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はじまり その2

「・・・・!?・・・」

聞こえた言葉の内容に、首を傾げる。

・・・なんか聞こえた、、ような気がする。


幻聴?空耳?

前を見ると、認知のお婆ちゃんが見えた。


あっ!わかった!ちーちゃんに言ったのね。

   

自分ではどんな顔をしてたのか見えなかったが、さぞかし間の抜けた表情だったのだろう、ゆっくりと振り返り見つめてるわたしを無表情でみなが、ゆっくりと私に近付き耳元でその声の主はささやいた・・。


「放射線科側の出口の駐車場に車を止めている、ラーメン食いに行くよな?逃げるなよ?」


 唖然とする私からすばやく離れた彼は、巡視を終えてドアから入ってきたスタッフに、

差し入れ持ってきた、とドーナツの箱を指差して笑顔で去っていった。


・・・・ナニガオコッタンダロウ・・・・・?



  時刻は、午前1時をさしている。

私は速攻で申し送りを済まし、他のスタッフに挨拶をして、更衣室で急いで着替え帰宅する事にした。

 

 もちろん待ち合わせの場所など目指すわけもなく、指定された駐車場から一番遠い出口を目指して走っていた。


 パートナー的な存在が不必要だと思っているわけではない、独身主義でもないが、気持ちが付いていかず、必要以上に親しくなろうとする相手は今まで遠ざけてきた。


 今もその主義は変えるつもりはない、彼がどういうつもりか今ひとつ図りかねるが、危ない橋は渡らないに限る。


  今はとりあえず逃げてなかったことにしてしまおうと思う。


 長い廊下を抜けて、誰もいない事を確認し、ほっと一息ついて夜間ロックのかかっているドアにカードキーを通し外に出た、


・・よしよし・・人影はないようだ、そっと辺りを見回しつつ、タクシーを拾うために構内をでて大どうりに出ようと歩み始めたそのとき、後ろから腕をつかまれ引き戻された。


「・・・!!うぇ!!!」

「・・・・相変わらずだな・・・その色気も何もない驚き方やめろって・・・」


「・・・なんでここにいるの?」

     聞き覚えのあるその声に私は目を瞑り、顔を上げられず首をすくめながら問うた。


「・・・それは・・・、俺のせりふじゃないのかな? 君こそなんで待ち合わせた駐車場から一番遠い出口から出ているのかな?」


「・・・ちょっと、道をまちがえた・・・・かな?」

     言い訳をしながら首を回してそっと薄目を開けると


・・・そこには・・・


         これ以上にないぐらい、素敵な笑顔で微笑む彼がいた


・・・そして、明らかに怒っているであろう低い声で、彼はのたまわれた。


「・・・ふ~ん?・・・。この病院に6年も勤めて、寮にも入っていた君が、この病院の構内で迷うことがあるなんて・・・・ね?」


・・・・誰か助けてください!!。


 逃げ腰になっている私に 今度はこれ以上にないぐらい優しいまなざしを向けて彼は言った。

「貴重な時間を、こんなところでつかってもなぁ。・・」


独り言を言いながら、私の手を引っ張りつつ、構内の道路に止めてある車に向かった。


あっ・・懐かしい車がある。


  私の視線にきずいたのか、はにかみながら言った。

「ちょっと目的があって、車にまで資金が回せなかったんだ」


 研修医のころにバイトに行くのに必要だからと、中古車ショップで購入していた軽自動車。

 

 たまたま一緒に見に行って、冗談で私がグリーン色がいいといったらその色を購入していた。

 彼はそのころ同期の中では一番私と気があって、頼れる仲間だった。

 ローテーションで疎遠になっていたが、大事な友人の一人だという事に変りはない。


  そんな、友情を育んだ思い出の一ページを振り返って良い気分でいる私の気持ちを察知せず。

 早く乗れよ!!と、助手席側のドアを開けて彼は私を車の中に押し込もうとしていた。


 ちょっと、いたいって!!そうだ、こいつは、大事な友人でもあるが、思い込んだら自分の道を周りも見ずに突っ走る迷惑極まりない性格でもあった。


 無理やり押し込まれしぶしぶと助手席に座った私のシートベルトを締めて内側からドアロックまでご丁寧にかけてドアを閉め、奴は急いで運転席に周り車に乗り込んだ。


「・・・・ずいぶん親切にしてくれるのね・・・。」


 訝しげな私に、涼しい顔で彼はのたもうた。

「当たり前だろう。自分が乗り込んでいる隙に逃げられたら、目も当てられない。どんだけ、この日を待っていたと思うんだ!」


 ・・・・?! ドンだけ親切なんだろうと思ったのは、逃げるときに時間がかかるようにするためですか?

 私が唖然としている間に、車はすべりだした。


「・・ねぇ?」

 前を向いたまま、彼は返した。

「? なに ? 帰るって話は聞きたくない」

「・・いや? そんなに、一人でラーメン食べるのいやだったの?」

「・・・・・はぁ!?」


 目を見開いて、ゆっくりと彼はこちらを見た。


 ちょっと!運転中!!危ないって!!

 

 大きなため息をつきながら、前を見て、まったく・・とか、どうしたらいいんだ・・。

とか、ぶつぶつ言っている・・・そんな彼を見ながら私は考えた。


・・まさか・・友情以上のものがあるんだろうか?いや、以前から彼は読めない人だった。


 いろんな女性がモーションかけていたが、意に介さずわが道を行っていた人だ。私の思い過ごしの可能性が高い。

そんな思い過ごしで、彼にいやな思いをさせるのもどうかと思う。



「おまえ、あしたから5連休だったよな?」

    ・・・よく知ってますね。まあ隠してたわけでないけれども。


 返事をせずに黙っていると、

   

「貴重な、連休だよな?」

     ・・? 何が言いたいんだろう?と、思わず顔を見ると、


 にっこりと、悪魔の微笑を浮かべる横顔が見えた。・・・なんかいやなよかんがする・・・。


           「時間はあるし、ゆっくり飲もうか?」



        ・・・・それは、友人としての、純粋なお誘いですよ・・・ね?






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