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蛇の呪いをかけられたので解呪の為に全力で王位を目指します  作者: 蜜柑缶


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47 夜会のエスコート4

 近い距離で向かいあい、しかも両手をガッチリ掴まれている私を見下ろしているアーネストがジロリとドアの方を見た。

 意地悪な貴婦人は私とアーネストを確認して口をパクパクとさせている。

 

「ノックぐらいすべきではないですか?ここは王女リアーナ殿下の休憩室ですよ」

 

 アーネストはゆっくりと手を離し身体を起こすと私を庇うようにドアへ向かって歩いていく。部屋の入り口付近には数人の女性が中を覗き込み驚いた顔をしている。

 

「ア、アーネスト様!貴方がいらっしゃるとは思いませんでしたわ。こ、ここはリアーナ殿下の休憩室だと聞いて……」

 

「ご存知なのにこのような行動をなさっているということですか」

 

 こちらからは彼の後ろ姿しか見えないがきっと血も凍りそうな怖い顔をしているに違いない。だってみんな震え上がっている。

 

「い、い、い、いぃぃえぇぇとんでもない!存じませんでしたわ、ただの休憩室だと思って開けてしまったのです!大変失礼致しました」

 

 貴婦人達はドレスで動ける限界の速さで立ち去ったようだ。アーネストはそれを見送り閉じようとドアに手をかけたときゴドウィンとローラがやって来た。

 

「失礼いたしますよ」

 

 アーネストの横をすり抜けローラが私の傍へ寄ると顔色を確かめたり頬や額に触れ一瞬ピタリと動きを止めた。

 

「姫様はご気分が悪くてここにいらしたことはご存知でしたのよね」

 

 入り口でゴドウィンと並んでいるアーネストを振り返るローラの様子がへんだ。

 

 怒ってる?

 

「そう聞いたから来たのだ」

 

 アーネストは無表情に顔を取り繕い答えた。ゴドウィンが何か面白そうに私と彼を交互に見るとニヤリとする。

 

「君はもう帰ったほうがいい、疲れているようだし、痩せすぎだ」

 

 そう言って胸ポケットにデンファレの花をさし出ていく彼をゴドウィンが見送りながら声をかける。

 

「口拭いといて下さい、また噂がたちますよ」

 

 それを聞いて私は反射的に手で口を覆った。

 

「大丈夫ですよ、口紅がはみ出ておりますがすぐに化粧をお直しいたしますから」

 

 黒い笑顔のローラが私の髪を直しながら続けた。

 

「飾りの花をひとつ持っていかれましたわ、仕方のない人ですね」

 

 アーネストはいつの間にか私の髪に飾られていたデンファレの花をいち輪取っていった。

 

 花を胸にさすなんて何を考えているんだろう……

 

 私の化粧を直している間、ゴドウィンが閉じたドアにもたれかかりながら面白そうに話す。

 

「どうやら誰かが何か仕組んでいたようですね、ローラは急に呼び出されたと言ってますから」

 

 私は驚いて化粧を直してくれているローラを見た。

 

「そうなんです、姫様が会場でお倒れになったとお聞きして急いで向かったのですがどこにもいらっしゃらなくて。そしたらヴィヴィアン様が私を見つけて下さって姫様は休憩室へ行かれたと教えてくださって」

 

 ゴドウィンが後を続ける。

 

「アーネスト様にお任せしてローラを探しに行こうとしたらさっきの御婦人達の話し声して隠れて聞いていたら、どうやら姫様と私が二人だけで部屋にいる所を目撃したと言い触らすために画策していたようです」

 

「あの人達全員が?」

 

「いえ、先頭のお一人だけが分かっていたようです。あの方はエベリーナ様と同じイーデンバッシュ国出身でこちらに嫁いで来た方です。それにこの部屋はコーネリアス様が用意した部屋ですから彼も既にイスラ殿下支持を決めているのかもしれませんね」

 

 なるほど、そういうことか。だけど今日の主催のコーネリアスはイスラ側でも招待客全員がそうでは無い。だったら来たかいはあっただろう。

 

「もう少し顔を売っておいた方が良いかしら?」

 

 私がいなくなった後から来た人もいるだろう。

 

