第四百話 Sideジャック 誤報
Sideジャック
【ジャック。すまん、米崎が死んだ】
光の精霊からそんな連絡が届いた。
【お前が謝ることじゃないだろ。これだけ同レベルのやつと戦うんだ。誰か死ぬだろうとは思ってたぜ。一応確認するが生き返らせることはできないんだな?】
俺からもそう送り返した。
【無理だ。ヒノエの報告では魂も強制的に世界の流れに持っていかれたらしい】
何の問題もなく光の精霊による連絡はとりあえていた。
「そうか……」
何も奇妙なところはなかったし、それはおそらく全て事実のままに届けられていたことなのだ。ほとんどの真実の中に少しだけ嘘を混ぜる。嘘だと特定する何かがなければ、俺たちでも奇妙な点には気づけない。
「米崎の野郎、一番死にそうにない顔してたのにな」
米崎の不健康な顔を思い出す。探索者になっても全然健康そうに見えない男だった。きっとうちのメンバーの中じゃ俺があいつとの付き合いは一番長い。甲府の三悪人、そんな風に呼ばれたこともあったのが懐かしい。
その中で殺しを専門にやっていた俺だけが、生き残っているというのも変な話だ。
「終わったら墓参りぐらい行くか、なあ土岐」
米崎と俺はお互い死んでも悲しむとかいう関係じゃなかった。
「ジャックからまともな提案を聞くなんてね。意外と感傷的になってるのかな」
「どうだろうな」
身近な人間が死ぬ。探索者をしていれば初めての経験じゃない。仲間と思ってたやつに死なれたことも一度や二度じゃない。仲間が裏切って俺が殺したなんて経験だってある。人殺しを生業にしてきたのだ。
その分、人からも恨まれた。命に関わり続け、ゴールドエリアを支配する時はこんなに殺す必要があるのか。俺でも悩むほどたくさん人が死んだ。俺の命は屍の上に立ち、いずれ自分が死ぬ番が来て、どんな死に方をしても、文句などない。
「いや、俺は、どんな死に方をしたって文句を言うほど立派な生き方をしてない。あいつもきっとそうだったんだろう。だから感傷的になんてなってないさ」
「ならいいけど、最後の仕上げだ。気を抜かないようにしてくれよ」
「分かってる。六条のアホ、かなり気にしてやがるみたいだったしな。俺まで死んだらあのバカ泣き出すぞ。しっかりきっちり終わらせようぜ」
海王獣アトラディオ。レベル的には圧倒的に向こうが上だ。しかしよくも悪くもモンスターの枠から出られないやつだった。正直こういうのは戦いやすい。こういうのじゃなくて戦いにくいのは、利口なモンスターだ。
人になることを好んだりする変なやつだ。
そういうのが出た時は同じ人よりまだ怖いぐらいだが、アトラディオはそうではなかった。どこまでもモンスターであり、人よりも人であろうとしたりはしなかった。それでも当初は出力不足でなかなか勝てずにいたのだ。
それが徐々にレベルが戻ってくるほどにこちらに天秤が傾いてきた。そして、増援まで駆けつけてきたとなればもう勝利は揺るがなかった。
「ウオオオオオン!!!」
天に響く鳴き声。氷のような青白い毛並みの狼がそこにいた。氷狼王グレイシス。どうにも煉獄獣バルガレオルとの相性が致命的なほど悪く、帝王ロガンのところに応援に向かったが、配置換えしてこっちに来たらしい。
最強生物と謳われるギガと戦っている桐山達も気になるが、あちらはどうも逃げるだけならどうとでもなるらしく応援の必要はないと光の精霊が伝えてきた。それに摩莉佳が桐山達の増援として向かったそうだ。
これで残ったモンスターに対して、こちらは3対1の体制になってる。さらに帝王ロガンにはヒノエが向かい戦いの天秤は、確実にこちらへと向いている。それでも米崎が死んだことが気になった。悲しいからじゃない。
