表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そんなの約束してないけど?  作者: サクラ マチコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/1

そんなの約束してないけど?


 某私立大学に入学し、両親や周囲の期待を一身に受けていたのに、サークルで悪友たちとつるみ、クスリを使って泥酔させた女生徒に性暴力を行ったことが発覚。

 それはニュースにもなり、二十を超えていたから実名も出た事でSNSでも個人情報が流出した。

 両親には泣かれ、親戚からは罵詈雑言の嵐、就職もアルバイトさえもできなくなって流れ着く先はサークル仲間とその先輩達。

 掃きだめに集まる連中が悪事に手を染めるのに今更躊躇いなどない。

 恐喝、強請、暴力事件、仲間が捕まってもそれを酒の肴として嗤う連中だ。


 あの日も酒を飲み、薬でキマってる状態で高速道路を運転中、スピードの出し過ぎでフェンスを突き破り死んだ。

 唯一の救いは飛び出した先が大きな川で、誰も巻き込まなかったことだろう。





 死んだ男が気付いたとき、真っ白な空間に自分と同じ白いペラペラの服を着た男女が多数いた。

 声をかけようとしたが声は出ない、手を振ってみても誰も反応しない。いや、両手は動かせるものの、自分も足はその場から動けないでいる。

 そしてその場にいる全員が虚ろな顔で中空を見上げているのも気持ちが悪い。


 ピロンという音と共に、自分の目の前に突然四角い液晶画面のようなものが現れた。


『貴方は死にました

 1:このまま成仏しますか?

 2:転生しますか?』


 三行の文字が並び、数字の振られた文字は緑と青に色分けされている。


「は? なんだこれ」


 周囲を見回せば、さっきより人が減っている。

 一番近くにいた奴が空中に手を伸ばしたかと思えば消えた。

 もしかしたら、連中も同じような事が起きているのか?


「んなもん転生一択だろ!」


 緑色の2の文字に触れれば画面が変わった。


『転生するときは

 1:死ぬ直前の姿

 2:胎児』


 また色分けされた三行の文字が並んでいる。


「今の俺のままか、ガキからスタートって事か? 記憶があんなら今のほうが良いよな……」


 テレビで見た事がある転生ものは大概若返っていたはずだが、召喚系はそのままの姿が多かった筈だ。

 若返り系は親ガチャが外れだと、チートで作ったあれこれを親に搾取される系が多かった。しかもガキの頃から努力をしてナンボみたいなお綺麗な話が多かったけど、んな面倒な事はごめんだ。

 逆に召喚系は、チートな力で魔王退治とか面倒に巻き込まれるけど、その分終わったらハーレム仕放題。これは決定だよな。


 多少迷ったものの青色の1を選択すれば、また画面が変わった。



『行き先は

 1:現在世界(地球)

 2:異なる世界』


 これは迷う。

 よくある異世界ものは飯がまずい、トイレが無い、臭くて不潔、これが大抵だ。

 その分チートで色々出来るんだろうけど、俺は石鹸も作れねえし、飯もコンビニで買うだけだ。車も薬も酒もやり放題だ。そう考えると地球一択な気はする。


「けどな……」


 周囲への苛立ち、切れない悪友との関係、そういった物を無くして新しい人生をスタートさせることができるなら、それも良いんじゃないか?

 地球だと、結局家庭環境、学歴、就職先、収入。そんなもんで色メガネをつけられる。


「だったら魔法と剣の世界で生きるのもおもしれーよな」


 相手によるだろうが、ゴブリンとかオーガとか、魔物と呼ばれるような奴らはボコってナンボ。やればやるほど英雄になるのがテンプレだ。


「殴り放題、殺し放題とか、ストレスも発散できて一石二鳥だよな」


 悩みながらも緑色の2を選択すれば、また画面が変わった。



『貴方は【異世界】に、【死の直前の姿】で、【転生】します

 出口』


 出口と書かれた部分だけに色があり、それを押したら転生するんだろうと思った。

 周囲を見れば人が増えていた。ジジイもいるけど、あのジジイがまんま転生したら直ぐ死ぬだろうから、胎児一択だろうと鼻で笑う。

 二十代前半、イケメン、格闘技をやってたから身体も良い、女が切れたこともない。

 完全勝ち組でチート持ちとなれば、異世界でも楽勝だろう。

 そう思っていたら、画面が赤く点滅し始めた。


「やべえ」


 何となくすぐに押さなければという焦る気持ちでボタンを押したら、立っていた筈の床が無くなり、俺はそこに落ちて行った。



 ◇



「「「「わぁぁぁぁぁぁ‼‼‼‼」」」」


 白い世界から落ちたと思ったら、すげえ歓声が聞こえて来た。

 高い所から落ちるとか聞いてねえと思ったけど、これは召喚に近かったのか? だとしたら英雄として出迎えられてんじゃね?


 あまりにも眩しすぎて周りが見えねえけど、とりあえず歓声に応えてやろうと両手を上げて手を振ってやった。直ぐに王女とかが来ると思ってたんだ。


『おお! 今回は当たりでしたね! 人型、男、活きが良さそうです。さあ、ベットの始まりです。残り時間はあとわずかですよ!』


「は?」


 徐々に周りが見えるようになれば、俺が居たのは高い壁に囲まれた運動場のような場所。

 歓声が聞こえていたのは、その壁の上で、俺が居る円形の運動場をグルリと囲むように階段状になったそこには溢れんばかりに人が居た。いや、あれは人なのか?

