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蛇の呪いをかけられたので解呪の為に全力で王位を目指します  作者: 蜜柑缶


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58 国境にて

 少し落ち着いてきた頃、後ろからガサガサとわざとらしく音を立てながらゴドウィンがやって来た。

 

「ここにいたのですか、姫様」

 

 本当はずっと前から近くにいたくせに。

 

 サンドロがナザリオに何か目で合図している感じがして、二人して私を気遣ってくれたことがわかった。勿論ゴドウィンもだけど。

 

「だけど、どうしてナザリオはここにいたの?」

 

 廊下ですれ違ったわけでもないし、ここに何か用があるわけでも無さそうだ。

 

「ヴィヴィアン様に雇われてこの辺りを見回ってお茶会へ向けて不都合がないか確かめてた。この後も庭園の手入れを手伝ったり準備も手伝うんだ。俺は貴婦人コースの生徒じゃないから手当ももらえる」

 

 就活しながら小銭を稼ぐいい機会だったらしい。

 

「そうなんだ、逢い引きを覗こうとしてるのかと思った」

 

「いくらモテなくてもそこまで落ちてないぞ」

 

 顔をしかめるナザリオがおかしくて皆で笑った。

 

「モテたかったらゴドウィンにコツを聞けば?」

 

 庭園を皆でぞろぞろと歩き中庭へ向かいながら話す。

 

「俺は見た目が普通なのにカッコいい人に聞いても駄目だろう」

 

 褒められて気分を良くしてるんだろうと後ろを歩くゴドウィンを振り返ると何でもないという顔でいる。

 

「気のない大勢にモテても仕方ないだろう」

 

 おおっと、モテ男の発言。

 

「ゴドウィン様は独身ですけど今まで結婚したかった女性はいなかったのですか?」

 

 ナザリオが何気なさを装って結構深い質問をした。私はちょっとビックリしたが返事を聞きたくてじっと彼を見た。

 

「まぁ、いましたけど……」

 

 いたんだ!?

 

「誰?私が知ってる人?」

 

 こんな遊んでる人の本気の人ってどんな人か興味ある。

 

「言うわけ無いでしょう。それとも命令しますか?王女殿下」

 

 そんな言い方されちゃ聞けないよ。

 

「しないわよ」

 

 そういうことを無理矢理聞くのは失礼だ。

 

「えぇ!聞けよ、リアーナ」

 

 失礼なナザリオがガッカリしている。失礼な上に馬鹿な奴。

 

 サンドロに後ろから蹴りを入れられ痛がるナザリオの事を皆で笑って中庭から廊下へ出ると少し離れた所にアーネストが独り立っていた。

 驚いて立ち止まると彼は笑っていた私を見て少しホッとしたように息をつき黙って立ち去った。

 

「私が止めました。今行くのは良くないだろうと」

 

 ゴドウィンは何があったか聞かないがアーネストと何かあったことはわかっていたのだろう。結局泣いてしまったのも騎士コースを辞めたせいか、アーネストのせいか自分でもよくわからなかったし……いや、騎士コースを辞めたせいだな。アーネストの事は関係ない。

 

 

 

 屋敷に戻りローラに着替えさせてもらっていた。

 

「そう言えばアーネスト様がイーデンバッシュ国へ行くそうです」

 

「長期休暇を取ったと聞いたからどこかへ行くのかと思っていたけどよりによってイーデンバッシュか」

 

 これからどうにか向かわなくてはいけない国へアーネストが向かうと聞いて少し不安が過ぎる。

 あの国へはバルバロディア領を通過しベルトナ国を通って行かなければいけないからそこからの情報か。

 

「アーネスト様が行くなら姫様もついていけないですかね?」

 

 ローラがお茶を淹れながら考えている。オロギラスを倒す為に行かなければいけないがどうにも手立てが浮かばない中のアーネスト情報だ。有効に使いたいがどうすればいいのかわからない。

 

 ゴドウィンとエミリオも交えて四人で話し合う。勿論サンドロはドアの外だ。

 

「この際アーネスト様におねだりすれば良いのでは?今日の事もありますから聞き入れてくれるんじゃないですか?」

 

「今日の事ってなんですか?」

 

 ゴドウィンがしれっとバラすとローラが食いついてきた。エミリオには先に話してあったのか涼しい顔で聞いている。もちろん部屋の中の事は誰にも知られてないのだから余計なことは言わないほうがいいだろう。