よくもあんな用意周到な男を殺せたものだ。あいつは自分が死なないように確実にいくつも保険をかけておくタイプだ。地轟獣テスラの方がレベルが上だったとはいえ、モンスターに殺されるとは信じがたい。
「それは六条も感じてるみたいだった」
光の精霊から伝えられてくるメッセージでそれは感じられた。
「まあ今、俺が考えても仕方ねえな」
俺は下の景色を見た。俺の風とアトラディオの水流により荒れる海が、氷狼王グレイシスによってそのままの形で凍り付き、そしてアトラディオの五感は全て土岐によってぐちゃぐちゃに歪められている。
戦いの始まった最初は抵抗できただろうが、地轟獣メテオが死に俺たちがレベル813になり、レベル制限を受けていないグレイシスがこちらに来たことによって戦いの天秤はもうこちらに完全に向いていた。
「人間のレベル971ならこんな簡単には行かないんだがな。どれだけの出力を持っていても、なかなかモンスターの枠を超えるのは難しいみたいだな」
俺は天空に手を掲げる。俺と土岐のコンビは、土岐が常に相手に幻覚を見せ、その間に俺が攻撃する。その手法でやってきた。今回はそれに加えて拘束してくる氷までついてくれば、戦いはもう決着していると言ってよかった。
「ちょっと時間はかかったがこれで終わりだ!」
俺が使える最大の魔法。それで終わらせる。元のレベルなら言霊がなくても唱えられるのだが、今はレベルが足りなくて最大出力を出そうと思えば唱えるしかない。俺は魔力を高めていき集中を高めていく。
アトラディオが力の気配に気づいたのだろう。回避行動を取ろうとして体を動かそうとしている。海水ごと無理やり固定化された体が、動く。海の氷に亀裂が急激に入った。しかし氷狼王グレイシスも海とは相性が良かった。
氷属性は水属性に近く、そして凍らせる水が常にそこに大量にある。氷にひびが入っても、再び海の水は凍っていく。それでもそれほど長時間は拘束できそうにない。単純な力勝負になればレベルの高いアトラディオの方が勝つ。
しかし俺が言霊を天に向かって高らかに紡いでいく。
【我が名は風神
天の息吹を操る者
一時の力は失われようとも
大気に眠る全ての風よ
我が呼び声に応えよ
今ここに我が名のもとに全ての力を結集せよ
嵐の如くすべてを打ち砕き】
体から力がどんどんと抜けていく。全てを注ぎ込む。米崎が死んだと聞いて、かなり必要ないほど力を込めた。万が一にも失敗はしない。
【風よ この地を震撼させよ!】
ちょっと力をこめすぎた。土岐、逃げておいてくれよ。グレイシスも近づくんじゃねえぞ。じゃあ行くぞ。
【烈皇龍・風神撃!!!】
空から白い風が力の形。龍の体を表し、それが空から落ちてくる。海の氷の中、そんな障害などどこにもなかったというように突き進み、強大なアトラディオの体に食いつきそのまま消滅させていく。
アトラディオは土岐に五感をずらされて、防御に力を集中することもできず、グレイシスに氷で束縛され当たってからも回避行動も取ることができなかった。凍りついた短い時間の中、アトラディオの行動が完全に制限されている時。
全ての決着はついてしまった。
【——きっちり片付いたな。六条! 急げよ!】
光の精霊によって知らせるとすぐに返事があった。すぐにこちらに来るとのことだった。メテオが死んでからそれほど時間は経過していない。六条はまだどの場所にも向かってなかったようでこちらにすぐに来るようだ。
先ほどの魔法の影響で海はかなり荒れていたが、まあ俺たちならどうとでもなる程度だ。
「お疲れ様」
やっぱりきっちり俺の魔法をよけてくれていたようで、元気な姿の土岐がそばに来た。
「ジャックだったか」
そしてグレイシスも声をかけてきた。仲間意識はまだ薄いようで、少し離れた場所で警戒するようにしていたが、当然敵対する気もないようだ。
「ああ、あんたにも助けられたな。ありがとよ」