 葉巻を咥えてスーツを着ているトカゲに、目が一つしかない青い巨人、逆に目が八個もある奴もいるし、頭から触手が生えている奴まで居る。


「なんだ、何なんだよ。どこだよここ!」


 学生時代に習ったことがあるコロシアムとよく似た形の場所。

 何で俺がこんな場所に居るんだよ。

 異世界転生したんじゃねえのかよ。


「あらあら、元気ね。意外と頑張るんじゃないかしら」

「そう思うか? だが、今日の相手は地獄の門番だぞ? 三十秒ももたないんじゃないか?」

「いや、逃げ回って一分くらい行くかもしれないぞ」


 ザワザワとした声に混じって聞こえてくる内容は、どういう意味だ?


「シュコー(こちらへ)シュコー(選べ)」


 呆然としている俺の元へ、黒尽くめの鎧が近付いてきた。身振りだけで連れていかれた先には壁にかかった剣、槍、斧、盾などの武器防具。


「いやいや、剣と魔法の世界を想像してたけど、そういう意味じゃなくね?」


 誰に言うでもなく呟く声に答える声は無い。鎧の奴も居なくなったし。


『さあ、ベロちゃんの興奮状態がマックスになりましたので、ベットタイムは終了です。一番多かったのは三十秒ですね。次いで一分。はははっ、それだけ逃げ切れると良いですね。では頑張ってもらいましょう!』

「「「「おぉぉぉぉぉ」」」」


 再び聞こえる大きなアナウンス。そういえば日本語に聞こえるけど、トカゲとか触手が日本語を喋ってんのか?


 ガラガラガラと鉄が擦れるような音が聞こえ、其方に目を向ければ――おいおい。まじかよ。

 運動場の向かい側から出て来たのは、頭が三つある巨大な黒い犬だった。

 どう見ても涎をダラダラ流して腹が減っているのが分かる。そしてこれは俺が……?


「こんな剣でどうにかなる訳なくね?」


 犬がこちらを向いた時、俺の足は動かなくなった。


「おい、逃げろよ~」

「ちょっと、あと四十秒は走りなさいよ~!」


 いやいや、無茶言ってんじゃねえよ。意味分かんねえよ。

 俺、転生して人生やり直すはずだろ? 


「BAOUUU」


 一声上げた犬が飛んだと思ったら、目の前が暗くなった。


(神様、話が違うじゃねえか)


 祈りを叫ぶ時間も無く、痛みを感じる事も無く、俺は――。



 ◇



「話が違うって大抵言うけどさ、あれ何なんだろうね」

「うんうん、話も何も、会話なんてしてないのにね」

「けどさ、あれ便利だよね。自分達で勝手に選んでくれるじゃん? 選ばない奴らだけ面接すればよくなったから大分楽になったよね」


 ここはとある場所にある神様達の管理センター。

 今日も転生者の管理を任された神様が、地球から別の星に行った魂が無事に到着したか確認しています。


 彼らはとある研修中の神様に悪戯をした事で、大神様に叱られて管理センターでのお仕事を罰として与えられています。


 世界を渡る魂を管理するのは、本来であれば元の世界の神と、行先の神が話し合いをして行いますが、現在地球と呼ばれる場所の魂は担当だったソーラー神が既に見放し、好きにして良いと言った事で自由取引となっています。

 とはいえ、既に良い魂は殆ど移動済み。残っているのは問題のある魂ばかり。

 ですが、問題のある魂は会話にならない事が多く、それの処理は皆が嫌がる事だったのです。

 だからこそ、彼らの罰として与えられたのですが、あまりにも不憫だと憐れんだ神様が良いアイテムを下さったのです。

 それがあの画面を操作して、自分で選ぶという方法です。


「けどさ、あんな怪しい画面が出てきたら、普通は色々調べない? 誰も躊躇しないよね」


 そう、あの世界に飛ばされてくるのは問題がある魂で、飛んで来たら直ぐにあの画面が目の前に出るようになっている。

 突然目の前に半透明の画面が出てくるのに、誰も怪しむことなく画面に触れるというのは神様達にとって驚きしかなかった。


 ちなみに、一つ目の質問で『成仏する』を選ぶのは一割も居ない。

 もし『成仏する』を選んだら、即座に魂浄化システムに落とされて綺麗な状態にされてリサイクルに回される。これが一番手っ取り早い。ただ、増えすぎると在庫が貯まるので希望する世界の神様に販売する手間がある。


 二つ目の質問で『胎児』を選んだ場合は、何の胎児になるのかは分からない。もしかしたら凄く良い家族の元に誕生するかもしれないけれど、その場合は記憶を消しているので、世界に害をなさない生き方をする事を望むかな。

 だから『死ぬ直前の姿』を選んでもらえると手間が少なくて助かるんだよね。


 三つ目の質問で『現在世界』を選ばれた場合は、地球の滅亡をその目で見る事になるかな。

 あの世界ではソーラー神の神託を聞ける者は居らず、神の言葉を代弁する奴らが勝手な事をし放題。世界を滅ぼす攻撃をしあった事であの星はもう限界が近い。

 今残っている生き物はろくでなしが殆どだからね。パッと見は普通の世界が続いているけど、殆どが生き物じゃなくてロボットだしね。だから、『胎児』を選択してる場合は昆虫になるしかない。人間で新しく生まれてくるのはもういないから。


『異世界』を選んでもらえると、システムの上で転生をさせる事が出来る。あちらの世界としては新しいコアが手に入ると喜んでもらえる。

 行先は順番待ちしている神様の世界。神様はソーラー神の様に複数世界を管理しているんだけど、その中でも【最下層】と呼ばれる世界の危険な場所に転生する事になるから、直ぐにあちらの世界にある魂浄化システムに突っ込まれて、新しく生まれ変われるって事。これが一番僕たちにとっても、他世界の神様にとってもwin-winって事。



「あ~あ、またあいつも聞いてないとか言ってるよ」

「本当に変な人達だよね。だって僕達、何も約束なんかしてないのにね」






 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