田中リミット~学園で高嶺の花に告白する為に学園でアイドル的な存在である妹の様な幼馴染と自称天使が手伝ってくれ、俺が彼女を作る物語~
【毎週水曜の新作短編投稿】の第二弾です!
「お、俺と付き合って下さい!」
「……ごめんなさい」
「えっ」
俺、小鳥遊祐樹は今片想い相手で学園の高嶺の花でもある、冴島麗奈に告白し見事に玉砕した。
そして冴島はその場から立ち去って行き、俺はその場で膝から崩れ落ちた。
「フラれた……そりゃ、そうか。一年も片想いしてただけだし、当然の結果だよな。はぁ~」
俺は暫く呆然としていたが、そろそろ帰るかと思い立ち上がった瞬間だった。
急に胸が苦しくなり、息も出来ない状況に陥る。
その場に倒れてもがく事しか出来ず、助けも呼べないまま苦しんだ。
何なんだよ、これ! ……苦しい……息が出来ない、胸が痛てぇ! 誰か、誰か助けてくれよ! 誰か……
だが、それは声にはならずただその場で俺はもがき続け、遂には意識が遠くなり始め、死を覚悟した。
俺さっき告白して玉砕したのに、次は死ぬのかよ。
ありえねー……最悪だろ俺の人生……
と、思いつつ意識が完全になくなった時だった。
突然、頭に物凄い衝撃が走り、俺が目を覚ます。
「いっっってぇ~~! ……ってあれ? 何で俺床にいんだ?」
そこは俺の部屋であり、状況から見て何故かベットから落ち頭をぶつけたのだと理解した。
俺は起き上がりぶつけた頭をさすりながら、さっき感じていた痛みなどがない事に安堵した。
「よかった~夢か。玉砕するは、死ぬ夢見るはとか最悪なコンボだったわ。つうか、そもそも俺があの冴島に告白なんてしないっての。……そりゃ付き合いって思う程、好きだけど」
そんな事を思いながら、俺はまだ眠さがあったので布団へと戻ろうとした時だった。
突然俺の部屋の扉が勢いよく開かれ、俺は目を見開いた。
「びっくりしたー……もうちょっと優しく開けられないのかよ、うみ」
「ゆうちゃん! 何呑気なこと言ってるんの! もう8時前だよ!? 遅刻するよ!」
「んな訳あるかよ。これでも俺はしっかりと目覚ましを――マジだ……」
俺は目覚まし時計を見て、血の気が引き目が覚めた。
「やべぇ! 遅刻する!」
「全く、私が朝練終わりに一度家に帰って来なかったら、ゆうちゃん完全に遅刻だったね。それじゃ、私は先に行くからね」
「おう! マジ助かったわ、うみ」
「そんじゃ、昼何か奢ってよね」
「オッケー、オッケー!」
そうして、幼馴染である海原詩帆は急いで俺の家から出て行き、学園へと走って戻って行く。
一方で俺は、急いで仕度し菓子パンをカバンに詰め込み急いで家を出て、全力疾走で学園へと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「はぁ~マジで疲れた。やっと昼だ~」
その後俺は、何とか遅刻せずに学園に到着し午前中の授業を終え、机に突っ伏した。
するとそこへ詩帆がやって来て声を掛けて来る。
「ゆうちゃん、よく間に合ったね」
「あ~本当だよ。高二になって初めてあそこまで全力疾走したわ。マジで疲れた」
「うんうん。それで遅刻しなかったのは誰のお陰かな~」
「……分かってるよ。うみのお陰だよ。後で食堂に行くからその時な」
「やった~。何にしようかな~高めのアイスにしちゃおっかな~」
「おい、少しは俺の財布の事も考えろよ」
「え~どうしよっかな~」
詩帆は俺をからかう様な顔でして見つめて来る。
すると遠くで詩帆を呼ぶ友達が現れ、詩帆はそっちに返事をした後「じゃ、約束守ってねゆうちゃん」と言い残し、小走りで友達の元へと向かって行った。
それを見て俺は小さくため息をつく。
くっそ~……今父さん母さんそれに姉ちゃん達も居ないから、小遣いの補充が厳しいのに。
そう、今俺の家は両親が出張で、二人の姉ちゃんも大学の春合宿と海外留学でタイミング悪く誰もおらず、俺だけなのだ。
そして詩帆とは、小学校五年生の時からの知り合いで家も近く、両親達とも仲がいいのでよく家に来てた仲である。
その為か、何故か俺の家の合鍵の場所を教えられており、昔からお節介の様に面倒を見て来る奴なのだ。
「おやおや、小鳥遊祐樹17歳。高校二年生にして、あの人気者であり学園のアイドルでもある海原詩帆こと、うみちゃんと幼馴染かつ家も近い。そして唯一男子の中でゆうちゃんと呼ばれてている男が、ため息とは何事かな~」
「もしや片想い相手である、学園の高嶺の花であり、生徒会副会長でもある冴島麗奈の事でも考えていたんじゃないのか~?」
「おい、いつにもまして変な絡み方をしてくるなよ、石川。それに田口も」
わざわざ俺や詩帆などの説明する様に絡んで来たのは、数少ない友達である野球部の石川と美術部の田口であった。
数少ないと言うのは、別に俺がこの学園で人見知りとかしてるんじゃなく、友達と言える奴が少ないと言う意味であり、知人と言える人は沢山いる。
その仕切りは、本音で俺が話せるかどうかで決めている。
話が合うとか、こいつなら相談とか本気で乗ってくれそうと思える人を、俺は友達と思っている。
まぁ、こんな事知られたら嫌な奴だと思われると分かるから、誰にも言ってない自分だけの考えなんだけども。
「で、いつ告るんだよ、うみちゃんに」
「はぁ? うみに告る? 何言ってんだ石川」
「いや石川、もしかしたらもう付き合ってるのかもしれないぞ、ゆうちゃんとうみちゃんは」
「そう言う事かよ~早く言えよな~」
「おい、勝手に話を進めるな。そして話を聞け。何度も言うが俺とうみは付き合ってないし、ただの幼馴染なだけ。それにあいつは昔から世話好きで、妹の様にしか見えねぇから好意はない」
すると二人は同時にため息をつく。
海原詩帆――学園では「うみちゃん」「しほちゃん」などと呼ばれ、男女ともに友達も多く、勉学も出来て運動神経も良く軟式テニス部に所属。
顔立ちもよく、引き締まった体に豊満な胸もあり一部男子達からはアイドルの様に扱われ、ファンクラブも存在しているらしい。
髪はミディアムで一部分だけ三つ編みにしているのが、特徴である。
「小鳥遊、さらっとうみちゃん自慢するなよ」
「いやしてねぇよ。事実を言っただけだし、それに俺は好きな人いるし、妹を好きになるわけないだろ」
「はいはい。そう言う所だぞ、小鳥遊」
「そうそう。うみちゃんファンクラブの奴が聞いたら、連行案件だから気を付けろよ」
「お前らが面白半分でいじって来るからだろが!」
俺は二人が軽く肩に置いて来ていた手を弾き、いつもの様に反論した。
その後軽く雑談した後、俺は詩帆がいる食堂へと向かうと詩帆は既にアイス売り場で品定めをしていた。
「遅いゆうちゃん」
「悪い。石川と田口に絡まれてな」
「石川君と田口君? 何の話してたの?」
「……どうでもいい雑談だよ。で、何にするのか決めたのか?」
「誤魔化した。いつもちょっと間がある時は、いつも何か誤魔化してる証拠。ねぇ、何の話してたの?」
詩帆がしつこく聞いて来たが、俺は答えずにアイスの話に戻す攻防を繰り広げていると、詩帆が何かに気付き俺の右手の甲を指さす。
「ねぇ、さっきから思ってたけど、それ何? 何で数字なんてそこに書いたの?」
「へ?」
俺は詩帆に言われて右手の甲を見ると、そこには「31」と言う数字が刻まれていた。
軽くこすれば消えるかと思いこするも消える事はなく、近くにあった蛇口から水を出して流そうとするもそれでも消える事はなかった。
「何だこれ? 落ちねし、何かの跡? いや、そんな訳ないか」
「自分で書いたんじゃないの?」
「書くわけないだろ。て言うか、いつからだ? あいつ等には何も言われなかったし、全然気づかなかった」
すると急に食堂が騒がしくなり始め、俺と詩帆が人だかりが出来始めた方に視線を向けると、そこには冴島麗奈が居たのだった。
冴島麗奈――高校二年生ながらにして学園の高嶺の花と呼ばれ、生徒会副会長も務め、正に容姿端麗・頭脳明晰と言える人物である。
愛想も良く教員達からの評判も良く悪い噂など一切なく、男子からの告白も後を絶えないと言われるほどだ。
また学園では男子達の中で海原詩帆派と冴島麗奈派があるらしく、たまに言い合いをしている男子を見て女子が呆れている姿があるらしい。
特徴は、ロングヘアーで片耳にいつも髪をかけている。
俺はそんな冴島に高校一年の時から片想いしている為、自然と冴島を目で追っていた。
すると突然隣にいた詩帆に肘で勢いよく突かれて、それが運悪くみぞに入り視線を詩帆に向けた。
「な、何すんだよ、馬鹿……っぐぅ……」
「何であの人に見惚れて、私には見惚れないのよ……」
「うっ……何か言ったか?」
「別に! 友達ですらない人からガン見されたら、きもがられるよって言ったの。あ~もう、一番高いアイスに決めた!」
俺が腹を抑えてうずくまってると詩帆は機嫌悪そうにして、アイスがある棚へと向かいここで一番高いアイスを取り出してレジへと持って行く。
さすがにそれはきついので、俺は歯を食いしばって立ち上がって詩帆の元へと行き説得し始めた。
その結果、何とかそれは回避し三番目に高いアイスで手打ちにしてもらった。
とは言っても、俺の財布には大ダメージなのは変わらないわけで……はぁ~つら。
その後午後の授業も乗り切り、俺は部活にも所属してないのでいつもの様に帰宅してから、夕飯そして風呂に入り動画を見たり好きな事をして寝る時間になる。
そして次の朝、再び俺は床に頭をぶつけて目を覚ます。
「いってぇぇ……また最悪な夢だった。てかほとんど昨日と同じで、死に方が違うくらいだったわ」
俺はため息をついて、目覚まし時計を見て今日は寝坊せずに起きれた事を確認するが、その時右手の甲の数字が減っている事に気付く。
「ん? 30? 確か昨日31じゃなかったか? どう言う事だ? 風呂でも落ちないし学園でも、うみ以外には何も言われなかったんだよな、これ」
不思議に右手に刻まれた数字を見つめていると、俺は突然扉が開いた事に気付き、また詩帆がやって来たのかと思い振り返った。
「今日は何の用だ、う――っ!?」
「よう、たかちゃん」
そこに居たのは、宙にフワフワと浮いた小柄の少女であった。
理解が追い付かない状況に、俺はその少女を見ながらゆっくりと首を傾げると、少女も同じ様に首を傾げた。
「……あ~なるほど。まだ夢か。よし、寝よう」
俺はそう思い、そのままベットに入ろうとしたが謎の少女に止められる。
「おいおい、何で寝ようとしてるの。わっちをなかった事にしない。これ現実だから、たかちゃん」
「んなぁ訳ねぇだろ。てか、どっから入って来たんだよ? 何で宙に浮いてんだよ。変な夢過ぎだろ」
