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蛇の呪いをかけられたので解呪の為に全力で王位を目指します  作者: 蜜柑缶


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2 始まり

 事の始まりは今から十日ほど前。

 

 このエルデバレン王国、国王が跡継ぎを決めることなく崩御された。

 

 王は周辺国同様、幾人もの妃を娶り幾人もの子を作り幾人もの跡継ぎを作り出していた。

 

 ザッと数えても妃で十人、側室で確か五人ほど、とはいえ一応の王位継承の順番は何となく決まっていた。

 妃もそこそこの出の者が多く、身の程知らずは数人程度。大体のものはそれなりの地位や金で解決がついていた。

 

 それぞれの妃に子は一人ずつ産まれ十人だけが本来の跡継ぎらしい跡継ぎで、上手い具合に男女五人ずつ。

 

 長子は男で優秀だった為皆がそれに決まりだなと思っていた所、成人して数年後、視察先で落馬して急死。

 

 二番目は王女であったが向いてないと辞退した。それをきっかけに次は誰だと話していた矢先の王の急逝だ。

 

 上から順番であろうと思っていたはずが我も我もと騒ぎ出し五番目が三番目を口論の末刺殺した。

 その瞬間四番目に順番が回ってきた感じだがこれが出来が悪く賢明な身内の者の反対が殺到し無理やり辞退させられた。

 

 残る……六番から十番までで決めることになったが大体この辺の者はまさか自分に順番が回ってくるなんて思わず暮らしている。

 

 かくいう私もそうだ。九番目の私に誰がこんな重荷でしかない王位なんて継がせる気がするんだと思っていたら妃である母上が手をあげてしまった。

 

「貴方の子は山を駆けずり回ってばかりの猿のようではないですか」

 

 八番目の王妃のこの一言にカチンときたらしい。

 

 いい迷惑だよ。

 

 八番目の王妃に言われた通り私は小さい頃から山を駆け回ったり、騎士達と剣の訓練をしたりするほうが性にあっていた。

 他の兄弟達とはあまり交流もなく、死んだ一番目の兄サムエウはまだ仲が良かったほうだ。時々剣の稽古もつけてくれる優しくて強い兄だった。そのサムエウが落馬で死ぬだなんて誰が信じる。

 きっと誰かが仕組んだに違いない。ここ数年、戦争もなく平和なエルデバレン王国だがやはり王位にはそれなりに旨味がある。

 サムエウには悪いが王位に興味がないうえに下手に関わるとこちらの身も危ないから犯人探しは出来ないし、したくない。

 

 

 

 ある夜、自室のベッドで眠っていた私は体に異変を感じた。

 首を締め付けられるような感覚に襲われ目を開くと黒いマントに身を包み血のように真っ赤な唇をした女が私を見下ろしていた。

 

「面倒だけど同じ手は使えないからねぇ」

 

 面妖なその女はそう言って次々と種のような粒を私に向かって投げつけている。それは体に触れると黒々とした煙のようなものが立ち上り蛇のようになると私の体に巻き付き締め上げてくる。

 

 サムエウのように殺されて……ここで死ぬのか……

 

 声を上げることも出来ず遠のきそうな意識の中でそう思っていると女は真っ赤な唇を開いた。

 

「あぁ、わかると思うが助かりたければ王位を継がないと宣言しろ。ここに書類は用意してある。血判があればいいだけにしてある。さぁ、手を出せ」

 

 ピラっと見せられたそれは魔術で作られたインクで書かれた契約書で、一旦血判を押してしまえば後で無理やりだったといくら言ったところで無効にはならない。

 

 押す押す、今すぐに押す!!

 

 心の中で叫んだがコイツには読心術は無いらしい。意識が薄れゆく私の目の前にピラピラと振るだけで話をさせる為にこの縛りを解くつもりはないらしい。

 

 コイツ馬鹿か!!押すから早くこれを緩めろ!死んでしまうじゃないか!!

 

 必死に目で訴えると女はニヤリと笑った。

 

「そうかい。そんなに嫌なのかい」

 

 違う違う違う違う!!押させろーー!!

 

 勘違い女は妖艶に髪をかきあげると私に見せていた書類を持った手をダラリとさせる。

 

「仕方ないねぇ、この先を存分に楽しむがいい。死んだほうがマシだと叫んでももう遅いぞ」

 

 そう言って更に締めあげられ私は意識が無くなった。

 

 

 

 

「キャーー!!」

 

 侍女の悲鳴で目が覚めた。

 

 生きてる!?

