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第41話 敗戦の悔しさ

☆☆☆準優勝


結論から言えば柴橋は準優勝で終わった。というのも、決勝に上がったほとんどのプレイヤーがクロスローズを狙い撃ちしたのだ。


試合中無双している柴橋に対して必ず数的有利を作っていた。


いくら柴橋の腕があっても、複数人が一斉に狙っている状況での撃ち合いになればダメージレースで不利だ。


最初は柴橋がキルされ続けリスポーン。本人も序盤でそのことに気付き立ち回りを変え、ポイントを追い上げていったが……


最終的なポイント差で負けてしまった。


会場の空気も正直に言えば冷めていた。というのも、これでは一対数十の戦いだったからだ。


どう考えても実力ではクロスローズがダントツであることが証明されていた。だけど結果は準優勝。


むしろどうしてあの状況で準優勝までもっていったことを褒めたい。


だって、優勝者より、準優勝したクロスローズの方が拍手が大きかった。


クロスローズは何も言わずに去っていく。野田さんから貰った関係者パスで柴橋の控室に入る。


「あ、武野さん。どうも……その」


すると落ち込んだ野田さんが頭を下げる。恐らく同じ気持ちだろう。


正直に言えば死ぬほど悔しい。勝てた試合だったのだあれは……だけど、運が悪かった。


でも一番悔しいのは本人であることは分かっている。だからこそ……なんて声を掛けたらいいのか……


「あの、柴橋は……」


「奥で凄く落ち込んでいます……今から彼女を車で家に送ろうとしていますが……よろしければ武野さんも送りますけど」


本当にマネージャーなんだな。


「声かけてもいいですか?」


「武野さんが一番理解していると思いますので、私では踏み込めませんからフォローしていただけると……今回の落ち込みは本当にひどいものですので」


「以前の大会でも優勝逃した時ありましたよね二年前のアジア大会とか……」


クロスローズの公式大会は全て把握している。日程を全部言うと野田さんに驚かれる。


「よくご存じのようで、以前も落ち込んではいましたがまさかここまでとは……」


「分かりました。僕にできることはやってみます」


「お願いします……私は一度部屋から出ています。一応声は漏れないと思いますが一応配慮は必要ですので」


……いや、そういうことは絶対にしないぞ。慰めるにしてもね……


☆☆☆泣き出す柴橋


柴橋の元へ向かうと椅子があるにもかかわらず、床に座り込んでいた。


パーカーのフードを深く被り一目で落ち込んでいると分かる。


「せ、先輩……ごめんなさい……私。先輩と約束したのに……ごめんなさい!」


なんて声を掛けたらいいのか……ここで柴橋の努力を肯定したらいいのか……


「俺は怒ってないよ。柴橋……俺すっごい悔しかったから……そのさ、柴橋はもっと悔しいよな……」


「……凄く悔しかったです……だって、私……優勝できたのに……先輩に『お願い』したかったのに……なのに、皆が私を狙って……凄く慌てても何とか諦めずに優勝しようとして……でも結果は準優勝で……駄目ですよね……」


泣き出しそうな声。


「ほんと。正直腹立ってきた。せこいだろあのリンチ。むしろ俺は柴橋があの状況から準優勝できたの凄かったと思う。というか、会場の空気も皆柴橋だったじゃん……誰が見ても柴橋の実力が最強だって分かってるから!」


「優勝できなかったことより、先輩との約束を守れなかった……辛いんです。頑張ったとか、努力したとか、惜しかったとか、運がなかったとか……私の中のクロスローズは結果が全てなんです……言い訳なんて……クロスローズらしくない!」


……そっちなの!? だけど、頑張ったからを理由に『お願い』を聞くというのは違う気がする。多分柴橋はゲームのことで嘘をつきたくないのだろう。


柴橋の頭を撫でる。そして、被っているフードを取って顔を見た。


顔が赤くなり、泣いていた。それに気付き柴橋はすぐに顔を手で隠す。


「……せ、先輩……今の顔見ないでください……」


「俺はゲーム下手だから、一緒に悔しがることしかできない。柴橋は今日勝てなかったから、俺は柴橋の『お願い』を聞くことはできない。でも、慰めるのは『彼氏』として、したい事だから……」


