魅力と胡蝶の夢
僕は、人を半殺しにしたゲイから、「凛々しくてカッコいい♡」と褒められたことがある。多分、彼なりの褒め言葉なんだろうけど、そのあとすぐにケツと乳首を揉まれたから嬉しくはなかった。
僕はゲイと男にモテる。理由は分からない。だけど、定期的に僕のことを好きになる男が現れて、僕を神輿に乗せて担ぎ上げる様子はとても狂気的で、人の狂気を描いたスリラー映画のような、歪な不気味さをこの状況に感じてる。
初対面の人に好かれる。これは嬉しいことだ(多分)。でも、その好かれ方が魔法の「魅了」にでもかかったかのように、献身的で盲目的だと本当に恐い。本っ当に、恐ろしくて不気味だ。
初めは、みんなふざけてると思ってた。でも、僕の目を見て「◯◯さんのためなら俺、死ねます」と真剣に言われると冗談に聞こえないし、やっぱり恐い。
だってさ、難癖をつけて絡んできた不良の先輩たちが、次の日には僕を好きになってる。お店の店員さんがウインクを何度もしてきて連絡先を渡してくる。出会って4秒くらいの人から、「こんなお兄ちゃんが欲しかった」と握手を求められて献身的な行動をずっとされる。「〇〇さん、お疲れ様ッス」とあいさつしてくる人が現れて、どんどん人数が増えていく。
どれも意味が分からなくない?
なんて言ったらいいのか分からないけど、始まりと結果を繋ぐ、『過程』が無いように感じる。それがとりわけ不気味なんだと思う。「受験しよう!」と思ったらもう合格してた、そんな非現実性を感じる。
僕にそんな魅力があるとは思えない。人を強く引き付ける外見的な魅力は無いように思う。唯一、人と違うのは、「車が来てるから避けろよ、危ねぇだろ」みたいな注意をするくらい。
でも普通さ、注意って人に嫌われない?
正直に言ってしまうと、全部僕の妄想なんじゃないかと疑ってる。だって、いきなり人が自分を盲目的に好きになったり、周りが僕を担ぎ上げて、僕を中心としたグループが出来上がる。
そんな事ありえる?
あまりに現実感が無さすぎる。
本当はさ、僕は植物状態の寝たきりで夢を見ているのかもしれない。現実の僕は喋ることも、動くこともできない。だからこそ、幸せな夢をみてる。
けど、その夢は現実ではないから少し歪さがある。
僕が生きている現実は本物なのだろうか。