ᓚᘏᗢ 冷たい肉球に口付けを ᗢᘏᓗ
――ぷにっ。
ある朝、唇に冷たくて柔らかいものが触れた。
それが目覚めだった。
目を開けると目の前に飼い猫が座っている。
手を伸ばし身体を撫でた。多少の湿り気を帯びてはいるが、それだけだった。
起きたのに気付いたのか唇を塞いでいた前足を退けてくれる猫。
冷たかったということは明らかに濡れている。昨晩雨が降っていたのだろう。
ティッシュで自分の口を拭う。
ついでに猫の足もだ。目の前に座っているので捕まえるのに苦労はない。
前足を握り、肉球を見る。
長毛種だからか、肉球の間からも長い毛がはみ出ている。
足が白い毛で覆われて肉球もピンク色だ。それなのに肉球からはみ出た毛が黒くなっていた。土で汚れているのだ。
ゴシゴシとする。だが、お湯で拭かないと乾いたティッシュでは汚れを取れない。
溜息を吐き、早いけども起きることにしたのだった。
猫の目覚ましで起きると朝が早い。時間を一定にして欲しいし、変な起こし方も止めて欲しい。
私は猫を抱き上げて、まずは台所に行き、お湯を湯呑みに入れてから洗面所に。
この間、猫は左腕に引っかけている。腕に手を掛け、足は伸びている状態だ。
タオルを湯呑みのお湯につけて、それで足を拭う。前足から順番に。右左。後ろ足も。ついでにお尻から尻尾にかけても少し冷たいのに拭っておく。朝っぱらから風呂に入れるほどではないから、これで良いだろう。
昔飼っていた猫の一匹はドブに嵌って帰ってきたらしく、家族に朝から風呂に入れられていました。
たぶん何かを夢中で追い掛けて行ってミスってドブへ落ちたのでしょう。
朝から情けない声で鳴く猫が訴えて来る。
仔猫のときだとよくミスを犯しやすいのだろう。
当事者でなければ、かわいく思う。
朝早くから猫を洗うために風呂に入るのは勘弁して欲しいことだ。
私が昔、猫がトリモチに掛かって訴える状態で見られたときは風呂に入れましたが、そのときは日曜だったので良かったと思う。
トリモチがなかなか取れなくて、溶剤を持ってきてもらって漸く綺麗になったぐらいだったからだ。
これが一人だったら猫を風呂に閉じ込めて、溶剤を探すところから始めないといけないし、そのときは溶剤が外にあったので着替える必要もあった。
これを平日の朝にやりたいとは思わない。
しかも猫を洗って、乾かす、そんなことしてると自分の体が冷えてしまう。トリモチのときは夏だったが、家族がドブに嵌った猫を洗ったときは秋ぐらいだったので寒そうだった。
たぶん2021年 08月17日ごろ作成