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明日はどっち?・・・その2

 夜勤で認知のお年寄りの相手をしていた。

ふと、人の気配を感じ入り口を見る。

「よ!!差し入れ。」

珍しい、土曜日の夜だというのに、日置先生が詰所にきた。

「珍しいじゃない、何しているの?」

「・・・・仕事してたら悪いか・・?」

憮然とした表情で答えた彼の顔を見ていたら笑えてきた。

「だって、最近あなた、なんていわれてるか知ってる?」

「週末毎飲み歩いてるろくでもない奴・・・?」

あたり・・・と笑うと、ドーナツもって帰ろうかな?という。いえいえ、差し入れはいただきますよ。と箱を受け取った。

 休憩室に箱を置きにはいると後から彼が追いかけてきた。

「何か食べに行かないか?定時に終わる?」

一瞬、返事に困った。

「友人として誘ってるんだけれど、そして、心配かけてる週末の事情も聞いて欲しくて。」

・・・・・聞いて回ってくれてたんだろう?・・・・・とこちらを向いてにっこり笑う彼に、どぎまぎして挙動不審になる。


      ・・・・どんな風に思われたんだろう・・・・。


 暫く思いあぐねたが、週末の動向と聞いて心配だったので意を決した。


「1時過ぎには終わると思う。何処に行ったらいい?」

  正面玄関で待ってる・・・と言って彼は出て行った。



仕事を終えて、待ち合わせ場所に向かった。見慣れた軽自動車が止まっている。

助手席側に回って、ドアに手をかけようとしたら中から開けてくれた。

「こなかったらどうしようと思ったよ」

「・・・・約束したんだから、そんなことはしません。」本当は、すっぽかそうかと悩んだことは黙っていよう。

何処に行くの?と言う私の問いに。玄さん・・と、近所のラーメン屋の名前を言った。

よかったほんとにラーメン屋だ。

こちらを見て、にやっと笑って彼は言った。

「ほっとした?」

私はむっとして、黙って前を見た。

そこは、車で15分のところにある、10人もはいればいっぱいになる小さな店だ。

カウンター席しかなく、端っこに2人で並んで座って注文を伝えた。

 店主の勢いのいい掛け声を聞きながら、私は聞いてみた。

「あざ、最近はなくなったのね?」

水を飲みながら、殴られなくなったからね・・。と彼が笑う。・・・・?殴られる?誰にだ?

 ああそうそう、これ渡しとこうと思って。とポケットから彼は無造作に箱を取り出した。紙で出来た小さな箱だった。

「なにこれ?」

無造作に渡されて、無造作にふたを開けた。

「・・・・・・・!!!」声がでなかった。これって!!

「そうそう、去年の今頃、プレゼントしようとして断られた奴。」

しれっと2杯目の水を飲みながら言う。・・・・こんな、ただの箱に入れれるような値段じゃなかったぞ?

「残念ながら、返品不可の状態なんだ。」

あっけにとられてる私の左手をつかんで彼はそれをはめた。

「・・・・っちょっとまって!!!!」

にっこり笑って彼は言った。

「待つよ何年でも、僕が君の中野さんの思い出ごと君を愛して行こうって思っているのがわかってもらえるまで。・・・・、いまさらだけれどもね。」

おじさんが、ラーメンを持ってきた。

「冷めるとまずいし食べようか?」平然とラーメンをすする彼に私はあいた口がふさがらなかった。


その後、紳士的に彼はあたしのアパートまで送ってくれた。そして、健全な中学生のように手を振って私を見送ってくれた。

 結局、彼の週末の動向は聞きそびれた・・・・。


「・・・・・そうきたか・・・。」

事の顛末を都に話す。彼女は笑い、あきれながら聞いてくれた。

「ラーメン屋でプロポーズね・・・やるな!!」

「都!!そこ突っ込まなくていいし」

私が怒ると、都はまじめな顔をして言った。

「だって、あんた。奴と二人でちゃんとしたとこ誘われたら行くか?」

それは絶対無い。ラーメン屋で、しかも週末の動向の相談と言われたからいったんだ。

じゃあ奴のたくらみにまんまと乗ったんじゃン。と笑う都を睨みながら。

「そうじゃなくて、私が相談したいのは・・」

喋る私の口を人差し指で押さえて彼女は言った。

「いつまで人に甘えてるの?いい加減自分で考えなさい。」

以上終わり、と都はそっぽを向いた。

デモね、そっぽを向きながら続けた。本当に、優にチャンの思い出ごと愛してくれるなら、あんないい奴いないよね・・・?


それから、私は日置先生に度々食事に誘われた、断りきれず何度か行った。

彼はとても紳士的で、楽しく食事して、会話してそれ以上のことはなく、いつも手を振って私のマンションの前で別れた。

そんなこんなで、3ヶ月が過ぎた、ある日・・・。



「時間あったら寄って行かないか?」

夕食を一緒に食べて帰宅途中に彼は言った。どうしようと答えあぐねていると、無理はしないで・・と小さな声で続けられた。


    「紅茶・・ご馳走になろうかな・・?」


        この先の覚悟はまだない、でも離れがたい・・・。


そんな気持ちがぐるぐると私の頭の中を駆け巡り、私の口からでたのはこの台詞だった。




 

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