「質問が多いな、たかちゃんは」
そう言うと、その少女は俺の方に近付いて来て、突然ビンタをされる。
「いっってぇ! 何すんだきゅ――」
俺がビンタされた頬を抑えながら口を開いた直後、少女に再びビンタされた。
「な、何だよお前! 何でビンタしてくるんだよ! しかも二発。おかしいだろ! 俺話してたよな?」
「だって、たかちゃんが夢とか言うから。現実だと分からせる為に、仕方なく」
「何が仕方なくだ。うっすら笑いながら言うな! 後、たかちゃん呼び止めろ!」
「ね、夢じゃないって分かったでしょ? これは現実、そしてそのタイムリミットを刻んだのはわっち。それが0になったら、たかちゃんはこの世とおさらば。わっちはそれを見届ける天使。名をは田中。よろしく」
「田中? 天使? ってか、お前がこれやったのかよ!? それで死ぬって何? ……あ~意味が分からん」
俺は突然な情報量の多さに、完全に頭がこんがらがってしまい思考が完全に止まる。
すると自称天使田中は、俺の周囲を何故か飛び周り始める。
「思考停止中だと思うけど、わっちはこのまま話すよ。君は神様からの試練を与えられたんだよ。その試練をクリアするまでの日数が、その数字なんだよ。たかちゃん、最近よく夢見が悪かったでしょ? それはタイムリミットが0になった時のあり得る未来の自分さ。簡単に言えば予知夢ってやつかな」
「……」
「でも大丈夫。試練さえクリアすれば数字は消え、死ぬこともない。試練を乗り越えた先に待つのは、より楽しい人生さ」
「……け」
「ん? 何か言った?」
「出てけって言ったんだよ」
「いやいや聞いてよたか、って何するの!?」
俺はフワフワと浮いていた田中を捕まえ、そのまま窓を開けて外に突きだす。
そして直ぐに窓を閉めカーテンを閉める。
「全く、朝から分けわかんねぇ事言うなよ。変な幻覚見るし、疲れてるのか俺?」
そのまま俺はもう少し眠る事にし、ベットへと入り目を瞑った。
一方で窓から追い出された田中は、口が開いた状態で締めだされた窓を見つめていた。
「呆れた。まだ夢とか思ってるのか。はぁ~一気に伝えた事が失敗だったかな? でも、マニュアル通りだしな。ま、いっか。どうせ直ぐに分かってくるだろうし」
田中はそのまま浮いた状態で口笛を吹きながら、一度立ち去るのだった。
「ん? 今何か飛んでた? いや、気のせいよね」
その時詩帆がポストから戻る時偶然田中の姿を目撃するも、はっきりとは見えていなかった為、気にせずに家へと戻るのだった。
それから俺は目を覚まし、いつもの様に学園へと行き授業を受け、帰宅すると言う日常を過ごし、自称天使の田中も現れる事もなかった。
やっぱり夢だったんだと思って気にも止めずに、それから数日間過ごした。
だが、その期間右手の数字も減って行き、毎日の様に同じ夢を見続け、数字が減るにつれ死に方がえげつなくなっていくのを感じていた。
そして最初に右手に数字が刻まれてから一週間が経過した。
遂には体調にも影響が出始め、毎日の様に告白を断られ死ぬ夢を見続けた事で精神的に辛く、学園に行ける気持ちになれなかったので休んだのだ。
「くっそ……何なんだよ、毎日毎日。何だって、俺がこんな目に遭わなきゃ行けねぇんだ」
俺はベットに横になりながら右手の甲を見つめた。
数字は既に24にまで減っていた。
……信じたくないが、あの日幻覚やろうが言ってた事は本当だったのか? ここ2、3日あの日の事を思い出して考えたりしたが、ここまで来るとあれは本当に現実だったのかもしれないな。
「と、手を天井に伸ばしながら、たかちゃんは悟ったのでした。あの日、田中の言う事を聞いていれば……」
「あぁ、そうだな……ん? 誰だ勝手に俺のモノローグを口に出した奴は!」
「はい、わっちです。田中です」
「お前かー田中! つうか、どうやってまた入って来たんだよ」
「それはもちろん玄関らかに決まってるでしょ。わっち、こう見えてもマナーはしっかりしてるんで。それと今日は以前付けてなかった、天使ぽい羽根と輪っかを装備してきました。どうです、ザ・天使って感じじゃありません?」
「いや~……微妙?」
「じゃ、もういらないや」
そう言うと田中は速攻で羽根と輪っかをとって投げ捨てた。
そして田中は宙に浮いたまま、俺の部屋を見回した。
「ちょっと汚くなった?」
「うるせぇ、いらない事言うな。それよりも、これ、どうにかしてくれよ」
俺は起き上がり、田中に右手の甲を見せ指で指しながら問いかけると、田中はため息をついた。
「やっと自分の状況を理解したのね。なら分かるだろ、それから解放されたいなら、自分自身で試練を乗り越えないと。それ以外に解決策はない」
「でも確か前に、これを刻んだのはお前だって言ってろ。なら、解く事も出来るだろ?」
「それは出来ないの。わっち達天使は神様から試練を与えられた人に、それまでのカウントダウンを刻み、見届ける係り。試練を乗り越えるお手伝いは多少できるけど、カウントダウンは解除できない。仮に解除出来たとしても、試練を乗り越えてなかったら、その時点でたかちゃんは死亡確定。オーケー?」
こいつが何なのか、どう言う存在なのかと言う疑問はあるが、教えてくれてる事は嘘じゃないと何となく理解出来る。
要は、このままだと俺の命は後24日しかなくて、その試練とやらを乗り越えないと死ぬって事か。
この田中って言う天使は、俺のサポートをしながら俺の試練の見届け人って感じか?
「そそ、そんな感じ」
「っ!? お前心でも読めるのか?」
「ちょっとだけね。なんてったて天使だし」
何故かそこで胸を張る田中に、俺は小さく笑う。
天使とか言ってはいるが、見た目は子供だし年相応な感じで微笑ましな。
するとぐっと田中が近寄って来た。
「今わっちの事を、子供っぽいと思ったな」
「……いや」
「はい嘘ー! たかちゃん、今目逸らしたもんね~。わっち知ってるもん。追求されて目を逸らすのは、嘘をついてる証拠だって事」
「そんなの何処で覚えたんだよ。いや、そんな事よりも試練だよ、試練。その俺に与えられた試練ってのは、何なんだ? まさか、それすら教えてくれないって事はないよな」
「それはもちろんないよ。そこまで神様も意地悪じゃないからね」
そこで俺は安堵の息をついた。
田中はそこで改めて真面目な顔をして、俺の方を向いて来た。
「たかちゃん。いや、小鳥遊祐樹。君に与えられた試練は、31日以内に彼女を作ることだ!」
「……はぁ?」
「だから、彼女を作るんだよ。たかちゃん、彼女まだいないでしょ? それに彼女欲しいでしょ?」
「そ、そりゃ欲しいけどよ。本当にそれが神様から与えられた試練なのか?」
「わっちは嘘は言わないよ。でも試練達成には条件があるんだよ」
「条件?」
俺がそう訊き返すと、田中はポケットから何かを探し始め、紙切れを取り出しそれを読み始めた。
「たかちゃんの条件は、告白は一度のみ。玉砕したら、そこで終了。これぞ、人生の試練なり! だって」
「いやいやいや、告白一回だけで彼女作るの!? しかも断れたら終了って、死って事か!?」
「たぶん。一応夢では教えてるよハ~トって神様からのメモには書いてある」
「ハ~トじゃねぇわ! 確かに夢で毎回玉砕したら死ぬ夢だったけど、ハードル高過ぎだろ」
「確かに、たかちゃんは既に7日間も何もせずに消化しちゃってるし。あ、でも片想いの人がいるなら、その人にアタックすればいいんじゃない?」
「いや無理だから。冴島と接点すらないのに告ったら、それこそ正夢だよ」
「じゃ、そこら辺の女性を口説いて告白する? わっちはどっちでもいいけど、どうせ死ぬなら好きな人に想いでも伝えて死ぬを選んだ方が幸せじゃない?」
「勝手に死ぬ未来を選ぶな」
「なら、告白を成功させて人生の試練を乗り越えるしかないね」
確かにそうだ。こいつが言っている事は正しいし、それ以外に道は残されてない。
でも告白って言われても、親しい女子はいない事もないが、恋愛対象じゃないし好きでもない人に告白なんて出来ない。
その時、一瞬詩帆の顔が浮かぶが、俺は首を振った。
ないない。あいつは妹だ。そもそも、俺を異性として見てるわけない。
ってなると、やっぱり冴島しかいないよな……
「どうだ? 覚悟は決まったか?」
と、田中が考え込む俺を覗き込む様に近付いて来た時だった。
扉の方から何かが床にどすっと落ちる音が聞こえた。
「嘘……ゆうちゃんが、小さい子を連れ込んで襲ってるー!?」
「っ!? うみ!?」
「……ウワー、オソワレルー」
「おい田中! 話をややこしくするな!」
「ゆうちゃん、体調悪いって言ってたからお見舞いに来たのに……自首しに行こ?」
「おい待て待て! 話を聞けってうみ!」
「オヨヨヨ……モウ、セキニントッテモラワナイト」
「ゆうちゃん、まさか……」
「田中~! 止めろって言ってんだろうが! それにうみも、携帯取り出して警察に電話しようとするの止めろ!」
その後、俺はうみを何とか説得した後、田中に軽いチョップをいて叱った。
そして俺は信じてもらえないかもと思いつつも、うみに田中の説明と今の俺の状況について話した。
「なるほど。ゆうちゃんがそんな事になってたなんて」
「え、信じてくれるのか、うみ?」
「嘘じゃないんでしょ? それに天使の田中さんも目の前にいるし」
「さっきも思ったけど、わっちの事見えるんだね?」
「どう言う事だ?」
俺が田中に問いかけると、田中は基本的に天使と言う存在さらに与えられたタイムリミットも当の本人にしか見えないと話す。
しかし例外的にだが、タイムリミットを与えられた人間に親しい人だとたまに見える事もあると話した。
そう言われると、うみは昔からの幼馴染でもある為、それに該当しているなと俺は理解した。
「でも、よく直ぐに受け入れられるなうみ。俺は最初幻覚かと思ったくらいだぞ」
「私、こう見えてもアニメ好きだし、こういう展開は慣れてるの」
何故そこで自慢げに胸を張るんだ? てか、アニメ好きだったのか。知らなかった。
「ん、その顔まさか、忘れてたでしょ。前にもアニメ好きだよって話の流れでなって言ったじゃん」
「あれ、そうだっけ? 悪い、忘れてた」
「もーう! ひどいよ、ゆうちゃん」
そんな俺にとってはいつものやり取りを詩帆と繰り広げていると、それを見ていた田中が俺に向かって問いかけて来た。
「え、付き合ってるんですか?」
「ちげぇよ。うみとは幼馴染で付き合いが長くて、こう言う兄妹みたいなやり取りは日常なんだよ」
「ふ~ん。なるほど」
そう頷いて田中は詩帆の顔をチラッと見た。
