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一杯目 異世界初日の朝ごはん。地雷王子を添えて《前編》

 目が覚めたら、ここは天国かと見紛うようなふかっふかのベッドの上だった。

 むくりと起き上がると、銀色の髪が波打って煌めく。


(ここすごいお部屋だな、今時の病院はホテルみたいなんだねぇ……)


 ここに凜が居てくれたなら『そんなわけ無いでしょおバカ!』と突っ込んでくれたのだろうが、生憎いまここには彼女しか居ない。


 まだ眠くてぼんやりした陽菜の腹の虫が小さく鳴いた。


(なんにせよ、お腹が空いたなぁ……)


 やたらと高く感じるベッドから下りて、これまた豪奢なドアをノックする。廊下に待機していた侍女が薄く扉を開いてこちらを見たので、陽菜はぺこりと頭を下げた。


「おっ、おはようございますお嬢様。本日はお早いご起床で……!」


「おはようございます。あの、お腹が空いてしまったので朝ごはんを頂きたいのですが、病院食は何時に来ますか?」


 と、そこにタイミングよく朝食を運んできたであろう侍女が、唖然とした顔でそれから手を離してしまった。

 けたたましい音を立てて落下したパンやらスープやらを勿体ないと眺める陽菜の肩を、その侍女が両手で掴む。


「ア……アンジェリカお嬢様が私達使用人に頭を下げるだなんて……!発熱ですか!?それとも頭痛!?あぁなんてこと、本日は婚約の顔合わせに第一王子殿下がお見えになる日ですのに……!」


 『とにかく今すぐお医者様に!』と二人がかりで持ち上げられて、そこでやっと自分の身体が子供サイズであることに気付く。

 担がれながら見えた窓に映る顔を見て、陽菜はようやく自分があの乙女ゲームの悪役令嬢になっていることを理解したのだった。



 


『なるほど……。これが流行りの“異世界転生”って奴ですねぇ』


『なんであんたはそんなに呑気なの!』
















ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「特に異常は見当たりませんし、軽い疲労ではないですかな」


 陽菜、改め悪役令嬢アンジェリカを診察してくれた医師の診断に、付き添っていた侍女達は口々に抗議しだす。


「そんな訳はありません!お元気なお嬢様が私達に頭を下げて、しかも敬語だなんて……!」


「そうです!体調不良でないのなら、天変地異の前触れとしか思えません!!」


「い、いやしかし、意識もはっきりしていて熱はもちろん、咳や関節の痛みもない。至って健康そのものですぞ」


 尚医師に喰い下がろうとする彼女達の後ろで、アンジェリカの腹の虫がまた鳴いた。


「あのぉ、今日はお客様が来るんですよね?私は本当に元気なので……とりあえず、ご飯にしませんか?」


「えっ……、で、でも」


「お台所はあっちかなぁ、異世界の調理器具なんて楽しみです」


「あぁぁぁぁっ、お待ち下さいお嬢様!厨房なんて主人が入る場所ではありませんから!!」


「……しばしお会いせぬ間にずいぶん穏やかになられたと思ったが、物腰が変わられてもわがままは相変わらずらしい。この館勤めの皆様は気の毒じゃな」


 そうため息をこぼし、医師はこっそり家路についたのだった。



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