第1話 「やっと会えました」
この作品は、「平凡な女子高生」と「秘密を抱えた美少女」の出会いから始まる、少し不思議な百合ラブコメです。
甘酸っぱい日常や、思わずニヤニヤしてしまうような掛け合い、少しずつ明かされる謎を楽しんでいただけたら嬉しいです。
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それでは、美鈴とアリスが紡ぐ物語をお楽しみください。
私、美鈴はどこにでもいる、ごく普通の高校二年生だ。成績は中の上。運動も中の上。部活動にも生徒会にも所属していない。友達はいるけれど、特別目立つわけでもない。いわゆる、どこにでもいる「普通」の女子高生。
……少なくとも、昨日まではそうだった。あの日を境に、私の日常は少しずつ、だけど確実に変わり始める。その時の私は、まだ知る由もなかった。
母「美鈴ー! 早く起きないと遅刻するわよー!」
一階から聞こえる母の声で、私は勢いよく飛び起きた。
美鈴「……ん、んん……あと五分……」
母「今日は日直なんでしょ〜!」その一言で眠気は吹き飛ぶ。
美鈴「……はっ!? やばい!」時計を見る。
美鈴「うそっ! もうこんな時間!?」ベッドから飛び降り、制服へ着替え、顔を洗い、髪を整え、カバンを掴む。
美鈴「いってきまーす!」
母「朝ご飯!」
美鈴「時間ない!」
母「せめてパンだけでも!」母が差し出した食パンを口にくわえ、そのまま玄関を飛び出した。
美鈴「……って、これじゃ完全にラブコメの主人公じゃん!」自分でツッコミを入れながら全力疾走する。
朝の住宅街を風のように駆け抜け、信号をギリギリで渡る。
(急げ急げ急げ……!)角を勢いよく曲がった、その瞬間。
???「きゃっ!」
美鈴「わっ!?」ドンッ!鈍い音とともに、私は誰かとぶつかってしまった。
美鈴「いったぁ……」
尻もちをついた私は慌てて立ち上がる。
美鈴「だ、大丈夫ですか!? すみません! 前を見てなくて!」急いで頭を下げる。
???「いえ、大丈夫ですよ。こちらこそ、少し考え事をしていましたから」透き通るような、落ち着いた声。顔を上げた私は、思わず息をのんだ。
……綺麗。
朝日に照らされて銀色の髪がきらきらと輝いている。
宝石のような深紅の瞳。雪のように白く透き通った肌。まるで絵本から抜け出してきたお姫様みたいだった。
???「本当に怪我はありませんか?」
美鈴「え……あっ、はい! 私は大丈夫です!」逆に心配されてしまった。なんだろう、この人。すごく綺麗なのに、どこか優しい雰囲気がある。
???「それなら良かったです」ふわり、と微笑む彼女。その笑顔だけで、一瞬時間が止まったような気がした。
美鈴「……あっ!」腕時計を見る。
美鈴「やばい! 本当に遅刻しちゃう!」私は慌ててカバンを背負い直す。
美鈴「す、すみません! 急いでるので失礼します!」
???「はい、気を付けてくださいね」私はそのまま全力で学校へ走り出した。その時、カバンのポケットから一枚のカードが滑り落ちたことにも気付かずに、
彼女はそれを拾い上げる。
???「学生証……」
そこには『美鈴』という名前と写真が写っていた。
???「……美鈴さん、ですか」彼女は小さく微笑む。
???「やっと会えました」誰にも聞こえないほど小さなその呟きは、朝の風に溶けて消えていった。
そして彼女もまた、美鈴と同じ方向へゆっくりと歩き始めた。
美鈴「はぁ……はぁ……!」ギリギリ教室へ駆け込む。
……と思った次の瞬間。
キーンコーンカーンコーン――。始業のチャイムが鳴った。
美鈴「あっ……終わった……」教室の扉が開き、先生と目が合う。
先生「美鈴ー」
美鈴「はい……」
先生「アウト」
美鈴「ですよねぇ……」クラスのみんなが笑い、美鈴は肩を落としながら自分の席へ向かった。
ホームルームが始まると、先生が教卓を軽く叩く。
先生「今日は転校生を紹介するぞー」教室がざわつく。
男子A「女子かな?」
男子B「可愛い子だといいなー」
先生「静かに、入っていいぞ」
ガラッ――。教室の扉が開いた。入ってきた少女を見た瞬間。
美鈴「……え?」私は思わず声を漏らした。朝、ぶつかったあの人だった。銀色の髪。赤い瞳。見間違えるはずがない。
先生が紹介する。
先生「今日からこのクラスになる、アリスさんだ。みんな仲良くしてやってくれ」
アリス「アリスです。よろしくお願いします」その瞬間、教室中が歓声に包まれた。
男子C「めっちゃ美人!」
女子A「モデルさんみたい!」
女子B「恋人いるの!?」質問攻めになりかけたところで、先生が苦笑する。
