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蛇の呪いをかけられたので解呪の為に全力で王位を目指します  作者: 蜜柑缶


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101/108

101 決戦2

 ガタガタッと皆が驚いて席を立ち上がった中、母上と正妃マリアナだけは平然と座っていた。伯父フィンレーが座席から滑り落ちたのか姿が見えない。エミリオがふらつきながら席にヘナヘナと座り、サンドロはパニクってるのかオロオロとその場でくるくると回っている。ヴィヴィアンは……うん、気を失っているかな。

 マクシーネの横でゲイルが口をあんぐりと開けたまま固まり、王妃テレーズが無表情でこちらを見下ろしている。

 

「待ってください!これでは戦えません!!」

 

 アーネストが正妃マリアナに訴える。

 

「何故です?代理人に制限はない。其方とて他領のものでしょう」

 

「彼女は私の婚約者です!」

 

 アーネストが私を振り返り必死に訴える。

 

「リアーナ、今からでもゴドウィンと代われ。ゴドウィンお前もなんとか言ってくれ」

 

 ゴドウィンにまで頼み込む。

 

「言い出したら聞かない姫様なんで」

 

 完全に諦めたようにお手上げのゴドウィン。よくわかってるね。

 

「婚約しているかどうかは関係ありません。其方が戦えないというのなら決戦はリアーナの勝利ということになるが、イスラはそれで構わないのですか?無論、宣言したのですから、今更代わりは認めません」

 

 一瞬考えたイスラだがアーネストに向かって首を横に振る。

 

「諦めて戦ってちょうだい。勿論勝ってくれなければいけません」

 

「そんな、私はなんのためにここまで……」

 

 俯くアーネストに構わずイスラとゴドウィンがアレーナから退場していく。

 

 私はアーネストに向き合うと一礼した。

 

「婚約していることが妨げになるなら今ここで解消しても構いませんよ」

 

 スラリと腰の剣を抜くと、白銀の輝きを見せるミスリルの剣を構える。アーネストは私に背を向けゆらりと数歩進むと振り返り一礼して剣を抜いた。

 

「かかってきなさい」

 

 覚悟を決めたのか気迫を感じる。

 

「言われなくても!」

 

 一歩踏み込むと思いっきりミスリルの剣をふるった。ガキィーンっと激しく剣がぶつかる音が響き軽く受け止められる。

 

「話にならん」

 

 そのまま押し返され後ろにひっくり返ると素早く立ち上がった。そこへ鋭いツキが繰り出され慌てて横っ飛びに飛んだ。そのまま追ってくる彼を交わすだけで精一杯だ。なんとかすきをつき攻撃するが容易く弾かれる。

 

「クソッ!」

 

 再び攻撃しながら叫ぶとアーネストが眉間にシワをよせた。

 

「言葉が汚い。それでも王女か」

 

「うるさい!」

 

 受け止められギリギリと剣で押し合う。

 

「私に力で勝つわけなかろう」

 

「わかってる!ちょっと黙ってて!」

 

 剣を押し込みながら横に弾くと蹴りを入れたが、ビクともしない。

 

「ムカつく!」

 

「相手にならん」

 

 そのまま体当たりされ後ろへ吹き飛ばされた。土の上をザザーッと滑っていったがなんとか踏ん張り必死に立ち上がる。態勢を整える間もなくアーネストが打ち込んできたのを受け止める。

 

「君は身が軽い、もっとそれを有効に使う戦法を学んだ方がいい」

 

 余裕の表情で地面に押し付けるように剣で追い込まれる。

 

「うぅ、うるさいぃ」

 

 こっちは力一杯押し返してるが全く敵わない。

 

「まともに受けずに相手の力を受け流すんだ。騎士コースで習っただろ」

 

「わかってる!」

 

 言われた通り身体を返すとそこから抜け出した。

 

「出来るじゃないか」

 

 パッと飛び退り距離をあける。アーネストの攻撃を受け止めているだけでこっちはゼイゼイ息があがっているのに彼は全く平気そうだ。

 そりゃあそうだ。あっちはほぼ現役エリート騎士団員でこっちは落ちこぼれリタイヤ騎士候補失格生だ。

 

 負けて元々だけど!

