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蛇の呪いをかけられたので解呪の為に全力で王位を目指します  作者: 蜜柑缶


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45 夜会のエスコート2

本日二話目です

 ざわざわとした人の波が会場の中を伝わっていく。

 

「まぁ!フルール姉様は見る目がありませんわね」

 

 マクシーネはあからさまにムッとすると連れていた婚約者を強引に引っ張りながら私達から離れていった。

 

「今のところマクシーネ様が一番奮ってないからねぇ」

 

 フルールが面白そうに背中を見送っている。

 

「姉様はどうして私を?」

 

 頼んでもないし何かフルールにとって得があるとは思えない。こそっと聞いてみた。

 

「勿論バルバロディアの資金を研究費として私に提供して欲しいからよ、絶対損はさせない。だけどその為には凄腕魔術師ポントゥスを紹介してよ。彼はバルバロディア領地のどこかにいるんでしょ?」

 

 いまポントゥスにはあの件のせいで領地から出る許可は与えられていない。

 

「資金のことは母上に言って下さい。彼に会いたいなんて流石姉様ですね。一応声はかけておきますがどこにいるか探すのに時間がかかりますよ」

 

「いつまでも待つけどできるだけ早くお願い」

 

 嬉しそうに笑う顔がちょっと怖い。だけど同じ王族からの支持は大変有り難い。フルールの後ろ盾は中領地マジェリナだが恐らく領地をあげての支持は望めない。姉さまは元々そういう事に関心がなく関わっていなかっただろうから期待出来るのは個人的に姉さまに付いている者達だけだろうが王族は王族だ。所詮フルールの行動は全て魔術研究の為だ。

 

 もう用は済んだとばかりに手を振りながら食事が用意されてあるスペースへ一直線に向かう姿はどう見ても王女らしくはない。

 

「資金が必要だなんて、姉様は儲かってないのかしら?」

 

 フルールは色々な魔術具を作り出している。エミリオが私を捕縛する時によく使うビリってやつもそうだ。そう考えるとちょっと姉様にムッとしてしまう。アレって相当痛い。

 

「まぁ、作っている魔術具が独特ですからね。捕縛用のやつなんかは結構魔力が必要だし騎士団ぐらいしか使いませんから」

 

 私の頭に浮かんだ事を読み取ったかのようにゴドウィンが話す。

 

「騎士団へは定期的に納入されていますが作る作業にも魔力が沢山必要だから採算が合わないのかもしれませんね」

 

 そもそもの原価計算が甘かったのか。だったらそこの所も協力して取り込むのも有りだな。まぁ母上ならそうするだろう。

 

 すれ違う人達に笑顔で接しながら会場の真ん中辺りまでやって来た。色々な人達が私とゴドウィンの事を見比べ噂の真相を聞き出そうとしてくる。それを利用しながら私が王に相応しい人間だとアピールしなければここに来た意味がない。

 和やかに話す中サクッと痛いところを突いてくる声に顔を向けた。

 

「リアーナ殿下は最近お怪我をされたと伺いましたが、その際護衛は連れていらっしゃらなかったのですか?」

 

 意地悪そうな貴婦人が私の失態と護衛のゴドウィンの失態を同時に晒そうとしてくる。ゴドウィンが長年、私の護衛なのは誰でも知っている為、先日私が怪我した時に助けられなかった彼を責め私の油断と判断力不足をつきたいのだろう。

 

「えぇ、あの時は大変でした。街道付近の森に魔物があらわれた所に居合わせまして。冒険者たちが討伐しようと挑んでいたのですが力及ばず全滅しかけていたのです。私はゴドウィンとエミリオに命じて魔物を引き付けてもらいそのスキに冒険者たちを救出しようとしていたのですがその時に魔物が炎を吐きまして」

 

 話を聞こうと周りに集まっていた人達から悲鳴が上がった。

 

「まぁ!なんて危険な!」

「そんなところに殿下をお連れしていたなんて!!」

 

 ザワつく人達を抑えるように私はゴドウィンを見上げてニコリと笑った。

 

「彼は私の望みを叶えてくれただけですわ。視察へ行きたいと言ったのも、冒険者たちを助けたいと言ったのも私ですから」

 

 ゴドウィンが私を見下ろしニヤリと笑う。どうオチをつけるんだって顔だ。

 

「ですけど危険な行動ならばお諌めして思いとどまらせるのが護衛の努めではありませんか?」

 

 可愛らしい声が聞こえ振り返るとそこに見覚えのある美しい女性がわざとらしく困ったような顔をして私達の前に出てきた。

 

「これは……エベリーナ様」

 

 意地悪な貴婦人がその女性の名を呼んだ。ヴィヴィアンの出身地であるベルトナ国の東側にあるイーデンバッシュ国の大領地の娘であるエベリーナ。

 

「まぁ、私としたことが失礼いたしました。驚きのあまり急に口を挟んでしまい申し訳ありませんでした、リアーナ殿下」

 