先生「はいはい、質問はあとだ。席に着けー」先生が指した席は……。
美鈴「えっ」私の隣だった。
(うそでしょ……!?)アリスはゆっくりと歩いてきて、私の隣の席へ座る。そして、小さく微笑んだ。
アリス「また会えましたね、美鈴さん」
美鈴「えっ!? な、なんで私の名前を……」
アリスはカバンから一枚のカードを取り出す。
アリス「朝、落としていましたよ」差し出されたのは、私の学生証だった。
美鈴「あ……!」「ありがとうございます!」
アリス「ふふ。今度からは落とさないように気を付けてくださいね」学生証を受け取る時、不意に指先が触れた。たったそれだけなのに、胸が少しだけ高鳴る。
その理由を、この時の私はまだ知らなかった一
キーンコーンカーンコーン――。一時間目の終了を告げるチャイムが鳴る。
美鈴「やっと終わったぁ……」美鈴は机に突っ伏し、大きく息をついた。
(朝からいろいろありすぎた……)食パンをくわえて家を飛び出したこと。銀髪の女の子とぶつかったこと。その子がまさか転校生だったこと。しかも席は隣。普通なら一日で一つあるかどうかの出来事が、たった半日で全部起きてしまった。
由香「美鈴、朝から災難だったね~」
前の席の女子、由香が振り返って笑う。
美鈴「笑い事じゃないよ……」
由香「でも転校生が隣とか羨ましい!」
美鈴「羨ましくないって!」そんな会話をしている間にも、アリスの席には次々と人が集まっていく。
女子A「アリスさんって外国の人なの?」
女子B「その髪って地毛?」
女子C「目もカラコンじゃないよね!?」
女子D「身長高いね!」質問攻めにされても、アリスは嫌な顔一つせず、一人ひとり丁寧に答えていた。
アリス「はい、髪も目も生まれつきですよ」
「日本には最近来たばかりなんです」
「皆さん、とても優しいですね」その柔らかい笑顔に、男女問わず教室中が見惚れている。
「天使じゃん……」
「可愛すぎる……」そんな声まで聞こえてくる。
(すごい人気……)美鈴は少しだけ苦笑した。
すると、一人の女子がニヤニヤしながら口を開く。
女子E「じゃあさじゃあさ! 恋人とかいるの?」
教室が一気に静かになる。みんな興味津々だ。
アリスは少しだけ首を傾げて考える。
アリス「恋人……ですか」
「はい、いません」男子たちが小さくガッツポーズをした。
男子A「よっしゃ!」
男子B「まだチャンスあるぞ!」教室が笑いに包まれる。続いて別の女子が質問する。
女子F「じゃあ好きなタイプは?」
アリス「好きなタイプ……」アリスは少しだけ考え込む。そして、ゆっくりと口を開いた。
アリス「優しくて」
アリス「困っている人を放っておけなくて」
アリス「一緒にいると安心できる方でしょうか」
女子達「へぇ~!」女子たちが盛り上がる。
すると最後に、一番大胆そうな女子が聞いた。
女子G「じゃあ今、気になる人とかいる?」その瞬間だった。アリスは静かに顔を上げる。
そして――。まっすぐ美鈴を見た。
アリス「……そうですね」
アリス「気になる方なら、一人います」
美鈴「え?」美鈴は思わず自分を指差した。
美鈴「わ、私?」教室中の視線が一斉に美鈴へ向く。
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」女子たちが悲鳴にも似た歓声を上げる。
「えっ!?」
「どういうこと!?」
「知り合いだったの!?」美鈴の頭は真っ白だった。
(え、え、え!? なんで私!?)心臓がうるさいくらい鳴っている。するとアリスは口元を隠して、小さく笑った。
アリス「……なんて」
アリス「冗談ですよ」一瞬の静寂。
その後――。
「あはははは!」教室中が大笑いした。
「びっくりしたー!」
「演技うますぎ!」
由香「美鈴、顔真っ赤!」
由香にそう言われ、美鈴は慌てて両頬を押さえる。
美鈴「ち、違うって!」
由香「違わない違わない!」みんなが笑う中、アリスだけは美鈴を見つめて優しく微笑んでいた。その笑顔を見た瞬間。また胸がドキッと鳴る。
(……なんなの、この人)
(会ったばかりなのに)
(どうしてこんなに気になるんだろう…?)
そんなことを考えていると、二時間目開始のチャイムが鳴り響いた。
先生「ほら、席着けー」先生が教室へ入ってくる。
みんなが慌てて席へ戻る。
アリスもゆっくり席へ座ると、美鈴の方へ少しだけ身を寄せ、小さな声で囁いた。
アリス「でも……」
アリス「さっきのは、半分くらい本当ですよ?」
美鈴「……え?」美鈴が振り向いた時には、アリスは何事もなかったように前を向いていた。
(半分……本当?)