その時詩帆は、少し悲しい表情をしていて田中は直ぐに察するのだった。
「そ、それで話を戻すけど、ゆうちゃんは彼女作らないとあと24日で死んじゃうんだよね? で、誰に命を懸けた一度限りの告白するの?」
「それは……」
「え? さっき冴島って人しかいないかって思ってたじゃん」
「おい、田中! また心読んだろ?」
「……だよね~ゆうちゃんは、冴島さんにずっと片想いしてるもんね。自分の命を懸けるなら好きな相手だよね~」
「うみまで……はぁ~あぁそうだよ。冴島の事が好きだよ。でもよ、残り24日で全然関係も作れてない俺が告白しても、断られて終わり……俺だって死にたくねぇよ。最悪な考えかもしれないけど、俺なんかの事が好きって言う子が分かれば、その子に告白するよ」
結局は何だかんだ言って、自分が可愛いんだよ。
好きな人にしか告白しないとか言っておきながら、無理だと分かったら自分が好きだと言ってくれる子なら誰でもいいとか言っちまうんだからな。
そんで死ななければ、その子と何となく付き合って、何となく別れて終わるんだろうな。
「でも俺は、綺麗事かもしれないけど時間をかけてでも、その子の事を本気で好きになるよ。向うの好意を知って告白したんなら、俺は絶対に中途半端な事はしない。それが責任ってやつだと思うからさ」
「たかちゃんって、意外と熱い男子? なんか、何となくその場しのぎで生きてるなって感じがしてたけど、違ったんだね」
「否定はしないけど、めんどくさい男なんだよ、俺は」
田中は言っていて恥ずかしくなりそっぽを向いて俺を、ニヤニヤしながら見て来ていた。
俺は田中に「そんな顔で見つめるなー!」と言うが、田中はその後もニヤニヤしながらゆらゆらと浮きながら逃げ続けた。
すると突然詩帆が口を開いた。
「な、なら! ……いや、やっぱり何でもない……」
俺は突然前のめりになるが、直ぐに引いた詩帆の行動に首を傾げていると、田中が提案を出して来た。
「関係性がないって言うなら、関係を作ればいいだけでしょ? まだ24日もあるんだから、さっさとその冴島って子と友達になりなよ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おい、本当に上手く行くのかよ?」
「難しいんじゃ、ないかな」
「もう23日しかないんだから、手段を選んでる暇はないっしょ。ほら、さっさと行きなよたかちゃん」
そう言って、田中が俺の背中を押し始め、俺は隠れていた電柱から押し出された。
俺は田中の方を見ると、物凄い自信の満ちた顔でサムズアップポーズをとっており、一方でうみは田中と共に電柱に隠れた状態で、心配そうな顔で俺を見ていた。
マジでやるのかよ。
俺はため息をついてから、通学路である道の角で待ち伏せし、そこへ歩いて来る冴島を待った。
そう、俺が今何をしているかと言うと、これは田中立案の『曲がり角で偶然ぶつかっちゃてごっめ~ん。大丈夫? って冴島じゃん。俺だよ俺。小鳥遊だよ』大作戦である。
昨日あの後に、友達関係になる為に冴島にまずは存在を知ってもらうべきだと言う事になり、まずは友達関係になるべく立案された作戦なのだ。
一応他にも詩帆も協力してくれ、作戦を考えてくれたものの、物凄い田中の猛プッシュにより、この作戦の実行が決まってしまう。
俺自身もさすがに何もしないままではダメだと考えていたので、ひとまず行動してみる事にしたのだ。
「頑張れたかちゃん!」
「……」
「心配? うみちゃん?」
「えっ、あ、ううん。ちょっと考え事してただけ。頑張るんだよーゆうちゃん!」
「野次止めろ。余計に緊張するだろうが……ふ~……」
俺は2人からの言葉を受け、緊張してる自分を落ち着ける為に深呼吸した。
すると奥から冴島がこちらに向かって歩いて来る。
来た……あ~やばい、また緊張してきた……
俺が隠れる様に冴島が来るのを待っていると、偶然その道の奥でランドセルを背負った男の子達が何かを探し困っている姿を目撃してしまう。
直ぐに俺はそこから目を逸らし、冴島に集中しようとしたが、どうしても困っている男の子達の方に視線が向いてしまう。
……あ~~くそ。
俺は待ち伏せした場所から離れ、冴島が通る道を超えて困っている男の子達の元へ向かい、声を掛けた。
それを見ていた田中と詩帆は何が起こっているのか分からず、急に俺がその場を離れた事に驚く。
すると田中が何をしているのかと思い、俺の方へとやって来て声を掛けて来た。
「何をしてるんだよ、たかちゃん。冴島ちゃん、もう来ちゃうぞ」
「悪い田中。こいつらの探し物見つけたら、戻るから。大切な物らしんだ」
「お兄ちゃん、ここの下にあるかも」
「おぉ待ってろ、今行く。すまん田中」
そうして背を向ける俺に、田中はため息をついて詩帆の元へと戻って行く。
「何だったの?」
「心を見た限り、小学生男子達が同級生女子が大切にしてた髪飾りをなくしてしまって、罪悪感を感じてそれを探してるのを見ちゃって手伝うんだってさ。何考えてるんだが、たかちゃんは。今は自分の事でしょ」
すると冴島が、元々待ち伏せ場所としていた所を通り過ぎてしまうのだった。
「あ~あ、行っちゃった」
「そうだね。でも、ゆうちゃんらしいよ。たぶん、昔の自分と重ねちゃったんじゃないかな」
「昔?」
「うん。私が転校して来た頃、ちょっといじめられてさ。その時にお母さんに買ってもらったブローチをなくされて、一人泣きながら探してたらゆうちゃんが黙って一緒に探してくれたんだよね。結局は見つからなかったんだけど、そう言う優しさが昔からゆうちゃんはあるから、見過ごせなかったんだと思うな」
詩帆はそんな事を思い出しながら、どこか安心した表情で田中と共に俺が男の子達と一緒に探し物をしている姿を見つめるのだった。
その後俺は男の子達の探し物を見つけ出し、詩帆と田中に合流して謝った。
それからは、学園に登校しそこでも他の作戦を練っていたので、何度も行動に移すが冴島に接触する前に必ずと言って他の人に邪魔されてしまい、上手く行かずに全て終わってしまうのだった。
あっという間に時間も経過し、放課後となった。
俺は詩帆のゴミ捨てを手伝って校舎外を歩いていた。
「はぁ~こんな上手く行かないもんなのか? 『手伝います』『挨拶』『待ち伏せ2』『お昼一緒に』『質問』『落とし物』後諸々の作戦全部だめ。どんだけ鉄壁なんだよ」
「こう思うと、やっぱり朝のが最大のチャンスだったね」
「確かにそうかもな。田中は知らないうちにどっか行くし、うみはこれから部活だもんな」
「うん。それで、ゆうちゃんはどうするの? まだ冴島さんにアタッタするの?」
「まぁ一応、放課後の作戦も一つだけあるから、やる予定だけど。今日の調子だとどうなるのやら……」
そんな雑談をしながら俺達はゴミ捨てを終え、教室へ帰ろう戻り始める。
「あっごめん、目にゴミが」
「大丈夫か?」
「うん、先行ってて」
俺は詩帆にそう言われて立ち止まった詩帆を置いて、少し歩いた所ふと後ろを振り向いた時だった。
3階の校舎窓から誰かがビンの様な物を握って手を出しているのに気付く。
すると、手に持っていたビンを逆さにして、大量の水を流れ出て来る。
俺はその真下に詩帆がいるとすぐさまに理解し、声を出す前に体が動く。
詩帆は目をこすっており、まだ頭上の事に気付いてはいなかった。
「詩帆!」
俺はそう声を出し、詩帆の手を掴み自分の方へ抱き寄せた。
直後、先程詩帆が居た場所に水が降り注ぎ、地面が濡れるのだった。
直ぐに俺は誰がやったのか見上げるが、ここからでは顔も見えず、手を出していた人物はそのまま何もせずに立ち去って行くのだった。
誰だったんだ? 事故か? いや、あれは狙ってやった様な気もするが、3階って言うと……
俺は詩帆を抱き寄せたまま、3階の校舎窓を見つめたまま考えていると、詩帆が何事かと慌て出す。
「ゆ、ゆうちゃん……その、何で急に抱き寄せたの……」
「あ、すまん」
そう言われ俺は詩帆を離すと、詩帆は少し顔を赤らめて俯いていた。
「顔が赤いが大丈夫か?」
「べべ、別に赤くない!」
すると詩帆は片手で顔を隠した。
そこで俺は今起きた事を全て詩帆に話し、状況を理解してもらう。
「そう言う事だったんだ……ありがとう、ゆうちゃん。守ってくれて」
「怪我がなくて良かったが、こう言う事よくあるのか?」
「ない、とは言えないかな。さっきみたいな小さい事がたまにあるんだけど、直ぐになくなって友達も心配してくれてるし、私は大丈夫だよ。もう小学生の頃の私じゃないし」
「……本当だな?」
「うん……嘘じゃないよ」
俺は一瞬だけ答えに間があり、視線を背けた事に引っかかったが、詩帆が大丈夫と言う事を信じる事にした。
その後俺は詩帆と共に教室へと戻るのだった。
そんな俺達の事を、3階の校舎窓から冴島が目にしていたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
これは大丈夫なのだろうか? 犯罪じゃないよな。
俺は詩帆と学園で別れ、校門近くで隠れる様に冴島を待ち伏せしていた。
そこへ冴島がやって来るが、いつもの様に男子達が数名付きまとっていた。
うひゃ~すげぇ人気。まぁこれももう日常風景だけど。
そして冴島と付きまとう数名の男子が共に校門から出て行った所を確認して、俺はその後をこっそりを追い始める。
俺は今最後の作戦である『帰り道で偶然を装い声を掛ける』を実行しているのだ。
まさかに作戦名そのままで、一人になった所に偶然会ったかの様に声を掛けキッカケを作ると言うものだ。
もちろん発案者は田中だ。
その本人はいないが、俺は何とかバレる事無く尾行していると、付きまとっていた男子達が冴島に何かを言われると、徐々に散り始めて行く。
そして遂に冴島一人きりの状況が到来するのだった。
俺はまさかこんな状況が来るとは思っていなかったので、少し驚いていた。
が、今は道が一本道の為上手く偶然を装う事が出来ないと思い、もうしばらく様子を見る事にし後を付ける事にした。
その間冴島の事を見ていると、何やら手帳の様な物を取り出しぶつぶつとしゃべりながら、それに集中する様に歩いて行く。
何してるんだ? 勉強か? にしても、周りも見ないで危ない感じだな。
俺はそんな事を思いながら後を付けていると、住宅街の道に入り、十字路がいくつか続く所も冴島は周りを見ずに歩き続けた。
すると遠くの方で、中学生達が自転車に乗りながら騒いで近づいて来る事に気付く。
それは徐々に冴島に近付いてく感じがしたが、冴島はその事に気付いていないのか歩き続けていた。