 エベリーナはそう言って彼女をエスコートしている隣の銀髪の男に目をやった。

 

「リアーナ殿下、もう御身体は大丈夫なのですか?」

 

 エベリーナの視線に気づいているだろうが私を見つめるアーネストは感情を消した表情をしている。

 婚約者である私ではなく他国の娘をエスコートしている彼を人々が興味深く見ている。

 金色に輝く髪を美しく結い上げ、大きな瞳を潤ませ、ぽってりとした唇を困ったようにすぼめる。淡いピンク色のふんわりしたドレスに身を包んだエベリーナは私が見てしまったアーネストの密会相手だ。

 密会相手と言っても政略結婚が決まっているからそう言われてしまうだけあって、要するに恋人ということだ。

 

「ご心配ありがとうございます。完全に戻った訳ではありませんが大丈夫です」

 

 私は無意識にゴドウィンの腕に掴まっている手に力を込めたようだ。ゴドウィンはそれに気づいたのかそっと手を添えてくれる。

 

「ですけど回復まで長くかかったのですからやはり危険過ぎたのではないですか?」

 

 エベリーナはアーネストを見せつけに近寄って来たのだろうけど、その上私を貶めようと話を続けた。何故だか胸が締め付けられるような息苦しさを感じグッと歯を食いしばり息を吸い込んだ。

 

「危険でも避けては通れませんわ。冒険者たちがまさに殺されようとしているところを見捨てる事は出来ませんから。彼らは大事なカリミナリの領民ですしエルデバレン国民です。彼らを護るのは王女としての義務ですから」

 

 カリミナリ領には話はつけてある。今回話した事をまことしやかに領地にも流してもらっているため、じわじわと王都へも噂は流れてきているだろう。どんな事情があろうと自領で王女が瀕死の重傷を負ったのだから悪く噂が広まるよりいい話にしておくほうが良いだろう。

 

「それはそうですが、王族の方自ら現場へ行かれてはちょっと。それに殿下は女性でございます、それなのに……」

 

「まぁ!流石リアーナ殿下!国民を思いやる優しいお心遣いに自国の貴族の方もさぞ自慢出来る素晴らしい王になられますわね」

 

 まだ何か言いたげだったエベリーナをぶった切って入ってきたのは今日も可愛い仕草を爆裂させているヴィヴィアンだった。

 

 彼女は「感動いたしますわねぇ」という言葉と共に後ろに控えている沢山のお嬢様方に同意を求めて振り返った。

 

「本当に素晴らしいですわ、リアーナ殿下」

「私も殿下助けられたいです!」

「そのドレスはどこでお仕立てになられたのですか?」

 

 キャーキャーと騒ぐその娘達はあの(・・)お茶会で見た顔ぶれだ。

 

「そう言ってもらえると頑張ったかいがあります。これからも国の為に専心しますわ」

 

 ヴィヴィアンの登場にホッとしたのは初めてかもしれない。おかげで助かったがエベリーナは少し苛ついた感じでヴィヴィアンを見ている。

 

「あらヴィヴィアン様、今夜はお一人ですか?お相手がいらっしゃらないなら探して差し上げましょうか?」

 

 夜会にエスコート無しに来ている事をあげつらうように優しく微笑む。

 

「大丈夫ですわ、わたくし今夜はリアーナ殿下を全力でお支えするためにここに来ましたの。借り物のエスコートなんて恥ずかしくて連れている場合ではありませんのよ」

 

 まだ私の婚約者であるアーネストにエスコートさせているエベリーナに対してこれは物凄い嫌味ではないだろうか。

 

「そんなこと……」

 

 エベリーナは傷ついたような顔をして掴まっているアーネストの腕に顔を寄せ俯いた。彼はそれを気遣うように庇うとそのまま私をチラリと見て立ち去った。

 私は二人の後ろ姿を複雑な思いで見ていた。これまでは隠し続けていた恋人の存在をこうして公の場に連れているということは破婚を想定しての事だろう。母上には破婚しないといっていたが事情がかわったのかもしれない。エベリーナは他国とはいえ大領地の娘だ。そこならアーネストの条件に合うのではないだろうか。いよいよアーネストとの別れが現実味を帯びてきた。

 

「お姉さま、少しお休みしませんか?顔色が優れませんわ。後はお任せ下さい」

 

 もともと体力は戻りきっていなかったところに、気を張って会場をうろついていたため疲れてしまったようだ。

 

「そうね、少しローラの所へ行くわ」

 

 会場内では何とか取り繕っていたが廊下へ出ると貧血でも起こしたのかゴドウィンにもたれかかった。

 

「姫様、ちょっと無理しすぎです」

 

 そう言うとサッと横抱きにされ部屋へ連れて行かれる。恥ずかしさはあったが幸い人目はない。このまま連れて行ってもらうほうが良いだろう。

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