・手籠めにしただけではものたりず、軟禁して、おもちゃにしてる。
「・・・・・なんかものすごく、俺にとって不名誉なこと考えてない・・・?。」
・・・事実じゃない!!性別認識だけなら、一回でいいじゃないですか?
なんでこんなに何回もいたされているの?
自分が彼を煽った事実は棚上げして、彼を睨みつける。
「ゆうちゃんてダレだ?おまえ、ひとりっこじゃあなかったけ?」
「・・・・・言いたくない・・・聞かれたくない・・・もう帰して・・」
ため息をつきながら、彼は言った。
「まだ、俺の気持ち認識できない?」
「・・・・あなたの気持ちじゃなくて、私の気持ちの認識は?」
ゆっくりとこちらを見てしばらく考えて、頭を抱えた後・・・ベッドから降りた奴は服を着ながら、振り向かずに言った。
「・・・・わかった、送る。この事は謝る気はないからな?」
そんなことはどうでもいい、私はここから帰りたい。5連休は優ちゃんに会いに行くためにとったんだ・・・。
・・・デモ、ユウチャンハモウイナイ・・ミカヲ ダキシメテモクレナイ・・・。
急に私の中で現実が迫ってきた。
・・そうだ、あんなにがんばってバージン守ったのに何でこんなことになちゃったんダロウ・・・。
「ゆうちゃん・・どうして、みかをおいていっちゃたの? 美香のバージンなんでこんなヘタレにとられたの?」
泣き崩れる私を、彼は優しく抱きしめながら、・・・ごめん・・ってつぶやいていた。
!!!やっぱりへたれじゃん!!あやまるぐらいならヤルなっつ!!謝られても、処女膜は再生しないんだよ!!バカヤロウ!!
私の心の声が聞こえたのか、己の所業をいまさらのように反省したのか、彼はずっと、私を抱きしめたまま、謝り続けてくれた。
そして、その温かい腕の中で、泣き疲れた私はいつの間にか眠っていた。
結局、5連休は、彼のマンションで過ごす羽目になった。
もちろん、3食昼寝付き、セックス抜きだ。
お食事?そんなん私が作るわけないでしょう?ここぞとばかりに、こきつかってやりました!。
奴の料理はオムレツ以外も絶品だった。
・・・・・・・私って・・・・。