「ダメです……今の私……本当にブスですから! 本当に……ブスなんで――ぴゃ!?」


顔を隠している両手を少し強い力で掴み、無理やり顔を見る。


「ごめん。今から唯一存在する柴橋の嫌いなところ言うぞ。流石に怒った、あの時言っただろ。柴橋はかわいい。滅茶苦茶可愛い……なのに、どうしてブスって言うんだよ……泣いていたって可愛いんだよ……何度も言い続けるぞ……柴橋はかわいいんだ!」


「せ、先輩……!?」


「ゲームのやりすぎで出ている目のクマも好きだし、頭を撫でた時にふわふわしてて癖毛の髪も好きだし、外に出ないから日焼けしていない白い肌だって好きだし、抱きしめた時の身体の線の細さだって……あと、水着から見えた凄く可愛いおへそも好き……それに少し出てる肋骨だって……全部柴橋のところ好きだから……!」


……やばい! つい暴走して柴橋の好きなところを!


「せ、せせせせせ……せんぱい!?」


「……ごめん。話が逸れた。だから……元気出せとかそういうことは言わない。その、胸ならいつでも貸すからさ……悔しいなら悔しいって泣いていい。大好きな彼女が落ち込んでるなら……彼氏として、慰めたいだけなんだ。柴橋……」


「せんぱい……ありがとうございます……ありがとうございます……うわぁぁぁぁん! 悔しいです……悔しいです……うわぁぁぁん!」


柴橋は俺の胸元に飛びついて泣いた。その間柴橋の頭をずっと撫で続ける。


「せんぱい……せんぱい! すぅぅ……はぁ……」


途中から俺の匂い嗅いでたけど……まぁいいのかな。


☆☆☆帰宅


その後外で待機していた野田さんの車に乗る。後部座席に二人。


「せんぱい。大好きです……好き好き……せんぱい……せんぱい……」


ちなみに柴橋は俺に抱き着いたまま離れなかった。正直野田さんの前でそれされると死ぬほど恥ずかしかったが、メンタルケアの面もあって、野田さんも見ないふりをしてくれた。


「すみません。野田さん。ちょっと、寄り道してもらっていいですか……あそこのモンキ・ドーテに」


「構いませんが……夕食なら私が手配しますけど」


すげぇ……なんか金持ちみたいだ。いや、柴橋はその通りなんだけど


「その……お恥ずかしながらちょっとお手洗いに行きたくて……」


「あ、ごめんなさい。私が抱き着いてばかりで……先輩」


「いやいや、気にしないでよ。でも一瞬だけ離れるから……戻ったらまた抱き着いてきてほしいから……」


柴橋の頭をもう一度撫でる。あー柴橋の髪最高……


「せんぱぁい! 好き好き……大好きです!」


「着きましたよ。武野さん」


一度車を降りてモンキへ行った。用を終えて柴橋の家へ送られた。


二人きりになる際。野田さんに小言を言われたがそういうつもりは一切ない。そこは彼氏としてしっかりしている。


時計は既に十九時を回っていた。


「せ、先輩……今日も部屋にきてくれるんですね……ありがとうございます」


「うん」


そのまま柴橋の部屋へ入り野田さんが用意した高級そうな弁当を食べるけど味が入ってこなかった。何気ない会話をするけどやっぱり普段よりか元気がない。


顔を見ると柴橋は落ち込んでいる。表面上は明るく見えていても、やっぱり優勝できなかったことが悔しかったんだろう。


だからこそ……正直引かれるかもしれないけど俺はやる……


「と、ところでさ、柴橋は俺との約束を守れなかったんだよな」


「は、はい……ごめんなさい……」


「そ、そしたらば、『罰ゲーム』があるべきじゃないか?」


「……え? 『罰ゲーム』ですか……?」


俺の提案に柴橋は驚いた。

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