おい、まさか気付いてないのか? この辺は角に家があるから急に自転車とか車が来たりする所なのによ。
あ~もう! どう思われてもいい、目の前で事故に遭われる方がもっと最悪だ。
俺はまたしても先に体が動き、冴島が事故に遭わない様に声を掛ける為に近付いて行く。
その時冴島は、十字路に入った所で左側から騒ぎながら自転車に乗った中学生達がやって来るが気付いていなかった。
直後、俺は冴島の右手を掴み引っ張ると冴島は足を止め、引っ張られた右手を見て驚く。
「何やってんだよ。周りを見ないと、危ないだろ」
その目の前を自転車に乗った中学生達が通り過ぎて行く。
冴島はそこで初めて事故になりそうだった事に気付き、俺の方へと視線を向けて来た。
「……貴方は」
「あ~……そうだよな、誰だが分からないよな。俺は同じ学年の小鳥遊祐樹。ぐ、偶然この辺を歩いていたら、冴島を見つけてさ」
「そう。でも助かったわ。私集中しちゃうと周りが見えない事があって、もし小鳥遊君がここを通っていなかったら私事故にあってたかもしれないものね」
すると冴島は俺に向かって優しく笑いかけてくれた。
その笑顔に俺は、完全に見惚れてしまった。
初めてだった……初めて好きな人に自分を認識してもらい、笑いかけてもらえるなんて。
高校生になって何言ってんだと思うかもしれないが、俺はもうそれで胸がいっぱいで幸せな気分だった。
俺は顔が緩みぼーっとした顔をしていると、冴島が心配し始めた。
「どうしたの小鳥遊君? 何か、ぼーっとしてるみたいだけど、大丈夫?」
「え? あ、あ~大丈夫、大丈夫! ちょっと初めて冴島と話せて嬉しくって」
「私と話せて嬉しい?」
「はっ……あ~いや、今のは何て言うか、思ってた事と言うか、言うつもりはなかったて言うかだな、その」
俺がついつい口にしてしまった事でテンパっていると、そんな姿を見て再び冴島が笑う。
「うふふふ、小鳥遊君って面白いね」
「そ、そうか? 俺としては恥ずかしいだけなんだが」
「そうだ。助けてくれた小鳥遊君には、何かお礼をしないとね」
「お礼なんていいって。そんな大した事――」
「そう言わない。人の好意はありがたく受け取るものだよ、小鳥遊君」
冴島が注意する時のちょっとした怒り顔にも、俺はぐっと来てしまい少し口元が緩む。
すると冴島は腕を組み、片手を口元に当てながら何か考え始める。
「そうだな~……あっ、この近くに私がよく行く喫茶店があるから、そこで何か奢ってあげるよ」
「え!?」
思いもしない提案に、俺は驚きの声が漏れてしまう。
そして俺は腕を引かれ始めるが、さすがにそこまでの心の準備が出来ていなかったので、一度足を止めようとする。
が、冴島はそのまま俺を引っ張った。
「ほら、何してるの? 行くよ小鳥遊君」
「いや、喫茶店とかじゃなくても、奢られるなら、自販機とかでも」
「いいから、いいから。命の恩人に自販機だけのお礼って訳にはいかないでしょ」
その後、俺は冴島に腕を完全に掴まれて、逃げるすべなくそのまま喫茶店に連れて行かれるのだった。
そして喫茶店で冴島と過ごした後、俺は帰宅するした。
すると、何故か部屋でくつろいでいる田中を見つけ、俺は終始笑顔で冴島との出来事を伝えた。
「って事があったんだよ~いや~まさか意外と強引な一面もあったんだな、冴島って」
「それはよかったが、話してる時のたかちゃんの顔、気持ち悪いよ。ずっとデレデレした顔で」
「え~そんな事ないって~えへへへ……」
「それだよ、それ。でもまぁ、お近づきなれたみたいだし、向こうの印象も結構良い感じそうだね」
「うんうん。意外と話も盛り上がってさ、冴島って中学は別の所だった見ただけど、小学生はこの地域の所行ってたらしくて昔話に花が咲いてさ~」
「仲良くなれたのは分かったから、次は異性として意識させる段階だよ、たかちゃん」
その言葉に俺は、何の為に冴島とキッカケを作ったのかを思い出し真面目な顔をするが、どうしても直ぐに顔がにやけてしまう。
田中はそんな俺に呆れたのか、小さくため息をついた。
「とりあえず、明日からは積極的に話し掛けるんだよ。そんで一緒に帰れる様になれれば、可能性は出て来るんじゃない?」
「え~一緒に帰るとか、早くない? えへへへ~でもあの冴島と一緒に下校か~……考えただけで楽しそうだな~えへへへ……」
「(ダメだコイツ。今日は完全に壊れてるな。でも進んでるみたいだし、何とかイベントは起きそうかな)」
その後俺は今日の事が嬉し過ぎて、田中に呆れられる顔のまま話は終わった。
次の日から、俺は冴島との関係性が出来た事を再確認し、告白してOKしてもらえる為に気持ちを改めて田中と共に学園に登校するのだった。
「たかちゃん、分かってるよね?」
「分かってるよ。昨日の事を活かして、俺から話し掛けて仲を深めて行けって事だろ」
「そうそう。上手くキッカケを作れたんだから、しっかりと活かさないとね。自分の命が掛かってるんだからね。残り22日だよ」
「お前本当に天使か? 人の寿命を改めて口にするなよ。死神にしか見えないぞ」
「わっちのどこが死神なんだよ! どっからどう見ても天使でしょうが!」
いや、逆にどこをどう見ればそうなんだよ? 宙に浮いて人から見えないって、もう幽霊とかだろ。
と、俺は心の中でツッコむと田中がギャーギャーと言い始めたが、とりあえず無視して学園へと向かった。
そして学園に到着した直後、まさかの出来事が起こる。
「おはよう、小鳥遊君」
「あはよ――え……冴島っ!?」
「う、うん。そんなに驚く? そんな反応されると思わなかったから、ビックリしちゃったよ」
「ご、ごめん。いや、まさか声を掛けられると思ってなかったから」
「え~昨日あんなに盛り上がった仲なのに? ちょっと傷ついたな~」
「そんなつもりじゃっ」
「ごめん、ごめん。ちょっとからかっただけ」
朝からまさかの光景に学園の皆は少し驚いていた。
今まで冴島から誰かに声を掛ける事はほとんどなく、しかも男子に冗談交じり楽し気に話していた事に驚いていたのだった。
冴島はその後「またね~」と言って先に学園に入って行く。
その場に残された俺は、一部の男子達から異様な視線を送られている事に気付き、さそくさと逃げる様に学園へと入って行った。
それ以降も、何故か冴島の方から俺を見つけると声を掛けて来て、軽く雑談などをしたりする展開が続く。
それからというもの、冴島が声を掛けてくれるので俺からも声を掛けやすくなり、一気に関係が深まり知人から友達へと俺の中では変わって行った。
キッカケを作れた一週間後には、遂に一緒に帰る所まで関係が進んだのだ。
「見て、冴島さん今日は最近話が合うって言う、小鳥遊君と帰ってるよ」
「あ、ほんとだ。確か聞いた話だと、昔この辺の地域に冴島さんも住んでて、それで偶然話す機会で意気投合したんだって」
「え~なにそれ。そう言うのって幼馴染ってやつ?」
「どうだろ? でも、小鳥遊君って言えば海原さんと幼馴染で有名だよね。さっきその辺でたむろってた男子達、めっちゃ小鳥遊君の事羨ましがってたよ」
「そりゃね~だってアイドル海原さんと高嶺の花冴島さんに好かれてるってなれば、誰だってそうでしょ。あ~あ、何でうちはそう言う男子版がいないかな~」
「それね~」
と、女子生徒二人が校舎の窓から正門付近を見ながら話した後、その場から立ち去って行った。
するとそこへ詩帆が階段から降りて来て、通りかかり俺と冴島の姿を目撃し、足を止める。
「……へ~案外上手くいってるじゃん。ゆうちゃんはキッカケさえあれば、誰とでも仲良くなれるもんね……」
そんな事を呟きながら、詩帆は少し悲しそうな表情で見つめていた。
「このままでいいの?」
「っ!? 田中さん? どうして。ゆうちゃんと一緒なんじゃ」
「今のたかちゃんに、わっちは必要ないでしょ。何だかんだ上手く進んでる様だし。それよりも、気になるのはうみちゃんだよ」
「私?」
「何であの時、たかちゃんに好きだよって言わなかったの? もし伝えてたら、そんな苦しい気持ちにならなかったでしょ?」
田中の言葉に詩帆は何も言い換えずに黙って、正門の方に視線を向けると窓に片手を当てる。
「何でだろうね……私にも分からないよ。言おうと思ってたけど、止めたんだよね」
「卑怯とか思った? それとも、たかちゃんに想いを伝えて拒否されるのが怖かったから?」
「……本当に心が読めるんだね、田中さん」
詩帆はそう言った後、何も話さずただ正門の方を見つめ続けた。
「好きなんでしょ、たかちゃんのこと」
「私はただ、好きな人に死んで欲しくないだけ」
そう言うと、詩帆はその場から離れて行くのだった。
田中は詩帆の後ろ姿を見た後、窓をすり抜け外に出る。
「(どうして気持ちを伝えないかな? 想ってるだけじゃ、何も変わらないのに)」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
冴島と一緒に下校した次の日も、その次の日も冴島と雑談をし、遂にはお昼まで誘われて一緒に食べたりしてしまった。
一緒に下校と言うのは、その一回だけで冴島は生徒会副会長と言う立場もあり、生徒会での仕事もある為下校するのが皆より遅いのである。
たがこの一週間程で、冴島との関係は劇的に変化し告白への希望も少しは見えて来ていた。
しかし、土日は特に進展する事も出来ない為、俺は部屋でダラダラと過ごしていると、田中が急に俺の腹へとのしかかって来た。
「何ダラダラしてるんだよ、たかちゃん。これじゃ昨日と同じだろ。それに後12日だぞ。いいのか、そんなんで」
「ぐえっ! 急に乗っかってくるんじゃねぇよ。てかいいだろ、ダラダラしてても。どうせ冴島とは会えないし、連絡先も知らないし」
「はぁ? たかちゃん連絡先聞いてないの?」
「いや、訊いたよ。だけどちょうど携帯が1カ月前に壊れたまま、まだ治せてないって言うから」
俺は腹の上に乗ったままの田中をどけて、ベットから起き上がる。
「暇なら、わっち達に少し恩返しでもしろ。誰が作戦立ててやったと思ってるんだ? どっか遊びに連れてけー!」
「まぁ確かにその作戦のお陰っちゃお陰だけど。遊びって、田中いつもフラフラとどっか行ってんだろ?」
「わっちだけじゃない! 達といっただろ」
「?」
「首を傾げるな! うみちゃんに決まってるだろうが! 一緒に作戦考えてもらって、何も恩返ししないとか最低の男だぞ、たかちゃん!」
うっ……確かにそうだ。
うみには色々と手伝ってもらったし、巻き込んでる様な形になって迷惑もかけてるし、何か恩返ししないとダメだな。
つっても何がいいんだ? プレゼント? お菓子とかか?