 

 ガバっと起き上がり締められていた首を確かめる。ヒリヒリと痛む傷が夢ではなかった事を知らせてくる。きっとこの傷を見て死んだと思って悲鳴をあげたのだろう。腰を抜かしてベッドの横で座り込み飛び出さんばかりに開いた目で私を見ている侍女のローラを見た。

 

「ローラ、大丈夫よ、私は生きてる!」

 

「はっ!?その声は……」

 

 少し低くザラッとした感じの自分の声に一瞬驚く。首を締められたせいでこうなったのか。

 

「まるで風邪をひいた時のようなかすれた声……」

 

「くぅ〜、昨日の夜酷い目にあったわ、早くエミリオとゴドウィンを呼んで。誰がやったか知らないけど探し出してやる!!あの女……絶対に許さない」

 

 その時ローラの悲鳴を聞きつけた部屋の外にいる護衛騎士が寝室のドアを開け入ってきた。

 

「大丈夫ですか?今の悲鳴はなんです!?」

 

 騎士達が私のベッドに近づこうとした時、ローラは慌てて立ち上がりそれを押し返した。

 

「なりません!それ以上は。大丈夫です、私が姫様のイタズラに驚いてしまっただけです。」

 

 それを聞いた騎士達が呆れた声を出した。

 

「イタズラですか?いくらなんでも朝からはやりすぎでしょう。大丈夫かい、ローラ?」

 

「えぇ、ちょっと油断していたもので」

 

 そう言ってそのまま騎士達を部屋から出した。

 

 戻ってきたローラを睨みつけ文句を言ってやる。

 

「何故騎士を帰すの?私が命を狙われたのよ」

 

 ローラはベッドに乗り込んでくると私の寝間着の胸元を掴んだ。昨夜締め付けられたせいかボタンが殆ど外れ、はだけていたそれを更にバッと開く。

 

「何ということでしょう……」

 

 ローラが嘆きながら開いた私の胸にいつもの膨らみはない。

 ぺたりと真っ平らな薄い体に肩の軽ささえ感じる。

 

「リアーナ様、どうしてこんな事に……」

 

「アレ?私男になっちゃったの?まさか下も?」

 

 二人で恐る恐る下着の中を覗き込む。

 

「おぉ……付いてる」

 

 よく馬鹿な騎士達が馬鹿同士で話しているような立派なモノかどうかはわからないが付いている。驚きすぎてまるで実感がない。

 

 じっと見たあとローラが赤い顔をして毛布をかけた。

 

「と、とにかくエミリオとゴドウィンを呼んでまいりますから寝室から出ないで下さい」

 

 ローラは静かにベッドから降りると私を着替えさせようとし、首だけではなく体中に薄っすらと蛇が巻き付いているかのような痕がついているのを見つけた。ポーションを与えられ飲んだりかけたりしたがそれは傷痕のようだが擦っても消えず、ローラは青ざめた顔で慌てて寝室から出ていった。

 

 ひとりになり改めて自分の胸に触れて感触を確かめる。

 筋肉質でもなくペラっと薄い胸だ。腕も細いし足もスラッとして多少骨が太くなったかというくらいでさほど女の体だった時と変わらない。

 

 私はこの国九番目の王妃の子、リアーナ王女だ。普段から男と間違われることはあっても中身は女だし別に男になりたかったわけではない。剣の訓練や馬に乗りたいと言ってもなかなか王女の身ではさせてもらえないので紛れ込むために男のように振る舞っていたのがちょっと馴染んではいる。

 

 幼い頃から騎士になりたくて王女らしい習い事はことごとく抜け出し騎士の訓練に入り込んでいた。最初のうちは教育係のパウルが何度も連れ戻しに来ていたがあまりに剣術に夢中になっているとある日、二人の騎士を連れて来た。彼らは母上の里であるバルバロディア領の騎士で剣士のゴドウィンと魔術師のエミリオだった。

 

「姫様、この者たちは優秀な騎士です。二人に騎士としての教育を指導させますから矜持を保つためにも王女としての嗜みを持っていただきたい」

 

 と、このように素晴らしい教育係の手によって私はすくすくと成長していった。

 ゴドウィンとエミリオはかなりの変わり者でバルバロディアでは優秀ながら完全に浮いた存在だったようだ。自領で持て余していた彼らを城で持て余していた私に充てがったのだと女中たちが噂しているのを聞いたことがあるが私としては剣術が上達すればそれで良い。

 

 王都ランデルトラの北にある広大な敷地の中に王の住まいである王城があり、それを囲むように十人の王妃の住まいが建てられている。それぞれ城への距離は順番に比例して正妃が一番近く十番目が一番遠い。

 王妃達の屋敷は出身領地の援助で建てられており勿論それぞれの領地の財力に拠っている。私の母上の里は国内では中領地だが母が王へ嫁いでからはそれなりに栄え運営はうまく行っていたためかなり豪華な住まいだ。やはり妃というのはかなり旨味があるらしい。

 

 父である国王ルードヴィックとは親子としては殆ど接したことはなくそれらしい会話も記憶の中には数回程度だ。父上としては世継ぎは長男サムエウと決めていたようだし私は九番目で姫だ。自ずと興味は薄かっただろうがこちらとしても父王は興味ある対象ではなくどちらかといえば縁続きでない者たち同様、遠く恐れ多いという印象だった。

 

 そんな感じだから崩御されたと聞いてもさほど悲しみというものはなく、それよりも今後の母上のお立場の方が気になった。子は私一人で夫である王がいない今、里に帰ろうが王都に居残ろうがどちらでも選べるらしいが母上は残りたがった、全ては領地の為だ。

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