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蛇の呪いをかけられたので解呪の為に全力で王位を目指します  作者: 蜜柑缶


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71 オロギラス 三匹目1

ブクマありがとうございます!

久しぶりに増えて驚きを隠せません

 月明りに照らされた街道は思っていたより明るく順調に城から遠ざかる。

 

「姫様、このままクイムカ湖を目指しますが出来るだけ私の背中だけを見ていて下さい。この国は蛇が多いですから!」

 

 エミリオが私の前を駆けながら叫んでいる。ゴドウィンが後ろを気にしながら振り返る。

 

「追ってきてる?」

 

「いえ……大丈夫そうです」

 

 そのまま一晩中走り続け明け方、朝靄のなか湖畔に静かに波が打ち寄せる広大な湖が視界いっぱいに広がった。

 

「ここなの?」

 

 誰もそれ以上口がきけないほどの疲労感と絶望感に包まれる。こんなに大きな湖だって聞いてない。

 霞んでいるとはいえ対岸は全く見えず、周辺の見通しは悪く湖畔を森が覆っている。

 

 話し合う気力もなく、とにかく一旦野営する場所を探した。身体を休めないと思考も上手く働かない。

 

 私は早速、蛇を見ないようゴドウィンの手によって目隠しされ身体を横たえた。見張りが出来ないけどそこは許してもらうとして、探索中はどうすればいいか悩みどころだ。

 一晩中、馬で駆けていたせいもあるし呪いの副作用か微熱を感じるが二人には黙って眠った。どうせ言ったところで何も出来ない、余計な心配をかけるだけだ。

 

 

 

 落ちるように眠って数時間はたっただろうか。

 目を開けたつもりだったが真っ暗で一瞬戸惑い顔に触れて目隠しされていることを思い出した。

 

「誰かいる?」

 

 木陰で横になったはずだが起き上がると手を伸ばした。

 

「私はここに居ります、ゴドウィンは周辺を探索に行っておりますがもうそろそろ帰るでしょう」

 

 エミリオがそう言うと優しく手に水が入ったカップを持たせてくれた。

 

「随分眠っちゃった?」

 

 ズッシリと頭が重く身体もダルい。

 

「いいえ、そんなには。それより先程私も周辺を見てきましたが、どうにも見通しが悪く足場も悪い。この辺りは地面が泥濘(ぬかる)んでいるところが多く移動も大変です」

 

 私は自分が寝かされていた毛布の下に手を入れると地面の感触を確かめた。

 

「確かにジメジメしてるわね。水蛇はこういう場所を好むのかしら?」

 

「恐らくそうでしょう。下調べによると湖の周辺でもこちら側でよく目撃されるということでしたから」

 

 一応探索範囲はここらを重点的にすればいいようだ。でもここに来て数時間だが近くにオロギラスがいないことは確実だ。一匹目を追っている時から感じていた奴らの気配をここでは感じない。

 

 手渡されたカップから水を飲み干すと、丁度ゴドウィンが帰ってきたことがわかった。グチャグチャと泥を踏む音がする。

 

「あぁ〜クソッ、あっちも駄目だ。深い泥濘が広がって進めなかった」

 

 ゴドウィンがゴシゴシと靴の泥を木に擦り取りながらため息をついているようだ。このままじゃ無駄に時間と体力を消耗するだけだ。

 

「ここから移動しましょう。この辺りにオロギラスはいないわ」

 

 私は二人に奴の気配が感じられ無いことを話した。

 

「ここにはいませんか?」

 

 エミリオが驚いた声を出したがゴドウィンはちょっと怒り出した。

 

「それならそうと早く言ってくれないと!もう泥だらけになった後じゃないですか!」

 

 どこかにへばりついていた泥を払ったのかべチャリと音がする。

 

「だって眠ってたんだし仕方ないじゃない」

 

 言い返すとゴドウィンが溢す。

 

「寝る前に気づけたんじゃないですか?」

 

 見えないながらも私の前に何かが近づいた気配がするとベチャッという音と共に肩ががっしりと掴まれた。

 

「うわっ!触んないでよ!泥だらけになるじゃない!」

 

「こっちはとっくに泥だらけなんですよ!」

 

 肩を掴んでいたゴドウィンの手を払うと顔に何かが飛んできた。慌てて目隠しを取り顔を確認すると髪や顔に飛び散ったのか泥がついていたらしく確かめた手についていた。

 

「ちょっと!」

 

 ムカついてゴドウィンを見ると全身泥まみれだった。驚いてエミリオを見ると彼も美しい顔に泥が張り付いている。

 

