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蛇の呪いをかけられたので解呪の為に全力で王位を目指します  作者: 蜜柑缶


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評価ありがとうございます!

ちょっと挫けそうだったのでとても励みになります。

 一人の生徒が勢いよく立ち上がりテーブルがガチャリとなった。

 

「いい加減にしてくださいませんか!リアーナ殿下がお困りになってらっしゃるのが分からないのですか?」

 

 それは仕込みの女生徒でさっきからのヴィヴィアンの言動に心底腹を立てているようだ。

 ヴィヴィアンはチラリとそちらを見ると私へ向けていた可愛らしい顔ではなくキッと鋭い眼差しをすると声質も変えキッパリとした説得力を持って言い返し始めた。

 

「何を仰いますか、ここはお茶会という場です。私は本来のお茶会というのは貴族間の流行や政治的な情報を交換し、それぞれが自身の立場、継ぐべき家督、果ては国の行く末を鑑み国内のみならず隣国や遠国にまでその意識を向け遠い先に何が起きるかまで見越し、手にした情報や繋がりを有効利用しそれぞれの思う幸福を追求する手段を得るための場だと思っております」

 

 ヴィヴィアンはまるで別人にでもなったかのように発言した女生徒を見つめ滔々と話す。

 見つめられた女生徒はその雰囲気に飲まれ何も言い返さず黙っていた。

 

「ですから今回の補習という絶好の機会を私は私の国にために必ず思いを成し遂げる為に今日ここへ来たのです。

 あなたは私が殿下を困らせているとおっしゃいましたが、交渉というものは時に他方へ負荷が重くのしかかる時がございます。今回は明らかに殿下へ負担が大きく作用しているように思われるかもしれませんが広い意味で捉えていただくと殿下への忠誠を見せるいい機会であると共に殿下のお役に立てる絶好のチャンスなのです」

 

 絶好のチャンスってなんだろう……

 

 あたかも恋人への強い思いを告白するかのように見つめ合う二人を皆が見守っていた。

 

「何故なら今回私が申し上げた事を殿下が承諾された暁には殿下が望む王位継承に一歩近づけるからです」

 

 え?どこからそんな話に繫がっていったの?

 

「……やはりそれが狙いでしたか」

 

 フランソワーズ先生が軽く息を吐くと何かをボードに書き込んでいた。今の話で成績をつけることができるんだろうか。

 

「私には全く意味がわかりません。誰か説明して頂けますか?」

 

 誰がこの話についてきているんだよ。

 

「殿下、ここは私が説明致しましょう」

 

 フランソワーズ先生が手にしたボードを下ろすと静かに口を開いた。

 

「今回のヴィヴィアンさまのやり方はいかにも我儘なお嬢様の身勝手な行動と取られがちですがその実、斬新な方法を持って今世間の注目の的である王位継承問題に鋭い一撃をもたらすものです」

 

 フランソワーズ先生はここでひと息つくとサロンの中にいる皆をザッと見渡した。

 

「ここにいらっしゃるリアーナ殿下は今、下世話な噂によれば大変不利な状況であること言われていることは皆様ご存知でしょう。

 一番王位に近いと目されているのはイスラ殿下です。ですがここに来てヴィヴィアン様はリアーナ殿下推しだと表明されると仰る」

 

 ヴィヴィアンはコクリと頷いた。推しって……

 

「ヴィヴィアン様は隣国ベルトナの貴族、一見国内の王位継承には口を出すことは許されない立場でありますがその意見は王族方や国を支える各閣僚らが耳を傾けています。何故ならベルトナ国はこのエルデバレン国にとって重要な位置にあるからです」

 

 なっ……なんてことだ。確かにベルトナ国はこの国に食い込む形に位置し戦略的に重要な国で、しかもそこは貿易を行う上でも要の国だ。

 ベルトナは南北に険しい山脈を持つ特殊な地形の国で、ベルトナの東西に位置する国々がそこを通らねばかなり大回りをして山の向こうへ行かなければいけない。そしてエルデバレン国内で接している領地はバルバロディアなのだ。

