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パパと娘と、ときどきママの攻防戦

 今日は週末、家族で出かける予定もないしのんびりとソファでテレビを見ながら寛いでいると、小学一年生の娘がママと一緒にマッチ箱を持ってこちらへと駆け寄ってくる。


「パパー、いまからわたしがクイズをだすから、それにこたえてね?」


 言うとマッチ箱の中から何本かマッチ棒を取り出して何やら図形……じゃなくて数字かな?引き算の数式を作り始める。

 そう言えば我が家にマッチなんてあったかな、僕もママもタバコは吸わないし、火をつけるときはマッチは使わないんだけど、と思っていると、ママが娘の後ろで持っていたレシートを指さした。

 ああ、なるほど。この為にわざわざ買ってきたのか。苦笑いをしているところをみると、マッチ以外の普段使うものを買おうとして、マッチじゃないと駄目って言われたのかな?

 子供ってそういうところで頑固なところがあるから、本当、ご苦労様。


「パパー、できたよ!はい、ならべたマッチをいっぽんだけうごかしてただしいこたえになるようにしてください!ただし、いこーるのところにななめにぼうをおくのはだめです!」


 娘からは見えないように、ママとそんなやりとりをしているとマッチ棒を並べ終えた娘が僕のズボンを引っ張ってくる。どれどれ、どんな問題かな?

 テーブルの上に並べられたマッチ棒を見ると、4―6=5、という数式が作られていた。


挿絵(By みてみん)


 ここからマッチ棒を動かして、数式が成り立つようにすればいいのか。

 えっと、これをこっちに動かしても駄目で、これをこうしても駄目か。

 こういうのって、ひらめくと一瞬で解けるんだけど思いつかないとなかなか解けないんだよね。

 んー、あ、もしかしてこうかな?


 並べられたマッチ棒を見ながら試行錯誤していて、もしかして正解かな?というのが思いついたので、マッチ棒をつまもうとすると、小さくバシっと壁を叩く音が聞こえる。

 何の音?と音がした方を見るとママが指でバツを作っていた。どういうことかと思っていると、首を振ってバツを強調してくる。

 ああ、正解するな、わざと間違えろってことか。

 確かに僕が悩んでるのを見て、得意満面な笑顔になっているのを見ると、これで正解したら凄くがっかりしそうだって言うのが分かる。


「うーん、難しくってパパには分からないなぁ。答えを教えてくれないかな?」


 降参、というように両手を上げて見せると嬉しそうに笑いながら、マッチ棒をつまんで動かしていく。

 4の棒を動かして11にする、うん、僕の考えてたので正解だったみたいだ。


挿絵(By みてみん)


 どうやらこの場合は間違えるのが正解だったらしいと、ママの方を見て笑みを浮かべる。

 するとママはバツにしていた指をマルにして、正解、というように頷いて同じく笑みを浮かべる。

 そんなやりとりをしていることには気付かずに、娘は僕に正解の説明をしてくれて、得意そうに胸を張っている。


 可愛らしい娘のそんな仕草に僕が満面の笑みを浮かべ、凄いねと褒めてあげて頭を撫でると照れているのか、いやいやと身を捩らせる姿はまさに天使。

 でも、計算がきちんとできてそれをマッチ棒でパズル問題に出来るって、もしかしてうちの子は天才では?天使で天才って、うちの娘は最強なのでは?


「それじゃあ、パパ、つぎのもんだいだよ!」


 そう言ってマッチ棒を並べ替える娘を見ながら、ママの方をちらっと見れば少し考え込んで指で丸を作る。つまり、次からは正解してもいいってことかな。

 まぁ、大体コツは掴んだから正解するのは難しくないけど。


 そうやって幾つか出されるクイズに答えていくと、満足したのか自分の部屋に戻っていく。ついていったママが部屋を覗いてそのまま戻ってきて、本を読み始めたと言えばふぅ、と息を零す。


「いやぁ、さっきのクイズ、途中で何個か本当に分からないのがあったけど面白かったよ。あのクイズを作れるなんて、将来が楽しみだね」

「期待しているところ悪いけど、あれって全部クイズの本から出してたのよ?問題と正解をちゃんと覚えてるのは凄いって思うけど」


 僕の言葉に、テーブルの上にコーヒーの入ったカップを置きながらソファに座るママは、親馬鹿ねぇ、と苦笑いを浮かべていた。

 本を読み始めたっていうのは、またクイズの本かな?一人で静かに本を読めるなんて、手がかからないのはいいけど、かからなすぎるのはちょっと寂しいかも。

 もっと色々と甘えて欲しいし、娘がパパ、パパって慕ってくれる時期は短いって言うし。

 でも、手がかからないんだったらそろそろいいかな?


「ねぇ、今度の週末にうちの母さんに頼んで預かって貰ってさ。そろそろ二人目、どうかな?ちょっと歳は離れちゃうけど、その分だけママのお手伝いとか出来るだろうし、良いと思うんだけど」


 僕がそう言うと、ママはきょとんとした顔になった後、満面の笑みを浮かべて腕で大きなマルを作ろうとして、途中で駄目ー!と笑顔を消してバツを作る。


あははは……ねぇ、マッチ棒を動かすクイズみたいに、このバツを腕を動かしてマルに変える方法、誰か教えてくれないかな?もちろん、強引に動かすのはなしでね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 微笑ましい家族の日常という感じで楽しく読ませて頂きました。 こういうやり取りをしてる家族、本当にいそうですね。 最後のオチは笑いました。やはりママは手強い…。 [一言] マッチ棒の問題、真…
[良い点] 線を使って図式を使う手法が秀逸です。色変更なども出来るんですね。 [気になる点] 出産は現代でも命がけ。育てるのはさらに大変なワケで、お願いする立場としては下手にいくしかありませんね [一…
[一言] 知略企画から伺いました。 あー!そっちかー!となりました。 5分考えて、逆さにして5=9ー4でどうだと思ったのは私です…。(*´ー`*)素直さが足りない…。 面白かったです。 読ませてい…
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