「プッ、何してるの?いい年して泥遊び?」

 

 二人共揃って探索中に泥濘にはまり必死に脱出してきたらしい。

 

「笑ってる場合ですか!先にオロギラスの気配が無いと教えてくれていたらこんな事になってないんですよ!」

 

「アッハハハ!ごめん、この辺にはいないから湖畔沿いに移動しましょう」

 

 限られた時間と魔力を使うのが勿体無いからと二人共私の泥だけをキレイにするとすぐに移動を始めた。

 

 私は馬に乗せられまた目隠しされて暗闇の中進んでいたがさっきの泥だらけの二人を思い浮かべしばらく笑いが止まらなかった。

 

 数時間移動し、少し休憩していた。

 

「まだ気配は感じませんか?」

 

 地面に座り簡易食を食べながら少しの間だけ目隠しを取り湖を眺めていた。泥濘んでいた所を過ぎると森へ入りゆっくりと坂をのぼる感じがしていたが今は小高い丘の中腹あたりだ。

 すぐ近くが崖になっており、湖は数メートル崖下にある。

 太陽に照らされた水面はキラキラと反射し中までは見通せない。辺りは静かで人の気配もなく長閑な感じだ。

 乾燥している地域の水場なのにあまり動物を見かけないのはやはりオロギラスのせいだろうか?

 

「他の魔物もいないの?」

 

 オロギラスの近くには比較的魔物も動物もいないと言っていたけどここに来るまで私は目隠しされていて状況はわからない。

 

「えぇ、水蛇の特徴なのかわかりませんがこれまでと違い蛇はいますね。元々蛇が多い地域だからなのかさっきの泥濘にも結構いたしここに来る途中でもいました」

 

 エミリオからそう聞いて私は慌てて目隠しを手に取った。

 

「しばらく大丈夫ですよ、休憩前に少し追い払っておきましたから」

 

 長時間の目隠しが辛いだろうと安全を確保してくれていたらしい。

 気遣いにホッとしまた食事を続けていると急にゾワッと首筋に何かを感じた。反射的に振り返り進行方向をじっと見つめた。

 

「近いですか?」

 

 私の動きに気づいたゴドウィンが傍まで来ると隣に座り同じ方向を見ようとしている。

 

「まだ遠い。この坂の向こうかな?」

 

 二人はさっと片付けを済ませ再び移動を開始した。私はまた目隠しをすると馬に乗せられ否応なく連れて行かれる

 坂を進むごとにゾワゾワが全身を覆ってくる。気持ち悪さに腕をさすりながら黙って耐えているとピタリと止まった。

 

「本当にいましたね」

 

 エミリオも気配を感じたらしくゆらりと魔力を高める。

 私も目隠しを取り馬から降りるとその場に馬と荷物を置き三人で静かに進む。

 

 大丈夫、落ち着け。もう三匹目じゃない、いい加減慣れてきたでしょ。

 

 自分で自分に言い聞かせるが前回と違い身体の震えが止まらない。冷や汗が背中を伝い足に力が入らず二人から段々と距離が出来る。

 

「姫様、大丈夫ですか?」

 

 ゴドウィンが振り返り私を怪訝そうに見た。

 

「だ、大丈夫よ。これで三回目なんだから」

 

 自分でも顔が引きつっているのがわかる。それを見たのかゴドウィンが慌てて前を向いた。

 

「エミリオ、ちょっと待て。一旦下がろ……」

 

「来たぞ!!」

 

 坂の向こうばかりに気を取られていたが崖の方から突然水蛇が現れた。

 

 ぬらりと光る水蛇を見ると割れそうなほど頭が痛み意識を奪われた。

 

 

 

 目を開けると飛び起きた。

 

「行ったぞエミリオ!!」

 

 ゴドウィンの怒号が聞こえ、見ると森の中でズルリと鱗で覆われたオロギラスと思われる太い胴が少し先を横切った。

 

 見た瞬間、全身が麻痺したかのように一歩も動けず水蛇からも目を離せない。

 

 エミリオの魔術なのか激しく礫が飛んでくると水蛇の胴を攻撃しそのまま動きを封じるように固めていく。

 

「今だ!」

 

 声に応じてゴドウィンが飛び上がると頭部に襲いかかり一太刀浴びせる。浅い切込みだったが上手く目に傷を負わせることができ水蛇が激しく暴れ藻掻く。

 勢いで弾き飛ばされたゴドウィンが近くに転がると目覚めている私に気がついた。

 

「もうお目覚めですか?いつも寝坊してるのに」

 

 そう言って笑った。

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