 

「あの……先生。言いにくいのですがそれで一体何を仰りたいのですか?」

 

 どうにもヴィヴィアンとフランソワーズ先生の話の熱量が皆には伝わっていない。

 フランソワーズ先生は一瞬目を閉じ気持ちを落ち着けると、少し呆れたように息を吐いた。

 

「まだわからないのですか?リアーナ殿下を『お姉さま』と親しげに呼ぶことによって他の王族へ、親密さをアピール出来るのです。つまり自分はリアーナ殿下を王位に望んでいると」

 

 何かに弾かれたようにサロン内に衝撃が走り女生徒達が息を飲んだ。

 

「皆様これでおわかりですか、私がリアーナ殿下を『お姉さま』とお慕いしたいのは自分の欲望のためではなく、言わば国策に積極的に参加できない未成年の私達にできる唯一の主張方法なのです」

 

 力強くこぶしを握りキッパリと言い切ったヴィヴィアンがまるで正当な理由がであるかのように話を無理くり乗っけて来てるけど、つい口を滑らせた通りホントは自分の欲望に忠実に動いて後付で理由を作り上げたように聞こえたのは私だけのようで……

 

「素晴らしいですわヴィヴィアンさま!」

「私もあなたのやり方を見習いますわ」

 

 女生徒達の後押しを受けヴィヴィアンが私に視線を向けた。

 

「でもそのためにはリアーナ殿下に許可を頂かなければ……『お姉さま』とはお呼びできませんわ」

 

 皆が私に注目し答えを待っている。

 

 あぁもうこれって決定事項よね。

 

「はぁ……わかりました。ヴィヴィアンさまお一人だけと言われれば駄目ですが多数の方であればある意味偏りはありませんね。そう呼びたいのなら構いません。私は別に殿下と呼ばれる事に意味を見出していないので」

 

「よしっ!!」

 

 ヴィヴィアンは(はし)たなくも力強くごぶしを高く突き上げた。それを見たフランソワーズがボードを持ち直すと何やら書き込んだ。きっと減点されてるだろう。

 

 その後お茶会の補習をなんとか続けた気がするが殆ど記憶には残っていない。全ての補習が終わりフランソワーズ先生が何やら締めの挨拶をすませるとサロンの扉が静かに開かれた。

 

 扉の前にはまるで課題を取りこぼし再び講義を受け直したかのような疲れを纏った女生徒達が力無く立っていた。私がサロンから一歩踏み出すと無言で道が開かれそこへさっとエミリオがやって来た。

 

「姫様、お疲れ様でした」

 

 隣の護衛用の控室にもサロン内のやり取りは聞こえていただろう。廊下にいた女生徒たちにも聞こえていたはずだが誰も口を開こうとせず俯いたままだ。そこへ空気を読まないふりのヴィヴィアンが満面の笑みで出てくると可愛く小首を傾げ私に呼びかけた。

 

「お姉さま♡」

 

 その呼びかけが聞こえたのか女生徒達が一斉に顔をあげた。

 

「お約束通り明日のお茶会へはいらして下さいますよね?私ぃ、嬉しくて今夜は眠れないかもしれません」

 

 ポッと頬を赤らめもじもじとする少女はきっと男性達が見たら自分に好意を寄せていると勘違いするほど可愛らしい。

 

「えぇ……お約束は守ります。それからその呼び方は学院内限定でお願いします。では明日、私も楽しみにしております」

 

 棒読みならないように気をつけながら返事をし、一応笑顔を作るとその場を足早に去った。

 直ぐの廊下を曲がった瞬間に後方で何やら騒ぎが起きていたがもう聞こえないふりだ。

 

「お願いです!私もヴィヴィアンさまのお茶会に参加させて下さい!!」

「私も殿下をお姉さまとお呼びしたい!!」

 

 という声は全く聞こえたりしない!

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