「買い物にでも誘って、訊けばいいだろう」
「なるほど。って、また心を読むんじゃねぇよ!」
「ほら、そうと決まったら仕度して、うみちゃんの所に行くぞ。今日は部活休みらしいしな」
「何で知ってるんだよ、そんな事」
「天使だからね」
「関係ねぇだろ」
その後俺は田中と共に詩帆の家へと向かい、買い物に誘うと詩帆は嬉しそうな顔をして直ぐに仕度して来て、近くのデパートへと向かったのだ。
デパートでは詩帆の好きな物を見て回ったり、ゲームセンターで遊んだり、話題のスイーツを食べたりと休日を満喫した。
「なぁ、ちょっと休まないかうみ?」
「え~ゆうちゃん、体力なさすぎじゃない? 帰宅部だからそんなんになるんだよ~」
俺は近くにベンチを見つけ、すぐさまそこへと腰を掛けた。
「ふ~疲れた~」
「あ~! もう勝手に休まないでよ。今日はお礼で付き合ってくれるんでしょ?」
「そ、そうだけどよ……あっほら、田中もいるしさ。俺は少しだけここで休んでるから、二人でちょっと行って来いよ」
「休日の父親か、たかちゃん」
「俺はここで休んで次に備えるから、なぁ」
すると詩帆と田中は顔を見合わせた後、ため息をついて詩帆が「そこで待っててね」と言ってた田中と二人でアクセサリーショップへと向かって行った。
俺はベンチに座りながら軽く手を振った後、深くベンチに腰掛けて真上を向いた。
やべ~思ってたよりデパート広い。
楽しんだけど、少し休憩しないと体力がもたん。
「あれ? もしかして、小鳥遊君?」
「え?」
突然名前を呼ばれ、俺は顔を向けるとそこに居たのは、私服姿の冴島であった。
「冴島!?」
「やぁ。やっぱり小鳥遊君だ。偶然だね」
「何で冴島がここに?」
「私? 私はほら、前に話した携帯を買い直しに来たの。それが終わったから、ちょっとフラフラしてたら小鳥遊君ぽい人見かけて、今声を掛けたって感じかな」
冴島は俺に「隣いい?」と訊いて来たので、俺は姿勢を正して「どうぞ」と返すと冴島は俺の隣に座った。
「それで小鳥遊君は、どうしてこんな所で休んでたの? 一人って訳じゃないよね? ご両親とかと来たの?」
「いや、両親じゃなくてここ最近世話になった奴と一緒にさ。そのお礼みたいな事で、一緒にデパートに遊びに来た感じ」
「へぇ~そうなんだ」
するとそこへ詩帆と田中が戻って来る。
「お~い、ゆうちゃんに似合いそうなのあったから買って――冴島……さん?」
「あら、海原さんだったのね。小鳥遊君が一緒に来た相手って言うのは」
そう言うと冴島は立ち上がり、詩帆に向かって改めて挨拶をすると詩帆も挨拶を少しぎこちなく返した。
「……どうして、冴島さんがここに居るんですか?」
「偶然ですよ。そんな睨まないで下さいよ、海原さん」
「っ! 睨んでなんかいません!」
「おいおい、うみ。どうしたんだよ」
俺も思わず立ち上がり、詩帆に声を掛けるが詩帆は顔をそらし「ごめんなさい」と返す。
幸い冴島も気にしてないし、冴島の方も詩帆の気に障る様な事を言ってしまったと謝った。
もしかして、二人って仲悪かったりするのか? でも、そんな話聞いた事ないし、どうすればいいんだ。
「(何となく状況は察したけど、雰囲気が良くないね~)」
え? 田中?
「(はい、田中だよ。これは以心伝心と言うやつだけど、細かい事は気にせずに今は、この状況だよたかちゃん)」
お、おう。そうだな。とりあえず、ここは一旦うみと一緒に離れる方がいいかな?
「(そうだね。何か変な事になる前に、適当な理由を言って離れるのがよさそうだね)」
俺はそう思い、口を開こうとしたが先に冴島が口を開いた。
「ねぇ、もしよかったらだけど、私も一緒に遊びたいんだけど、いいかな?」
「っ!?」
まさかの冴島からの発言に、俺と田中は目を見開いた。
そして詩帆は、一瞬だけ体がぴくっと動く。
「どうかな、小鳥遊君?」
俺に来たー……このタイミングで俺か……あ~辛い。
冴島と会えたのは嬉しいし、これは告白へとつなげるチャンスでもあるとは思う。
だけども、今日は詩帆と一応田中へのお礼と言う事で来てるし、それにさっきの詩帆の感じから冴島が苦手そうに思えるんだよな。
俺は悩んだ結果、答えを口に出した。
「え~とその、今日はう――」
「いいんじゃない」
「うみ?」
「私は別にいいって言ったの。冴島さんが一緒に回りたいって言うなら、回っても」
詩帆がそっぽを向きながらそう答えると、冴島は笑顔で「ありがとう、海原さん」と返す。
その直後詩帆は、ボソッと何か呟くが俺には聞き取れなかった。
「それで小鳥遊君は、どうかな?」
「え?」
冴島はそう言いながら、俺に近付いて来て少しかがんで上目遣いに訊ねて来る。
俺はその仕草にドキッとしてしまい、たじたじな答えになってしまう。
「お、おお俺は、うみがいいって言うならいいと思う、ぞ」
「(……うみが、ね)」
そのまま俺は冴島から目を逸らすと、冴島は体を起こし「ありがとう」と笑顔で答える。
その後俺、詩帆、冴島、そして田中と言う組み合わせで何とも言えない雰囲気のまま、デパートを巡る事になる。
「うふふふ。面白い事言うね、小鳥遊君は」
「そうかな? 俺としては普通なんだけど」
「え~私からしたら変だよ?」
「そんな事言うなら、冴島はどうなんだよ?」
「私? 私はね~」
と、俺と冴島が会話している所を少し離れて詩帆が少し口をとんがらせて見つめていた。
「(楽しそうに話しちゃってさ……私がいいって言ったけど、そんなにデレデレする事ないじゃん)」
田中はそんな詩帆や俺と冴島を見て、小さなため息をついて付いて来ていた。
そうして大きな問題もなく、デパート巡りを終え俺は疑似的なデート気分を味わえてフワフワした気持ちで、田中と詩帆の2人と共に帰路に就いたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
デパートの一件から、何故か特に何の進展もなく一週間が経過してしまった。
何故? 何が起こったの? と思うだろう。
俺もだ。
あれから次の日、俺はちょっとウキウキ気分で学園に行くも、冴島は生徒会の仕事が忙しくなり全く会う事が出来なかったのだ。
しかもその週全てそうであった為、俺はただただ今まで通りに過ごして帰宅するだけで一週間が過ぎたと言う訳だ。
「はぁ~」
「ため息をつきたいのは、わっちの方だよ。何で強引にでも会いに行かないんだよ? この前いい雰囲気だったのに、それが全然活かせてないじゃんか」
「分かってるわ。だけども、忙しそうにしている冴島に迷惑を掛けるのは違うだろ」
「たかちゃんね、分かってるの? 後5日だよ? 一週間も無駄にして、そんな悠長な事言ってられないでしょ? 命がかかってるんだよ? それとももういい思いしたから、諦めたの?」
俺は椅子の背もたれにもたれ掛かり、右手の甲向けて天井に伸ばしそれを見上げた。
「言われなくても俺が一番分かってるよ、田中」
「だったら」
と、田中が何かを言いたげにしていたが、俺はそれを遮る様に口を開く。
「だから俺は覚悟を決めた。明日俺は冴島に告白する」
「う、うん」
「何だよその反応。人が告白する決意を口にしたって言うのに、どうしてぎこちない返事なんだよ」
「いやだって、一週間も何もなかったのにちょっと前にいい雰囲気だった事で気が大きくなって、告白するって事でしょ?」
「うっ……いいだろそれでも。もしかしたら、また数日間冴島も忙しいかもしれないだろ。そしたら、熱も冷めるしタイミングも失うかもしれないだろ?」
「まぁ、たかちゃんがそう決めたならそれでいいんじゃない? わっちも最初の時より無謀な行動でもないと思うし。何にしろ、告白が成功しなきゃどっちにしろ終了なんだし~」
田中は少し他人事の様に話し、部屋をフワフワと浮いて回りだす。
俺はそれを横目に雨が降り続いている外へと視線を向けた。
改めると、俺後5日で死ぬのか……告白が絶対成功する訳じゃないし、しなくても失敗しても終わり。
俺が生き続ける為には冴島への告白を成功させるしかない。
たった数週間だけど、冴島との仲は深くなったし印象も悪くないと俺は思う。
向こうはどう思ってるか分からないけど、少なくとも田中が言ってくれた通り、最初の時のただの当たって砕けろ状態ではないのは確かだ。
後5日もあると思って行動すると、俺はたぶん直前でテンパって告白出来なくなるんじゃと思って明日告白すると決めたんだ。
その時俺の手は震えていたが、強引にもう片手で震える手を包む様に握り締めた。
そうして次の日、告白と言う名の今後の人生が決まる日がやって来た。
俺はいつも通りに学園へと登校し、早速冴島を探し放課後に告白する為に呼び出そうと探し始める。
すると運よく冴島を見つける事が出来、声を掛けようとしたがどうしてか一言目が出てこなかった。
どうにか振り絞って声を出そうとするが、口元や手が震えてしまい声を出す事が出来なかった。
くそ……結局怖くなってるんじゃねぇかよ、俺……昨日覚悟決めたろ? 冴島に告白するって。
と、俺が自分自身と葛藤していると、冴島が振り返って俺を見つけて声を掛けて来た。
「小鳥遊君。おはよう」
「あ、あぁ冴島……おはよう」
「どうしたの? 何か顔色悪いけど、大丈夫?」
「えっ……だ、大丈夫。ちょっと低血圧なだけだ」
「そう、ならいいけど。あ~それと先週はごめんね。生徒会で忙しくて全然話せなくてさ。何度か見つけて声を掛けてくれそうな雰囲気は分かってたんだけどさ」
気付いてくれていたのか。
俺は首を軽く横に振り、冴島に「気にしなくていいよ」と返す。
「でも今週はその分生徒会の仕事もなくなったから、また話せるよ。実は、ちょっと小鳥遊君と話せなくてつまらなかったんだよね」
「え」
「あっ、今のは聞かなかった事にして」
冴島はそう言うと、そっと俺から視線を外し少し頬を赤らめた。
その姿を見て俺は勢いで言葉が出ていた。
「冴島、今日の放課後時間あるか?」
「っ……ごめん。今日の放課後はちょっと呼ばれてて」
「そ、そうか。いや、いいんだ。大した事じゃないし、全然問題ないから気にしなくていい。うん、全然大丈夫」
大したことだろうが! 何言ってんだ俺! つうか、勢いで言っちまったけど断られたー! はずいはずいはずいはずい!
