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YUMA(ゆーま)を目指して  作者: 沙φ亜竜
第6話 キラッ! 輝く未来は大空に
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-6-

 夏休みの残り一週間は、ずっと活動を続けていたはずの女子魔道部の練習もお休みだった。

 というわけで、少ない夏休みを満喫し、わたしたちは新学期を迎えた。


 いろいろあったけど、とっても有意義だったスカウト実習を終えたわたしは、清々しい気分でこの日を迎えることができた。

 始業式の日は授業もなく、午前中で解散となる。

 そのあとわたしは、ほゆるちゃんと現くんと一緒に、笹枝先輩たちの待つ女子魔道部の部室へと向かった。

 もちろん、はずむような、軽い足取りで。


「あっ、久しぶり! あなたたち、どうだった?」


 部室に入るやいなや、部長の笹枝先輩から質問の声が飛んでくる。

 一年生ふたりもすでに部室に入って待っていたようで、好奇心旺盛なキラキラの瞳を向けてくれていた。


 わたしは、ほゆるちゃんと現くんのふたりと交互に顔を見合わせると、笑顔をいっぱいに浮かべて報告する。

 スカウト実習の評価は三人ともAランクで、卒業後の採用内定までいただけたことを。


「お~! やったじゃない、おめでとう!」


 笹枝先輩は、素直に喜んでくれた。


「すごいです、先輩方!」

「おめでとうございます!」


 一年生ふたりも、手を取り合ってはしゃいでいる。

 ここまで手放しで喜んでもらえると、わたしたちとしても気分がいいな。


「それであなたたち、どうするつもりなの?」


 しばらくはしゃいだ声が響いたあと、先輩は真面目な顔で問いかけてきた。

 そう、去年スカウト実習を受けた笹枝先輩は、採用が決まっていたのに、それを蹴って進学の道を選んだ。

 しかもわたしたちと同じようにAランク評価だったというのに。


 ただ、先輩はもう、わかってくれているのだろう。

 だけどその決意を、しっかりわたしたちの口から聞きたい。

 そう思ってくれているのだ。


 再び顔を見合わせる、二年生のわたしたち三人。

 そして声を揃えて宣言した。


『わたし(ぼく)たち三人は、卒業後、郵便局への就職を希望します!』


 狭い部室内に響く、未来を夢見る明るさを含んだ言葉。


 一瞬の間を置いて……。

 パチパチパチパチ!

 笹枝先輩と一年生のふたりからわたしたちへ、割れんばかりの大きな拍手が届けられた。


「そう言ってくれると思ったわ」


 メガネ越しに見える笹枝先輩の瞳は、微かに潤んでいるようだった。


「わたしは進学することに決めてしまったけど、撫子さんにはちょっと後ろめたい気持ちがあったの。だからこれで、心置きなく受験勉強に専念できるわ」


 ……そっか。笹枝先輩も、悩んでいたんだ。

 頼りになる先輩で、芯が通っていて、揺らぐことのない存在だと思っていたけど。

 そんな先輩でも、やっぱりいろいろと悩みながら、一歩一歩進んでいっているんだ。

 わたしみたいに沈みやすい性格だったら、なおさらというものだろう。


 でも、大丈夫。

 これから先も、ほゆるちゃんや現くんに支えられて、わたしも頑張ってふたりを支えて、ともに歩んでいける。


 まだもうちょっと先とはいえ、中学校を卒業したら、同じ道を進んでいくのだから。

 郵便配達員としての道を――。


「ぼくだけはちょっと違うけどね」


 わたしが決意を口にすると、現くんが冷静に言葉を挟んできた。


「そうだね。現くんは事務員扱いになるんだっけ?」


 わたしが訂正する声に、現くんはさらに訂正を重ねる。


「違うよ。配達員をサポートするマネージャーの役職を新たに作るんだってさ。実習が終わったあと、撫子さんから言われたんだ。ぼくはその第一号になるみたいだよ」

「な……なによ現、結局、卒業後もマネージャー? 部活と全然変わらないじゃない!」


 ほゆるちゃんがなにやら楽しそうな笑顔でツッコミを入れる。

 わたしもほゆるちゃんに同意して、明るく笑い声を響かせた。


「あはははっ! でも、似合ってるし、いいと思うっ! 現くん、これからもよろしくねっ!」

「こちらこそよろしく!」


 現くんは差し出した手をぎゅっと握って、頬を真っ赤に染めたわたしの瞳を見つめながら応えてくれた。

 周りから、なんだかちょっと生温かい視線を感じたりしつつも、わたしの頬は緩みっぱなし。

 女子魔道部の狭い部室には、絶えることのない笑顔が咲き乱れ続けていた。



 ☆☆☆☆☆



 大気汚染や水質汚濁の影響で、人口も大幅に減ってしまった今の地球。

 住める場所も限られ、仕方なくって感じで空中にまで家を建てているような、こんな世の中だけど。

 そんな現在(いま)だからこそ、夢を届ける仕事は必要なのだ。


 まだ卒業まで一年以上あるけど、しっかり勉強して、技術も磨いて、胸を張って郵便配達員になれるように努力しよう。

 ……郵魔、って言わないと、撫子さんに怒られちゃうかな?


 とにかく、ほゆるちゃんや現くんと一緒だから、不安なんてなにもない。

 たとえつらく苦しいことがあったとしても、絶対に切り抜けられる。

 だから一生懸命頑張って、撫子さんや桜華さんと次に会うときには、ひと回り成長した姿を見てもらおう。

 わたしはそう、心に誓うのだった。


以上で終了です。お疲れ様でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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宜しくお願い致しますm(_ _)m

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