その一言だけが、美鈴の頭の中で何度も繰り返されていた。
先生が教室へ入ってくると、さっきまでの賑やかさが嘘のように静まり返った。
先生「よーし、席につけー。ホームルームは終わったんだから、切り替えて授業始めるぞ」クラスメイトたちは名残惜しそうに自分の席へ戻っていく。
私はというと……
(いやいやいや、切り替えられるわけないでしょ……!)さっきアリスさんが最後に言った言葉が、頭の中で何度も繰り返されていた。
アリス『さっきのは、半分くらい本当ですよ?』
(え……? 外国ではこういう冗談が普通なのかな?)
一人で勝手に考え込んでいると、隣から小さな笑い声が聞こえた。
アリス「ふふっ♡」思わず横を見る。
アリスさんは教科書を開きながら、楽しそうに微笑んでいた。
アリス「どうかしましたか?」
美鈴「い、いえ! なんでもないです!」慌てて前を向く。
(絶対からかわれてる……)そう思うのに、不思議と嫌な気はしなかった。
先生「じゃあ教科書四十八ページを開けー」先生の声でようやく授業が始まる。私は急いで机の中を探る。
美鈴「あれ……?」ない。
美鈴「うそ……」焦ってカバンの中まで探してみる。
それでも見つからない。
(しまった……朝慌てすぎて家に置いてきた!)
どうしよう、と困っていると。
アリス「使いますか?」隣からそっと教科書が差し出された。
美鈴「え?」
アリス「半分ずつなら見えますよ」
アリスさんが優しく微笑む。
美鈴「で、でも……」
アリス「遠慮しないでください」私は恐る恐る椅子を少し寄せる。肩と肩の距離が思ったより近い。
ふわり、と甘い香りが鼻をくすぐった。
シャンプーなのか香水なのか分からないけれど、とても落ち着く香りだった。
美鈴「ありがとうございます……」
アリス「どういたしまして」
アリスさんはそう言うと、自然に教科書を私の方へ少し傾けてくれた。その気遣いが嬉しくて、思わず頬が緩む。
(優しい人なんだな……)授業の内容はほとんど頭に入らなかった。黒板を見るたび、視界の端には銀色の髪が揺れている。ページをめくるたびに、指先が少しだけ触れそうになる。
そのたびに胸が小さく高鳴る自分がいて、私は何度も「落ち着け、私」と心の中で言い聞かせるしかなかった。
昼休み。アリスが美鈴の机へ。
アリス「ご一緒してもいいですか?」
友達「お、お邪魔だから私たち行くね!」逃げた。
二人きり。アリスはお弁当を開く。全部サンドイッチ。
美鈴「それだけ?」
アリス「はい」
美鈴「栄養偏るよ?」
アリス「そうなんですか?」天然炸裂。美鈴が自分のおかずを一つ渡す。
美鈴「よかったら」
アリス「……いいんですか?」
美鈴「うん。」
アリス「では……いただきます」ぱく。「……美味しい」少し笑う。
(笑うと可愛い……)
放課後。
先生「美鈴」
美鈴「はい!」
先生「アリスに学校案内してやって」
美鈴「えぇ!?」
アリス「よろしくお願いします」ここから二人きり?
学校探索。図書室、屋上、体育館、中庭、屋上。
風でアリスの髪が揺れる。
美鈴「綺麗……」思わず口に出す。
アリス「今、私のこと綺麗って言いました?」
美鈴「ち、違っ!」
アリス「ありがとうございます」ニコッ。
(無理無理無理!あの笑顔は破壊力やばすぎだって!)
一緒に帰る。信号待ち。
アリス「朝は驚きました」
美鈴「私も」
アリス「運命かもしれませんね」
美鈴「え?」
アリス「ふふっ♡」意味深に笑うアリス。
美鈴は家へ帰っても、今日一日の出来事が頭から離れなかった。制服から部屋着に着替え、ベッドへ倒れ込む。
「はぁ……」思わず大きなため息が漏れる。
(今日会ったばかりなのに、なんでこんなにアリスさんのことばっかり考えてるんだろう)
銀色の髪も、優しい笑顔も、耳元で囁かれた「半分くらい本当ですよ」という言葉も、何度も頭の中で繰り返される。
「……変なの」
そう呟きながら枕に顔を埋めた美鈴は、自分でも気づかないうちに頬をほんのり赤く染めていた。
誰もいない公園でアリスが一人。
「見つけました」
「私の──運命の人」
そして赤い瞳が月明かりに光る。
ラブコメ書きすぎ!って思ったそこのあなた!
それな!と言いたいところだが正直ラブコメ書きやすいから許してね。第2話お楽しみに!!