 

「別に何もない。騎士コースを辞めてちょっと、動揺しただけ」

 

 絶対にそれだけじゃないですよねって顔のローラから視線をそらしティーカップを口へ運ぶ。

 

「一応ベルトナ国へ行く手筈は整いました。ガルム商会の支店を出す計画を立てているという理由です」

 

 ガルムの店は繁盛しているが、バルバロディア領と王都以外ではまだ輸出でしか他国へは出荷していない。ベルトナ国へ店を出すなら初国外出店になるため後ろ盾の介入もあり得るだろうという理由だ。

 

「問題はそこからどうやってイーデンバッシュ国へ入国するかですね」

 

 最悪は密入国か山越えだがどちらも危険が伴うから、出来れば穏便に入国したい。

 

 

 数日中に出発する準備を整え、許可が出るとすぐにバルバロディアへ向かった。

 環状囲壁にある塔からバルバロディア領へ向かい、そこから少し移動して今度はベルトナ国との国境近くの街へ繋がっている転移装置がある場所へ向う。バルバロディアの城の中に転移装置が設置できないのは王都とのそれと同様、いざというときに一気に攻め込まれない為だ。

 

 今回はローラも連れて行くため馬車を用意し国境へ向う予定だ。転移装置は貴族しか使えないためガルムには先行してもらっている。いくら早くついてもガルム到着までは待たなければいけないのでそれほど急ぐ旅ではない。

 

 バルバロディアの城で一泊し、伯父のフィンレーと伯母のイブリンにこれまでの説明をし、これからの状況も話す。

 

「アーネスト様は本当にこちらに引き込めないのかしら?」

 

 イブリンが私のイヤリングを引っ張りながら不満気な顔をする。

 

「まぁ、強く言ったことはありませんが、これまでの言動を考えると無理でしょうね」

 

 私がそう言うとフィンレーがふむと考えた。

 

「何か事情があるようだね」

 

 優しいフィンレーはそう言うが事情も何もお互い領地の利益や自分の利益の為に動いているのだから仕方ないだろうと思うけど。

 

「どちらにもいい顔をするのは良くないわ、気持ちを疑っちゃう」

 

 呆れたようにイヤリングから手を離しイブリンは私を抱きしめた。

 

「私の可愛い姪を泣かせた罰は受けてもらうわ」

 

 誰だ、泣いたことを話したのは?

 

 私が振り返るとローラがにっこり笑った。

 

 チッ!

 

 

 

 次の日、朝から転移装置がある場所ヘ移動し直ぐに国境へ着いた。昼頃にはガルムが到着するはずだから、それまで国境の街で待機だ。

 国境で手続きをする間に待機場所であるの貴族専用の建物に入り、その中でも王族用の部屋へ向かおうと廊下を進んでいた。すると手続き待ちなのか急に貴族用の部屋のドアが開き中から一人の侍従が出てくると私に気づき慌てて礼を取った。

 

「リアーナ殿下、申し訳ございません」

 

 慌てて廊下の端へ下がっていき道を開けた。一緒にいたローラが私を振り返り、護衛のゴドウィンがサッと間に入ったが勿論こんなことで気にしたりしない。大丈夫だと頷くと何事もなかったように歩き始めたが後ろから呼び止められた。

 

「リアーナ、殿下」

 

 まさかここで会うなんて。

 

 一瞬聞こえないふりして進もうかと思ったがローラに袖を引っ張られた。

 

「……アーネスト様」

 

 振り返るとさっきの侍従を連れて近寄ってくる。

 

「先程は失礼致しました」

 

 一応王族なので謝罪を受けた。

 

「いえ、大丈夫です。では……」

 

「手続き終了まで時間がおありでしょう。ご一緒にお茶でもいかがですか?」

 

 断っちゃ駄目なやつ?

 

 ローラを見ると頷かれた。

 

 駄目なやつか。

 

「わかりました。私はガルムを待っているところなのでそれまでご一緒します」

 

 王族用の待ち合いまで行くと向かい合わせに座りお茶を頂く。傍にいるのはローラだけで護衛達は室内だが離れた場所にいる。ローラもお茶を注ぐと静かに下がっていった。

 

 気まずい……

 

 

 

 

 

 

 

 

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