 

「こんのぉーー!」

 

 アーネスト目掛けて突っ込んでいくとミスリルの剣を振り下ろす。キィーンっと剣がぶつかり合う音が何度か繰り返されその度に弾き返された。

 

「いい加減に諦めろ!降参して負けを宣言しろ!」

 

 もうヨロヨロとしか立ち上がれない私を見かねてアーネストが言う。

 

「そんな簡単に諦められるわけ無いでしょ!こっちは一生がかかってんのよ!」

 

 大きく息を吸うとまた攻撃を仕掛けたが、振り下ろした剣を弾かれ足を払われると地面に転がされた。夢中でついた左手首がミシッと嫌な音を立てる。

 

 ひねったかな?下手すりゃひびくらい入ったか。

 

 痛みをこらえて立ち上がろうとするとそのまま喉もとに剣を突きつけられた。

 

「決着はついたと思うが?」

 

「私はまだ負けを認めてない」

 

 尻もちをついた姿勢だったがグイッと身体を起こす。

 

「おい、自分の状況がわかってないのか!?」

 

 突きつけられた剣がクッと喉に当たる。するとアーネストが半歩後ろへ下がった。そのまま立ち上がるとまた剣を構える。アーネストの剣は私の喉に当てられたままだ。

 

「突かないの?」

 

「当たり前だろう!」

 

「だったらこっちから行くわよ!」

 

 剣を上に弾くと深く踏み込みそのまま振り下ろした。

 

「チッ!」

 

 勿論余裕で受け止められ再び距離と取って向き合う。アーネストは忌々しげに私を睨んで舌打ちをする。

 

「このままじゃイスラ姉様を王に出来ないわよ」

 

 挑発しながらも私の手首はズキズキと痛み、剣を強く握れなくなっている。

 

「このまま君が消耗するまで逃げ切ればいいだけだ」

 

「だったらまだまだかかりそうね!」

 

 そう言ってまた斬りかかるとガキっと受け止められ簡単に弾き飛ばせないないようにグイグイと力で押さえられる。

 

「どうせ私が勝つ、何故そこまでやるんだ」

 

「貴方にはわからない!これまでずっと他に恋人がいると思っていた人に急に言い寄られても信じられないし、呪いを解くために協力もしてくれない奴に最後まで振り回される気持ちなんてね」

 

 思い出したらムカムカしてきて、グッと剣を押し込む。

 

「だからそれは誤解だと言ったろ。何度言わせるんだ」

 

 押し込んだ以上の力で押し返され、踏ん張る足がズズッと後ろへ滑っていく。

 

「何度だって言ってやるわよ。とうとうあの女と婚約すると聞いたんだし、次は結婚ね」

 

 脇へ回るように力を流し受け流すようにして逃れようとしたが、逃してくれない。

 

「なんの話だ!だいたい私は君と婚約しているじゃないか!」

 

「だったらなんで何度も何度もこんなにイライラさせられなきゃいけないのよ!もう嫌なのよ!婚約を解消してくれないと絶対に負けは認めない!」

 

 もう手に力が入らず剣ごと体当たりするように押し込んだ。アーネストの剣が私の剣と一緒に横へ反れて行くときに、ザックリと私の右肩に切っ先が食い込む。

 

「うぐっ!」

 

「リアーナ!!」

 

 ふらつく私をアーネストが抱き止める。

 押し退けてそのまま続けたかったが、もう力が入らなくなった左手首に加え、右肩に傷を負い流れ出た血が右手を汚しぬるついてまともに剣を握れない。

 

「離してよ、まだ決着ついてない」

 

 ドクドクと流れ出る血を彼が必死に押える。

 

「いい加減にしないか。陛下、もう決着はつきました。すぐに医術者を!」

 

 アーネストが正妃マリアナを振り仰ぎ決戦の終了を請う。

 

「陛下、私にはどちらが勝ったかわかりませんけど?」

 

 正妃マリアナの横で母上がしれっと口を挟む。

 

「私にはアーネスト様が勝ったように見えますけど」

 

 イスラ姉様の母、ジャンヌがすぐに答えた。

 

「私には娘が負けを認めたとは思えませんが?」

 

 母上が答えるとジャンヌがフッと鼻で笑う。

 

「往生際が悪いだけでしょう?最初から敵うはずもない戦いでしたわ」

 

「あら、その割にアーネスト様は攻めあぐねている感じでしたわね。

 そちらは投票前でもいつもつまらない小細工ばかりでまともに戦う感じではありませんでしたものね」

 

「なんですって?そちらこそ王女らしくない振る舞いをなさって……」

 

「……お黙りなさい」

 

 母上達の言い合いを正妃マリアナが静かに仲裁した。親同士の口喧嘩にちょっと呆気に取られている最中も私は流血し続けマジでヤバくなりそうだ。

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