「礼など必要ない。私にも私の都合があって協力しただけだ」
「そうかよ」
事情か……。それにしても六条は、どうやったらこんなに簡単にルビーモンスターなんて仲間にできるんだ? こいつらってプライド高くてマジで簡単には仲間になってくれるもんじゃないぞ。それをポコポコ簡単に……。
《俺も殺さなかったらアトラディオは仲間になったと思うか?》
《どうかな……。なんか無理だと思うけどな》
《だよな。でもエヴィーの召喚獣もクーモってのは六条を気に入ってるらしいぜ。なあ今度コツでも聞いてみるか?》
《彼自身自分でも分かってないんじゃないかな》
強いて言うならあいつがダンジョンの申し子である。それぐらいが理由としてあるならある。そんなところか。だからって幸せかと言うとあいつ自身トラブル続きなんだよな。10年もいなくなったり、仲間に裏切られまくったり……。
グレイシスがこちらに声をかけてきた。
「おい、ジャックとかいう人間。アトラディオがゆっくり海に散らばった自分の体を集めようとしているぞ。あの調子だと1ヶ月もすれば再生すると思うがどうする?」
「ああ、そういう感じか」
アトラディオは最後の方、少しやる気をなくしていた気がする。もともと向こうからしたら争う理由のない戦いだ。こんな化け物3人も相手にするぐらいなら、一旦死んでゆっくり復活すればいいと思ったか。
海にずっと居続けるアトラディオからすれば、【管理球】もいずれは取り返せるもの。それぐらいの感覚は持っていたのかもしれない。おそらくアトラディオはかなりの不死性を持っていて、殺し切るのが難しいモンスターなのだろう。
たまにそういうモンスターがいて、細胞を少しでも残せばそこから少しずつ再生してしまうのだ。こういうやつを敵に回すと厄介だ。魂を確実に壊すか、残った細胞の全てを処分するか、どちらかができないと殺せない。
「復活には1ヶ月かかるで間違いないか?」
「おそらくそれ以上ということはあってもそれ以下はないだろうな。アトラディオにとっては急ぐ理由もない。我々という厄介な敵が、海への集中力をなくすぐらいの頃に復活するのが一番だと考えてそうだ」
「1ヶ月後だとどう考えてもこっちの用事は全部終わってる。それなら復活しても、それこそ六条が話し合いで決着つけるんじゃねえの」
「それでいいのか?」
「問題ねえだろ。なんかうちの大将、女とモンスターに好かれやすい体質みたいだし」
チラッとグレイシスが女なんだろうかと思いながら見た。
「そうか。まあ確かにあの男はそんな感じだったな。まあ私も復活したらアトラディオとの話合いには付き合おう」
「そうしてくれ。と、それより土岐、こっちは任せるぞ」
なんだか俺はもう気持ちが別の方に向いていた。今のところこちらは順調だ。米崎が死んだことは残念だが、それ以外は問題なく進んでる。向こうの被害を考えたら、こちらが1人死んだだけなのは勝ちと言える。
悲しいが冷静に考えればそうだ。俺たちは死ぬ覚悟でここに来た。死んだからって文句はない。それなのに、米崎が死んだことに対する違和感が、どうにも俺の中で大きくなってきてる。嫌な感じがするんだ。
六条は自分のレベルを上げなきゃいけない。そうしないと俺たちが強くならない。強くならないとどこかでつまづくかもしれない。だから何よりもレベル上げを、ひいては【管理球】の支配を優先するしかない。
六条が空を飛んで急激に近づいてきているのを感じる。本当なら【転移】を使いたいのだろうが、向こうもホロスと戦ってから薬関係はかなりネタ切れしてきてるんだろう。
「任せるってジャック、どこ行くの?」
「桐山達のところだ」
「桐山さん達は3人もいるんだよ。君まで行く必要ある?」
土岐は意外だったようで首をかしげた。そうすると何しろ子供の見た目なので意外と可愛かった。
