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5膳目 作らざるもの文句を言うべからず

 クランペット公爵家、敷地内の別邸。別名、天使のお料理部屋。


 娘を溺愛し以下なる奇行も全肯定する母君が用意した、アンジェリカ専用の厨房と食料庫、食堂等が介した愛らしいお家である。が、これは平時の場合なのであって。


 食卓に並んだ炭と屑野菜、まだ生きている魚等が乗った皿達と、フォーク片手に机に伏している三人の姿にミゲルは天井を仰ぎ、シュトラールは静かに目線を逸らした。


((これは酷い……))


「アンジュ、彼らに一体何を?」


「え?あのとき言った通りですよー」


「あの時……?あぁ」


 彼らを連行する際だ。確か、『お前がシェフになるんだよ!』と声高に叫んでいた気がする。


「つまりこの炭たちは彼らの汚料理だと言うことかな」


「果たして料理と呼んで良いかも甚だ疑問なのだが……っ、アンジェリカ!」


 どこから指摘したら良いかと顔を見合わせる男二人を他所に軽い足取りでテーブルに近づいたアンジェリカが、大皿に乗った炭(肉)を一口かじる。


「あらら、表面は焦げコゲなのに中は生焼け。旨味も抜けちゃってますね。フライパンを温めない内にお肉を乗せて強火で焼くとこうなっちゃうんですよ」


 手痛い指摘に、三馬鹿のリーダーであった男が眉尻を上げる。彼が焼いたらしい。

 それからもアンジェリカは料理とも言えないそれらを味見しては、最低限の基本をなんでも無いように口にした。三人は気に触った素振りを見せるものの、疲弊のあまり反抗までは出来ないようだ。


「さて!ではこのお料理達は責任持って皆さんが全部召し上がってくださいね〜。お夕飯用の食材も補充はしておきますから」


「ち、ちょっと待ってくれ……!これを、全部!?」


「《《約束》》しましたよね?」


 にこやかな圧に青ざめ、三人はシュトラールに視線を向ける。


「で、殿下……!」


「そんな縋る様な眼差しを向けられてもね……。一体アンジュと君達は、どのような取り決めを交わしたんだい?」


「『本日より一週間、食事を各々自分で作る。また、出来上がった品は必ず完食すること』、これだけです」


 料理のやり方はアンジェリカからは教えないが、屋敷内にあるレシピ本の使用や第三者から指導を受けるのは自由。この条件を達成すれば今回の無礼は不問に処すとして、彼らの親にも許可を得たようだった。ご丁寧に誓約書まで用意されている当たり、これは本気だ。逆らえない。


『作らざるもの文句を言うべからず』


 これが、アンジェリカの前世よりの座右の銘である。作り手の苦労を身をもって知るが良い。


 数分たっぷり間を置いて、シュトラールは炭ステーキをフォークに刺して、三馬鹿の前に差し出した。


「贖罪だと思って腹を括るんだね」


 この場での最高権力者にまで見捨てられた三人の絶望の悲鳴が響く中、アンジェリカはとてもご機嫌だった。









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