「ごめんね小鳥遊君」
すると遠くから冴島を呼ぶ友達の姿があり、俺は気付いていない冴島に「呼ばれてるよ」と教えて上げた。
冴島はその友達に返事をして俺に申し訳なさそうな態度をとっていたが、俺は「本当に気にしなくていいから」とちょっと笑いながら答えた。
俺は耳を真っ赤にして、いち早くこの場から離れたくて冴島が友達の方を振り向いたのと同時に、その場から急ぎ足で立ち去った。
「あれ小鳥遊、君?」
その時俺は近くの階段へと逃げ込み、カバンに顔をうずくめて悶えていた。
「何してるんだよ、たかちゃん」
「た、田中~」
「ちょ! 何か気持ち悪いよ。別に告白した訳じゃあるまいし、誘い出そうとしてダメだっただけじゃん」
「そうだけよ。何か気持ちが的に勢いで口にしたら、そのまま叩かれた感じって言うか。何て言うか」
「はいはい。今日はダメだっただけなんだし、また明日告白すればいいじゃん。まだ4日あるんだし」
それだけ言うと、田中はふらっとまたどこかへと行ってしまう。
俺はとりあえず気持ちを落ち着けて、教室へと向かった。
確かに今日ダメだっただけで、明日誘えばいいだけだし、告白の前にいい失敗が出来たと思えばいいんだ、うん。
と、自分に言い聞かせている途中で、ふと冴島が言った言葉を思い出す。
そう言えば呼ばれてるとか言ってたな……呼ばれてるって誰に? 先生? いやいや、朝からそんな事言う先生いないぞ。って事はまさか……
そしてあっという間に放課後となり、俺は直ぐに帰宅せずに冴島を探し始め、人が少ない校舎裏に向かう姿を目撃し近くの校舎の壁に隠れた。
そこには冴島以外にもう一人男子生徒が待っていたのだ。
そう、朝の俺の勘は当たっていたのだ。
告白だよな……はぁ~なんつうタイミングだよ。しかも相手は、冴島と同じ生徒会書記の真中じゃねぇか。
「冴島さん、今日は急に呼び出してごめん」
「うんん、大丈夫よ真中君。それで話って何?」
「あ、うん。その、今日冴島さんを呼び出し理由は、僕の気持ちを伝えたくて」
い、いいい、行くのか!? もう告白するのか? てか、こんな感じで告白すればいいんか!?
俺は壁に隠れながら人の告白を覗き見しながら、勝手にハラハラしていた。
「その、僕は貴方の事がす……好き、です! 付き合って下さい!」
言ったーー! 告白したーー! ど、どうするんだ冴島は……
俺は冴島の返答に固唾を呑んだ。
ここでもし、冴島がいいよっと言ったら俺が告白しても意味がなくなるし、俺の死がほぼ確定すると言う事が頭の中を駆け巡った。
そして遂に冴島が口を開いた。
「ありがとう真中君。すっごく嬉しいわ」
「じゃ、じゃぁ!」
「でも、ごめんなさい。貴方の気持ちに答える事は出来ないわ。本当にごめんなさい」
俺はその冴島の返答にほっとしていた。
でも、次の瞬間罪悪感が襲って来た。
人の告白を覗き見して、しかも相手が振られた事に安心している自分を思って、何て酷い奴なんだと思ったからだ。
「っ……そ、そっか。そうだよね。と言うか、そもそも冴島さんみたいに美人だと、それに似合う彼氏とかいるよね。あははは、何してるんだろ僕。察せよって感じだよね~」
え!? そうなの?
そう軽口を叩く真中の目は真っ赤になり、今にも泣きだしそうな顔をしていた。
「真中君、一つ訂正しておくけど私は彼氏はいないわよ」
「そうなの? じゃ、何でって僕が冴島さんには不釣り合いだからだよね。彼氏がどうこうとか関係ないよね」
「そうじゃないわ。真中君はいつも冷静で私達の手が届かない所を、先回りして動いてくれていて助かっているし、生徒会は君がいないと回ってないって会長が言う程信頼されてるんだよ。もちろん、私も頼りにしてる。だから、そんな自分を卑下する様な事は言わないで」
「冴島さん」
「私が告白を断った理由はね、もう将来を誓った相手がいるからよ」
えっ……?
俺はその言葉を聞き、耳を疑った。
「そ、それって結局は彼氏って事じゃないんですか?」
「う~ん、彼氏じゃないんだよね。詳しくは話せないんだけど、私にはその人がいるから付き合う事は出来ないの」
そこへ生徒会会長が偶然現れて、冴島は会長に寄って行き真中の為を思って冴島は告白を誤魔化していたが、真中は完全に沈んだ表情で会長へと近付いて行きあからさまなカラ元気で話し始める。
そして三人はその場から立ち去って行く。
俺はその場で見つからずにやり過ごしていたが、気持ちは真中と同じ様に落ち込んでいた。
……何だよそれ……こんなのもう告白しても意味ねぇじゃねかよ。
冴島は心に決めた人がいるから、告白は受けない。つまり、俺が告白してもフラれておしまい、人生も終了。
はぁ~あ、終わったわ……
その日の帰り道、俺は持っていた全財産をコンビニでお菓子やアイスなど大量に買って帰宅し、ただ無言で次々に食べ続けた。
田中はそんな俺の姿を見て、どうせ心でも読んだのかしらないが何も話し掛けて来る事はなかった。
そして次の日、更に次の日も学園に行ったが基本的には一人の時間をあえて体調が悪い雰囲気を醸し出し、冴島とも話さずにただ普通に一日を過ごし帰宅し部屋でうずくまっていた。
既に右手の甲の数字は2となっており、今日が終われば1へと変わり明日が人生最後の日なろうとしていた。
「……まだ16時か。早く帰って来たけど、何にもやる事ねぇな」
俺はバックを投げ捨て、ベットの隅で体育座りになりただただ時計を見つめ、時間が過ぎるのを見続けた。
あの日から俺の中にあった唯一の希望は完全に消え、何もやる気が起きなくなっていた。
どうせ告白した所で結果は分かってるし、わざわざ辛い思いを自分からしに行く意味はないと思ったからだ。
だったらこうして、残りの人生を好きに生きた方がいいと思い、好き勝手にしているのだ。
「まだ5分も経ってねぇのか……そう言えば、田中の奴あれから見てないな。でも、まぁいいか。こんな俺見ていても仕方ないしな」
と、ぼーっと時計を見つめていると突然部屋の扉が開く。
俺がゆっくりと扉へと視線を向けると、そこにいたのは詩帆であった。
「……何だ、うみか」
「何だじゃないよ。何してるの、ゆうちゃん!」
「何ってただぼーっとしてるだけだよ。残りの人生好き勝手にしてみようと思ってさ」
すると詩帆が俺の方へとやって来て、ベットにまで乗って来て突然俺の両頬を両手で挟んで来た。
「告白はどうしたの? そんな無気力になって! 死ぬつもりなの!」
「……告白はもう意味がねぇんだよ。しても結果は変わらねぇって分かったちまったんだよ。死にたくはねぇけど、もうしょうがないだ――」
「しょうがない? 何がしょうがないのよ! あんなに手伝わさせておいて、意味がない? 結果は変わらない? でも死にたくない? 何言ってるのよ!」
珍しく詩帆が声を荒げている事に、俺は目を丸くしてしまう。
「な、何怒ってるんだよ」
「怒る? ううん、そうね怒ってるよ! 今までの時間は何だったの? あれだけやって、ゆうちゃんもウキウキで冴島さんとの仲深めてさ! 今更怖くなったから、何もしないって聞いたら怒るわよ! 私が馬鹿みたいじゃん! ゆうちゃんに死んで欲しくないから手伝ったのに! あれもこれもあの日も!」
「それは、悪いと思う……けど、うみには分からないだろ、相手に好きな人がいや、告白しても断られると知ってしまった気持ち――」
「分かるよ!」
「えっ」
「分かるに決まってんじゃん……辛いし苦しいし、どうしていいか分からない。忘れたくても忘れられない。気持ちも伝えられない自分のもどかしさ。全部分かるよ……」
そう言って詩帆は俺から手を離し、俺へともたれ掛かって来た。
俺は咄嗟に詩帆の両肩を掴み、倒れない様に支えた。
「おい、うみ?」
「好きになっちゃったんだから、もうどうしようもないじゃん……」
「何て言ったんだ?」
すると詩帆は急に俺から離れて、指を差して来た。
「相手に好きな人がいるから何? 別に告白しちゃいけないわけじゃないでしょ! 断られる? そんなのしないとどうなるかなんて分からないでしょ!」
「いや、好きな人って言うか将来を誓った人がいるから、告白は受けないって言ってんだぞ」
「そんなの今日はどうだか分からないでしょ。昨日それが解消されてるかもしれないし、必ずは絶対にないんだよ!」
「さすがにそれは……」
「うだうだ言ってないで、男の子だったら行動する! 当たって砕けろだよ!」
「砕けたらマズいんだって!」
「ゆうちゃんは、これまで砕ける為に冴島さんとの仲を深めたの? 違うでしょ。さっきのは言葉の綾。このまま死を受け入れるんじゃなくて、どうせ死ぬなら男の子らしく潔く死ねって事!」
「……ぷ。あはははは! 潔く死ねって凄い事言うな、うみ」
と、俺が笑いながら詩帆に話すと、詩帆も改めて自分が言った事が恥ずかしくなったのか顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。
「ゆうちゃんが悪いんじゃん……」
それを聞き、俺は詩帆が俺を励ましに来てくれたのだとやっと理解する。
俺はベットから出て詩帆の前に立つ。
そして頭を下げる。
「ありがとう、詩帆。お前のお陰で目が覚めたわ。今更ウジウジしてても仕方ないよな」
「っ……」
「俺、今から当たって来るわ」
そう俺が笑顔で詩帆に言うと、詩帆は一瞬何か堪えた表情をしたが直ぐに笑顔に変わり、俺の背中を軽く叩いて来た。
「それでこそ男の子だよ!」
くよくよしてる所を女子に励まされて、復活して告りに行くのが男の子って言えるのか?
と、俺はそんなどうでもいい事が気になっていたが、そんな事を考えられるほど気持ちが分かりやすく切り替わっていると実感していた。
「行って来い、小鳥遊祐樹! もし砕けたら、私がギュッとしてあげるよ! それとも、今ギュッとしていく?」
「妹に慰められるとか、カッコ悪い兄貴だな。バシッと決めて来るからハグはなしで。もし成功したら、好きなもん何でも奢ってやるよ!」
俺はそう言い勢いよく部屋を飛び出した。
まだこの時間なら冴島は学園にいるはず! 走ればちょうど下校する直前には会えるはず!