「どうもあいつらのところの戦況がいつまでたっても変わらないのが気になる。確か前も逃げてるって言ってたよな。桐山だけならともかく、榊が居てそんなに同じことを続けるのはおかしい」
「まあそれは確かに。榊さんって結構攻撃的だもんね」
六条がいない10年間、日本は世界相手に戦争をしていた。そんな戦場に戦力として駆り出されることもあり、一度外で榊が外国の探索者相手に戦っているところを見たことがある。あの時榊の方が相手よりレベルは下だった。
それでもガンガン攻め込んで、気づけば相手を殺していた。それは俺よりもまだ早かった。あの時の印象からいって、今の榊は控えめすぎる。俺たちが戦い終わっているのにそれでもまだ逃げてるなど……。
「何もないならそれでいいが、米崎が死んだってんだ。なんか嫌な感じがする」
「なるほど……。ジャックがそういう時は大抵何かあるからね。了解した。こっちは残務処理だけだ。グレイシスも連れて行ってくれていいよ」
「いや、お前を一人にするのもなんか心配だ。悪いけど狼の姉ちゃん。ここでこいつといてやってくれるか?」
「気になるなら早く行け。この子は私がしっかり守ってやる」
「なんか2人とも僕のこと子供を扱いしてない?」
土岐は不満そうな顔をしているが、俺が決めたことに文句はないようだ。俺はその言葉に答えるのも、もどかしく感じて飛び始めた。ちょうど六条が稲妻のような速度で、こちらに向かって飛んでくるのが見えた。
あいつはいつも急いでるな。まあ今回は俺も急いでる。
《六条、どうも妙な感じがする。俺は桐山の方に向かう》
《頼む! 俺もできるだけ急ぐ!》
六条が鳳凰の姿で俺とすれ違う。俺も風神として速度であいつに負けてられない。急ごうと大気中にある風の力をこちらに注いでいく。足元から一気に放つと凄まじい加速が体を襲う。
この体でも負荷を感じるほど高速で飛び、景色が光のように過ぎていく。【異界反応】とうまく融合させて空気による抵抗は0にして、目標の場所を風の精霊に聞こうとしたら、光の精霊が俺の進むべき方向に光を照らしてくれる。
それに従いどんどん飛んでいくと、大海原の光景が続く向こう側に、大きなギガノス大陸が見えてきた。
「OK。2人の気配はあるよな。いや、摩莉佳も来てるって言ってたから3人か? 大きいエネルギー3つを捕まえればいいだけだ。ギガもいるはずだから探すまでもなく見つかるはずなんだが……何でだ……」
俺は急いで3人の気配を探る。しかしギガノス大陸からは3人の気配がしない。
「おいおい、3人とも死んだとか言うなよ」
《おい、榊! 桐山! 摩莉佳! 生きてるのか!》
急いで【意思疎通】に切り替えて連絡する。
《……》
「返事がない。どういうことだ。というかそれ以前の問題だ。なんだこの気配の感じは……なんかおかしくないか?」
大陸の中の気配を探る。しかし3人どころか、相当巨大な大陸だと俺の感覚には感じられる。それなのに誰の気配も感じない。ギガノス大陸の内陸までかなり進み下を見下ろす。モンスターの姿が見えた。
「いた。いや……おいおいマジかよ」
それなのにそこから気配がしない。
「ああ、やべえ……」
今までの経験上、今の状況に予測がついた。
「これって“幻影”って事か。どうなってる? 幻影が得意な蠱惑蝶ベラミスは六条が殺したんだよな? 復活もできないようにしたと言っていたし、あいつはそういう時に手を抜かない。他にそういうのが得意なのはいたか?」
「ジャック! ジャックか!?」
急に近くに気配が出現して、俺はそちらに目を向けた。そこには焦った様子の摩莉佳がいた。いつものキリッとした顔が今は憔悴している。未だに空中にいる俺に、陸上から翼を羽ばたかせて近づいてきた。