「今夜はもう引き上げましょう。ましになったとはいえ顔色は良くないですから、不調だと思われては印象が悪い」

 

「でも流石にコーネリアス様にはご挨拶をしなければいけないでしょうね」

 

 会場になかなか顔を見せなかった主催者コーネリアスとはまだ会っていない。

 

 

 ローラに化粧で顔色をごまかしてもらうと再びゴドウィンのエスコートで会場へ戻った。

 

「あっ、お姉さま……」

 

 私に気づいたヴィヴィアンが近寄ると小声で囁やく。

 

「もう大丈夫ですか?」

 

「えぇ、でもボロが出る前に引き上げるわ。コーネリアス様はどこかしら?」

 

 ヴィヴィアンが視線を向けた先にデップリとした腹肉を大切そうに撫でながら目の前にいるエベリーナをねっとりとした目で見ている小男がいた。

 

「アレなの?」

 

「お姉さまを近づけたくないですけどうちの大事なお得意先でもあります」

 

 ヴィヴィアンが可愛い顔を歪ませなんとも言えない顔をする。

 ベルトナ国のヴィヴィアンの父親は領地にある鉱山から出た宝石を多数の国や領地へ販売していて顔が広い。エルデバレン国でも有数の資産家のコーネリアスなら得意先になるのも当然だ。

 

「コーネリアス様、お久しぶりですね」

 

 ヴィヴィアンはキッチリと顔を社交用に作り上げると私を奴の前に連れて行ってくれた。

 

「あぁ、これはヴィヴィアン様。随分お美しくなられましたね」

 

 エベリーナに向けられていたねっとりした視線をヴィヴィアンに向けられたのを見るとちょっとゾワッとする。エベリーナだって奴から解放されてホッとしているように見えるのは気のせいじゃないはず。

 

「こちらはいま親しくさせて頂いているリアーナ王女殿下です」

 

 ヴィヴィアンは私を紹介しつつもできるだけ奴から距離を取れるようにうまく間に入ってくれる。本当に感謝しかない。

 私はゾワゾワを気づかれないように王女らしい笑顔で挨拶をする。

 

「今回はご招待頂きましてありがとうございます、コーネリアス様」

 

 彼は私を下から上へじっくりと視線を向け最後に顔をジッと見つめると一層気持ちの悪い顔でねっちょりとした笑顔(?)を見せた。

 

「これはこれはリアーナ王女殿下。お初にお目にかかります、コーネリアスでございます。本日はご招待に応じて頂きましてありがとうございます」

 

「コーネリアス様はガルム商会の品をいつも利用していると聞いています」

 

 ガルムの店は王都でも一流の店と評判も上々、その為ここの常連ということはある種のステイタスにもなっている。

 

「もちろんでございます。あそこの()は間違いないですからな」

 

 そう言って目を細める様子に品の中に私が含まれている気がして頬が引きつりそうになる。

 

 一応褒められているのかな?

 

「これからも良い取引が出来ればいいですわね」

 

 私達がガルムの後ろ盾なのは皆が承知の事だ。

 

「世の中は移り変わりが早いですからね、お互いに長いお付き合いが続くようお祈りいたしましょう」

 

 ねっちょりコーネリアスはどちらに転んでも良いような位置を探っている感じだ。

 

「あら、リアーナ殿下、先程は随分お疲れのようでしたのにもう大丈夫ですの?」

 

 コーネリアスから解放されて一瞬ホッとしたエベリーナがまたアーネストを連れてこちらへやって来た。コーネリアスのキモさより私に牽制したい気持ちが勝ったようだ。

 

「えぇ、ご心配頂きましてありがとうございます」

 

 エベリーナは私の近くまで来ると周りに聞こえない小声風に、しかしハッキリと聞き取れるように話し始める。

 

「お気をつけください。リアーナ殿下が休憩室で護衛の方と二人きりで過ごされていたと誰かが噂しておりましたわ。きっと先程殿下が休憩室で休んでおられる間に侍女の方が会場にいらしたせいですわ」

 

 どうやらエベリーナに事の顛末は届いてないらしい。ふと視線を向けると会場の隅で顔色を悪くしている先程の意地悪な貴婦人があわあわとしている。エベリーナに失敗を伝えそこねたのだろう。

 

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