俺は全速力で走り、学園を目指した。
詩帆の言う通りだ。相手に好きな人がいるからなんだってんだ! この気持ちをぶけないまま死んでいいのか俺! いや、そんなのダメだろ! 手伝ってもらった詩帆にも田中にも失礼だ! そもそも、俺がやるって決めたんだろうが! だったら最後までやりきれよ、俺! 結果がどうなるかなんて、動かないと分からないだろうがー!
そのまま息が切れようと、足を止めずにがむしゃらに走り続けた。
一方で部屋に残った詩帆は、俺が部屋から出て行ってからゆっくりとその場に崩れ落ちていた。
そして近くの棚に寄りかかると、スーッと涙を流し始めた。
「とことん私って意気地なしだね……何で元気づけたのかな? 好きだって言えば、ゆうちゃんも答えくれたかもしれないじゃん。なのに、どうして送り出す様な事したかな、私は……」
その後詩帆は、声を殺すように泣き始めるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「さようなら、冴島さん」
「はい、さようなら」
と、冴島が学園の正門前で生徒に声を掛けられて自身も帰ろうとした時に、俺は学園に辿り着き冴島に声を掛けた。
「さ……さえ、うぇ……はぁー、はぁー、冴島、さん!」
「え、小鳥遊君!? どうしたの、そんなに息を切らして」
冴島は物凄く汗を流し、息が上がった俺を見て心配してくれたのか、直ぐに駆け寄って来た。
「冴島さんに、用があって、来たんだけど、今、大丈夫?」
「私? だ、大丈夫だけど……そんなに急いで来るまでの用事って何?」
俺はそこで大きくゆっくり深呼吸をして息を整えた。
「俺の今後に関わる事」
「?」
その後俺は、冴島と共に近くにある公園へと移動した。
公園には大きな桜の木が経っており、もう5月であったがまだギリギリ桜が咲いていた。
また時刻も18時目前で、子供達もおらず公園には俺と冴島だけであった。
「それで、小鳥遊君の今後に関わる事で私を呼び出した理由って何?」
「え、あ~それは」
まただー! またやってしまった! だけど、勢いでやってしまったが告白する為に来たんだから、今更ひよるな俺!
俺は小さく咳払いしてから、懐かしのかブランコに触っている冴島に声を掛けた。
「冴島に、大切な話があってさ」
「大切な話? ……分かった」
そう言うと、冴島は何か俺の雰囲気を察したのか桜の木の近くに立っている、俺の方へと戻って来てくれた。
その時点で俺の心臓は物凄い速さで鼓動していて、今にも口から出てきそうな気持であった。
落ち着け、落ち着け! もう後は言うだけだ。変に間を空けずに言うんだ、俺。
冴島は俺の真正面に立ち、ただ何も言わずに俺の方をじっと見ていた。
俺は小さく息を吸って口を開いた。
「俺は冴島麗奈に高校入学当初から一目ぼれしてました。お付き合いしてもらえませんか?」
拙く言葉足らずで、ロマンチックもカッコよさも何もない告白だと分かりつつも、俺は目を瞑って冴島に右手を差し伸べた。
その時完全に俺の頭の中は真っ白であり、自然と出て来た事を口にしていただけだった。
冴島の表情は見えないが、たぶん困っている表情いやまたかと言う呆れた表情でもしてるんだろうなと俺は思っていた。
何故なら、既に冴島には将来を誓った相手がいるのだから、わざわざ相手を傷つけない様に断らなければいけないと思っているに違いない。
だけど俺にそんな必要はないんだよ冴島。
俺はそれを分かった上で告白してるんだ! だから、ばっさりと言ってくれ!
俺は目を更に強く瞑り、冴島からの分かりきった答えを待った。
すると冴島が微かに息を吸う感じが分かり、返事が来ると分かった次の瞬間だった。
「こんな私でよければ、よろしくお願いします」
と、冴島が俺の突きだした右手を握り返していたのだった。
「そ、そうだよな。やっぱりむ――って、えっ! ええ!? ええーー!!」
俺は何度も握り返された手と冴島を交互に見返した。
「どうしてそんなに驚いてるのよ、小鳥遊君」
そう言って冴島は小さく笑っていた。
「いや、だって、え、えぇ本当に!? 夢? 夢だったりするのか?」
「夢じゃないよ。何言ってるのよ小鳥遊君」
テンパる俺の姿を見て、冴島は手を離して笑いを堪えきれずに笑い出す。
夢じゃない、現実か……告白成功したんだ! はっ、そう言えば右手の数字。
そう思い出し俺はすぐさま、右手の甲を見ると数字が徐々に消え始めているのが確認出来、完全に消え去ったのだった。
消えたって事は、死なない、試練ってやつを乗り越えたって事か!
「やった……やったーー!」
「ビックリした、急に大声出すから。でも、そんなに嬉しかったの?」
「そりゃ嬉しいに決まってるだろ! あの冴島に告白して、オッケーしてもらったんだぞ? しかも片想いしてた相手に。こんな最高な出来事があって喜ばない奴はいないって!」
「そ、そう……」
冴島は少し恥ずかしそうに答えて、俺はそんな姿も可愛いな~と見惚れてしまう。
が、そこで俺は将来を誓った相手の事を思い出し、それを冴島に訊ねた。
「何でそんな事知っているの?」
「い、いや~何か噂であってさ。だから、俺は断れるんじゃないかと思いつつ告白したんだよね」
「そうだったんだ」
「……もしかして、それって俺だったり」
「それ、嘘だよ」
「え、嘘?」
「うん。だってそう言った方が、また告白してこないでしょ。そう何度も告白されても気持ちは変わらないし、断る方も気持ち的に辛いからつい、ね」
「なるほど。でも、どうして俺の告白はオッケーしてくれたんだ?」
すると冴島は俺にぐいっと近付いて来た。
「それ、彼女になった相手に向かっていきなり聞く?」
「彼女……いや、気になってさ。今までどんな人からの告白も断って来た、学園の高嶺の花だった冴島が俺を選んでくれたのかなって」
直後冴島は、いきなりそっぽを向いてしまう。
「? 冴島?」
「……」
「お~い冴島? どうしたんだよ、急にそっぽ向いて」
「……彼女になったのに冴島ってどうなの? 他人行儀ぽい。海原さんの事は、詩帆とか呼んだりするくせに」
な、何でそれを……確かにたまに本当にたま~にだけど、詩帆って呼んじまうけど人前では気を付けてるからバレてないと思ったんだけど。
て言うか、もしかしなくて拗ねてたりするのか? 俺が名前で呼んでないから?
と考えたら、とてつもなく目の前の冴島が可愛く思えてしまい、胸がキュッとなる。
「悪かったよ冴、じゃなくて……れ、麗奈……」
俺は今まで詩帆以外の女子を名前で呼んだ事がなかったので、名前を口にした事がとてつもなく恥ずかしくボソッと言ってしまった。
「う~ん聞こえなかったな~」
麗奈には聞こえているはずだったが、とぼけた様な顔で俺に再要求して来た。
「っっ……だ、だから! 悪かったって……麗奈」
「及第点で許してあげましょう。祐樹君」
突然の名前呼びに俺は驚き、顔が赤くなってしまう。
そんな俺を見て麗奈は無邪気な顔で「恥ずかしがるなんて可愛いな~」と言って来て、俺は手で顔を覆った。
その後麗奈にいじられたり、俺がいじり返したりと他人が見たらいちゃついてると思われる様な雰囲気を過ごした。
「そろそろ暗くなって来たし、帰ろっか」
「そうだな。遅くなったら両親も心配するだろうしな」
「へぇ~祐樹君って結構真面目だね~」
麗奈は俺を覗き込む様な体勢で話し掛けて来た。
その時、麗奈はワイシャツの第一ボタンを外していた為、鎖骨辺りを見えてしまい俺はそこに目が行ってしまう。
「ど、どう言う意味だよ」
「も~分かってる癖に、女子にそう言う事言わせようとするんだ」
「いやいや、本当に分からないから……」
「本当かな~……で、さっきから祐樹君はどうして少し視線が下なのかな?」
「えっ!? いや、ななな、何でもないぞ! 別に何も見てないぞ!」
俺が慌てて言い訳をしている途中で、麗奈が鎖骨辺りが露わになっている事にそこで気付き、すぐさま両手で隠して背を向けた。
「……見た?」
「え……何にも」
「本当に?」
「うん……いや、本当はちょっとだけ見てました。すいませんでした!」
正直に白状し俺は麗奈に頭を下げる。
「……他には?」
「他? いやいや、ちょっと鎖骨辺りを見ちゃった以外は何もないぞ! これは本当に!」
すると麗奈は小さく安堵の息をすると、ワイシャツの第一ボタンをリボンで隠した状態で俺の方を向いて来た。
その後麗奈は謝っている姿勢の俺を下から上に見上げて来て口を開いた。
「今回は特別に許してあげる。私も悪かったし……そ、その……そう言うのはもう少し仲を深めてから、ね」
麗奈のその発言に俺は何も言えず、ただ一度頷くだけしか出来なかった。
そして暫く沈黙の時間が続いた後に麗奈はバックを手に取った。
「それじゃ、また明日ね。祐樹君」
「あ、あぁ。また明日な、麗奈」
そうして麗奈は少し早歩きで公園から出て行き、俺は暫くほおけた顔をした後、改めてあの冴島麗奈が彼女になってくれた事を実感し喜びの声を出した。
「よぉぉっしゃぁぁーー! あっ、さすがに近所迷惑だ。喜ぶのは帰ってからにするか。……うふふふふ」
俺は喜びが隠しきれず帰り道で、気持ち悪い笑い声を出していた。
すれ違う人に異様な視線を向けられたが、俺はその時そんな事など気にせずに歩き続け、自宅へと辿り着き家の中で大声をだして喜んだ。
「よしゃ! よしゃ! よしゃ! よっしゃぁぁー!」
「さっきからうるさいぞ、たかちゃん」
「おー田中! 聞いてくれよ、冴島麗奈が俺の彼女になってくれたんだよ! 告白上手く行ったんだよ! ほら見ろ、右手の甲の数字も消えてるし、凄くないか?」
と、俺はテンション高く田中に言い寄るが、田中は普通のテンションで「よかったな~」と言うだけであった。
「おいおい、俺が試練をクリアして死の運命を打ち破ったんだぞ。もう少し喜んでくれてもいいだろ」
「たかちゃん、わっちは別に喜んでないわけじゃないよ。人が試練を乗り越えるのは当たり前の事だし、わっちは今までにも乗り越えた奴は見て来てるから、普通なだけ」
「何か嫌な言い方だな。でもまぁいいや、お前のお陰で試練を超える為に協力して貰ったし、彼女も出来た訳だし。ありがとうな、田中」
すると田中は急に動きを止めて、視線を逸らし始める。
「べ、別に感謝される様な事なんてそんなにしてないけど。そこまで言うなら、ありがたく受け取っておこうかな~」
「何だよその態度? やっぱりお前は体型通り、まだお子ちゃまだな」