「摩莉佳か!? 良かった。大丈夫そうだな。いや、まさか、お前も幻覚じゃないよな?」
そう言って俺は摩莉佳から少し離れた。
「慎重になる気持ちはわかる。ここは完全におかしい。それに私はお前が幻覚じゃないかどうか自信がないよ」
「なんか胡散臭いな。摩莉佳は幻覚系には強いんじゃないのか?」
「まあ強いのだが、どうもこの幻覚は私の耐性の上を行ってるようだ。先ほどから幻のギガノス大陸を見てどうしていいかわからずうろついていただけだ。わかってると思うが、ジャック、これはかなり危険な状態だ。おそらく私たちはかなり“上位者”にやられている」
「ちっ」
その言葉でもう全部分かってしまう。俺と摩莉佳の今のレベルは813。それに幻覚を見せるならよほどそちら側に特化した相手か……。
「大陸を再現させるほどの幻覚を作り出せるやつがいるとしたら、この世界には一人しかいない」
摩莉佳は顔から焦りが消えないまま口にした。思い浮かぶのはこの世界で1人だけバグのように強いという存在だ。
「セラスか……」
「セラスは光属性だろう。光属性は幻覚も得意だ。六条が『セラスはしばらく動けないようにした』と言っていたが、その足止めをもう突破されたのかもしれん」
「桐山達がやばいな」
「ああ、間に合わないなんてなりたくない。なんとかできるか……」
風の精霊はまだ感じられた。それなら風の精霊に頼んで空気の屈折を変えて、この辺の光の反射をバラバラにする。セラスがやってるならそれでもうまくいくか分からないが、やるしかない。
「私も協力しよう。米崎も死んだのだ。桐山達が心配だ。あの2人が死ねば祐太も悲しむ」
そして俺は動きが止まった。
「何かあったか?」
「ああ、摩莉佳。お前よ。今なんて言った?」
「どういう意味だ?」
「俺は、お前が六条を“祐太”なんて呼ぶのは初めて聞いたぞ」
俺はすっと摩莉佳をにらんだ。手に風を溜めていく。
「……」
摩莉佳が急に黙って目を細めた。その姿が揺らいでいく。
「やはり私は嘘が苦手ですね。昔からそうでした」
そして金色の髪、金色の瞳、金色の唇。光り輝く人が現れた。
「やっぱりセラスか……俺も殺すか?」
今の俺でも勝てない。そして全開の俺でも勝てない。だが大人しく死ぬ気はない。かなりレベルは戻ってる。何らかの傷跡ぐらいは残してやる。
「はい。すみませんが、あなたにはここで死んでほしいのです」
「謝るなよ。なんか懐かしい気配だ。そうかお前クミカ……どうなってやがるんだあいつ。女に好かれるのか嫌われるのかはっきりしろよ。結構すごいのばかり揃えるから羨ましかったんだが、これはさすがにちょっと同情するぜ」
「分かったようなことを言うのですね」
「何か分かってないことがあ……」
自分の口から下が吹き飛びかけた。なんとか攻撃を直感で躱せた。今ので理解できる。マジでこいつレベル1500だ。8英傑とにらみ合った時よりも気配がでかく、そして攻撃が見えなかった。
「どうして躱したのですか? どうして気づいたのですか? どうして生きようとするんですか? 何も知らない間に死なせてあげようと思ったのに」
「できれば死ぬ瞬間ぐらい分かってたいんだよ」
桐山達をなんとか助けたかったが死ぬ。俺は絶対ここで死ぬ。面倒なことになった。別に死んでもいいが、こんな女がここにいたら仲間も全員死にかねない。そもそも何でここにいる? 行くとすれば六条のところだろう。
それが何でこんな未開の地にいる。何かここにあるのか? セラスが手を前に出すと光が壁となって襲いかかってくる。それを見つめながら、最後の自分の命を全て六条へセラスのことを知らせる手段へと注ぎ込んだ。
風の精霊よ。俺の全てをやるからなんとか六条のもとへ!!!
緑色をした風の精霊が一体、瞳も開けられないほどの光の中に紛れて飛び立った。





