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5 課題と学校

 山間部にあるせいか都内よりも涼しい風が吹く中、二人は帰途についた。どこからか、金木犀の香りが運ばれてきていた。

 点在する家はどれも旧日本家屋といった佇まいで、どこかのテーマパークにでも来た気分になる。

「蘆屋の屋敷はどの辺にあるの?」

 一歩下がった位置でついてくるクオンに聞いてみる。

 自分が敬語をやめればいつかクオンも肩の力を抜いてくれるのではないかと期待して、志人は口調を変えてみた。

「この村は、安倍家を中心に五芒星の形を成しています。蘆屋家は左上、滋岡家は左下になりますので比較的近い位置にあります」

 彼の期待とは裏腹に、無感情な敬語で返される。テーマパークの案内音声のようだ。

「道真って、ちょっと危なそうな雰囲気あるよね」

「言動や素行は多少乱暴ですが、宗明様に次ぐ実力をお持ちです」

 志人は少し驚いた。陰陽師の修行などには不真面目そうに思えていたからだ。

「結構優秀なんだね」

「学生時代は私とトップを争う仲でした」

 しれっと重要な情報を出してくるクオン。

 思わず彼女の方を見ると、少し驚いたように足を止めた。

 秋風が彼女の銀髪を揺らし、陽光を受けて煌めいた。

「同級生?」

「はい。今年の三月に高等部を卒業しました」

 あまりの事に絶句する志人。

 クオンの落ち着いた物腰は、どう見ても十八歳とは思えなかった。

「ちなみに宗明はいくつ?」

「宗明様は二十一歳になられます」

 こっちは美陽と同級生か、と志人は二人の姿を思い出す。

 美陽は年相応だが、宗明はやはりもう少し上に見えた。

「みんな落ち着いてるなぁ」

 呟いて歩き出す志人に、小首を傾げてからクオンが続く。

「って、学校あるんだ」

 違和感を思い出して志人が聞いた。

「はい。安倍家の少し先にございます。志人様達が受けてこられた授業とは別に、陰陽道の授業がございます」

「そこであの折り鶴教えてもらえるの?」

 先程出された課題を思い出して、志人が尋ねる。

「はい。皆、七歳になる頃には習得しております」

「あれが小学校レベルかよ」

 志人は大きくため息をついた。

「じゃあ希ちゃんもできるんだ?」

「あの子はまだ六歳で、習得中です」

 あの小さな子と同じところに立っている事に、志人は思わず苦笑いを浮かべる。

「帰ったら教えてくれるか?」

「承知いたしました」

 志人のお願いに、クオンは相変わらずの無表情で答えた。


 深夜一時を過ぎた頃、志人は布団に突っ伏していた。

 クオンから渡された紙は、折り目一つない綺麗なままだ。

 やり方やコツを聞き出そうとしてみたが、彼女から出てきた言葉には返す言葉もなかった。

「呼吸の仕方を尋ねられたら、どうお答えになりますか?」

 クオンも困り果てた上で言ったのだろう。

 それからはひたすら手の上の紙が折れるようにイメージしてみたが、結局微動だにしなかった。

 安倍家での気疲れと、紙切れに無駄に集中力を使ったせいか、志人はすぐに寝落ちした。

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