「誰がお子ちゃまだ! わっちはお前よりは大人だぞ! 天使だしな」
「そもそも天使って何歳なんだよ?」
「年齢は知らないけど、たかちゃんよりは長生きなんだ! それは絶対なんだ!」
「はいはい、分かった分かった。ほら、お祝いにアイス買ってきたし食おうぜ」
「アイスー!」
アイスで食い付くとか、やっぱりお子ちゃまだな。
「だからお子ちゃまじゃないって!」
「だから心を読むなっての。で、何がいいだ?」
「え~とね、わっちはね」
その後俺は、田中と共にリビングでゆったりとテレビを見ながら買って来たアイスを食べたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ふ~スッキリした……はぁ~」
私はお風呂を上がり、自室へと戻って来て小さくため息をついた。
そして窓へと近付き幼馴染であり近所の小鳥遊祐樹の家を見つめる。
「まだ電気付いてない、か……」
その後私はカーテンを閉めて、ベットへと座り携帯を手に取る。
画面には友達からの連絡が入っていたので、それに対して返事をした後直ぐに携帯を元の置いていた場所へと戻す。
が、また直ぐに返信が帰って来た音が聞こえる。
それに私は小さくため息をつき、携帯を手に取って電源を落とす。
そして電源が落ちた携帯の真っ黒い画面に、自分の顔が映る。
「ごめん。今日だけは許して」
そう呟いて、携帯をベット近くの机に携帯を置く。
そのままベットの上に置いていた大きいクッションを手に取り、そこへ顔をうずくめた。
「っっ~~!」
「何やってるの、うみちゃん」
と、私の後ろのぬいぐるみ置き場から名前を呼ばれ、私は顔を上げて答えた。
「私って情けないな~って……」
「告白出来なかったから?」
「それもそうだけど、何て言うか全体的に」
「はぁ~うみちゃんはあとひと押しが足りないんだよね」
そこで私は振り返り、真後ろに置いているぬいぐるみを手に取って揺らす。
「そんなこと言ったて、まさかゆうちゃんにタイムリミットが出るなんて聞いてないよ! 知ってたなら教えてよ、佐藤さん!」
「ゆら、揺らさないで、うみちゃん。酔うから」
私はそう言われて手に取った可愛いくデフォルメされた龍のぬいぐるみを揺らすのを止めた。
すると、ぬいぐるみの龍は勝手に動き始める。
「いくら天使だって言っても、僕だって知らない事もあるんだよ、うみちゃん」
「……ごめん、佐藤さん。でも、ゆうちゃんの所にも田中さんって言う天使がいたけど、知り合いじゃないの?」
「もちろん知ってるよ。でも田中は、僕達の中じゃ一番の落ちこぼれで有名だからね。まぁ、そのお陰でうみちゃんが同じリミット持ちだとバレなかったんだから良かったじゃん」
「そ、そうだけど」
その時だった、祐樹の家から何か騒いでいる様な声が聞こえて来た。
「ん? ゆうちゃんが騒いでる感じからすると、告白は成功したみたいだね」
「はぁ~……やっぱりか」
「でも、これでゆうちゃんが死ぬことはなくなかったし、これから冴島って言う彼女から奪えば問題ないよ。まだうみちゃんのリミットはあるんだし、大丈夫大丈夫」
「リミットね……」
私はクッションをどけて立ち上がり鏡の前に立つと、龍のぬいぐるみである佐藤はフワフワと浮き上がり付いて来る。
そして私は鏡の魔でパジャマの上着のボタンを外して、軽く前を開ける。
そのまま私は左胸にローマ数字で刻まれたタイムリミットを見つめる。
「後6年もあるんだし、心配ないようみちゃん。3年以内に小鳥遊祐樹と恋人関係になり、5年以内に同棲をし、7年以内に結婚する。ゆうちゃんの試練期間に比べれば、まだマシでしょ?」
「そうだけど、私もこの試練を超えられないと死んじゃうんだよね?」
「うん、そこはゆうちゃんのと一緒さ。でも大丈夫、僕がうみちゃんにはついてる。ゆうちゃんについてる田中何かより、優秀な僕が」
「でもゆうちゃんは、冴島さん大好きでしかも彼女に……」
私は自分でそれを口にだして辛い気持ちになってしまい、口を止めてしまうと佐藤が慰める様に話し出した。
「うみちゃんはゆうちゃんに、名前で呼ばれる事が時点で異性としては見られてるんだから、そこは自信持たなきゃ! そして彼女がいようが、引かずにアタックだよ」
「え、でも、さすがにそれは」
「何言ってるの? 学園内ではうみちゃんの方が有利でしょ。幼馴染だし、一部の人から彼女と思われたりしてるしさ。それを活かして行くんだよ。相手はまだ恋人関係だって言うのを知られてないし、噂が広まる前に傍に居続けるんだよ」
「そそそ、そんなの私には出来ないよ。逆にゆうちゃんに嫌がられて、嫌われたらどうするのさ」
「大丈夫。それともうみちゃんは、諦めるの? 好きな人に振り向かれないまま、奪われたままでいいの?」
「それは……」
私はチラッと机の上に置いてある写真立てを見る。
そこには小学校の頃に撮ってもらった、ゆうちゃんとのツーショット写真が入っている。
私はもうあの頃からゆうちゃんの事が好きだった。
でも、勇気がでなくて告白出来ないままこうやってズルズルと兄妹の様な関係で来てしまった。
そして遂には、ゆうちゃんに彼女が出来てしまう日が来てしまう。
しかも私が手助けをしてと言う状況でだ。
「諦められる訳ない! 私だってゆうちゃんが好き! 冴島さんより私の方が絶対にゆうちゃんを知ってるし、好きな気持ちは上!」
「それでこそ、うみちゃん! その調子だよ」
「絶対にゆうちゃんは渡さない! ゆうちゃんを私に惚れさせてやる! ……っっ~~私、物凄い恥ずかしい事を言った~……」
そのまま私は両手で顔を覆って鏡の前でしゃがみ込み、悶えた。
佐藤はそれを見て小さくため息をつく。
「(やっぱりそう言う所が、あとひと押しなんだよね~うみちゃん。でも、僕がそこを補うから大丈夫。さぁ、これから逆襲開始だよ)」
その後私は落ち着いてから、佐藤と共に今後の作戦を話し始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ただいま~」
私が玄関を開けそう声を出すと、リビングの方から母親の声が聞こえて来た。
「おかえり~麗奈。今日は遅かったのね」
「うん。ちょっと生徒会の仕事があってね」
「そうだったの。あ、お風呂沸いてるから、先に入っちゃっていいわよ~」
「は~い」
そう返事をした後、私は自室へと入り扉を閉める。
バックを置き、部屋着に着替える為に制服を脱ぎ始める。
そしてリボンを外し、ワイシャツを脱いでふと鏡の方を向く。
「……私のには、変化が起こる事はないのね」
そう呟き、私は右鎖骨に刻まれた漢数字のタイムリミットを軽く撫でる。
「そりゃそうさ」
その言葉に鏡の上に停まっていた小鳥に目を向けた。
「鈴木、居たの?」
「ひっどい言い方だな~居るに決まってるだろ。俺はお前の見届け人、いや見届け天使なんだからよ」
「うち動物禁止だから、その姿見られる前に辞めてもらえる」
「冷たいな、麗奈は」
そうボヤキながら鈴木は小鳥の姿から、小柄な男子の姿へと変わり宙に浮く。
私はその間に部屋着へと着替え終わる。
「にしても、良かったな小鳥遊に告白してもらえてよ。計画より随分早い展開なんじゃないのか?」
「何とぼけた事言ってるの? 彼にタイムリミットが刻まれてると知って、私は驚いたんだからね。しかも今月末までってどう言う事よ?」
「ま~たその話かよ。まぁ俺から振った話だし仕方ねぇか。前にも言ったが、小鳥遊にタイムリミットが出現したのは偶然だし、俺は知らなかったんだよ。それにあの田中が来てる事もな」
「田中? あ~祐樹君の周りを飛んでた小柄な女の子の事ね」
私はそこで椅子へと腰を掛ける。
「まぁ、小鳥遊のタイムリミットは少ないのは出来損ない田中のせいもあるが、試練がそんなに難しくなかったのも影響してるだろうな」
「そうね。貴方が調べてくれて、彼女を作る事を知れたのは大きかったわ。それに彼から私に行動してくれたお陰で、私もルールを破らない程度に攻められたし」
「お前の試練は、7年以内に小鳥遊祐樹から告白され、キスをし、体を重ね合わせ愛を確かめる事で、しかもルール付き」
「私から彼に接触し行動を起こさせる事と過去の話をする事が禁止。これがあって、去年は何事もなく終わって今年もきついかと思っていたけど、ある意味怪我の功名と言えるのかもしれないわ」
「タイムリミットはあと6年もある。しかも既に大きな関門だった告白もしてもらって恋人関係になった。そうなれば、後は楽勝じゃねぇか」
その時扉がノックされると開けて来たのは、母親であった。
鈴木は瞬時にノートへと変わり、私の目の前の机へに落ちて来た。
「麗奈って、ごめんね。勉強中だったのね」
「うんん、大丈夫。どうしたのお母さん?」
「あ、そうそう。シャンプー切れてるかもしれないから、入る前に確認してねって言いに来たの」
「分かった。入る前に見ておくよ」
「ごめんね」
それだけ言うと、母親は部屋から出て行った。
私と鈴木は小さくため息をつく。
「あっぶね~お前の母ちゃんいつもいきなり来るから怖えんだよな」
「バレてはないし、大丈夫よ。それより話を戻すけど、この前学園で貴方に似たような存在を見たんだけど。しかも田中? って言う存在じゃなくて」
「あ~それはたぶん佐藤だ。ほら、もう1人のタイムリミットが刻まれてる奴の見届け天使だよ」
「海原さんね」
「そうそう、そいつ。佐藤は優秀だったが、爪が甘い所があるんだよ。だから、麗奈にも見られるし俺にもバレる」
鈴木はノートの状態で、話すと同時に文字や絵をノートに器用に描きだす。
「それで彼女の試練は分かったの?」
「いや、さすがに田中みたいにがばじゃなかったから、まだ分からんな。でも、小鳥遊関連の試練が出てるのは間違いないはずだ。お前もあいつも小鳥遊とは幼馴染だしな。っても、小鳥遊はお前の事は覚えてないみたいだけど」
「当然でしょ。小学校の時から名字も性格も変わったんだから」
そう、私冴島麗奈は小学生の時に小鳥遊祐樹、更には海原詩帆と同級生であった。
そして私は彼に恋をしていた。
だが、あの頃の私は暗く自分に自信も持てなかったから、ほとんど祐樹君と話す事もなかった。
でも祐樹君は、そんな私にも話し掛けて来てくれて楽しく笑ってくれたりしたのだ。
そんな彼を私は自然と目で追いかけており、好きになっていたのだ。
しかし、いつしか彼の隣には転校して来た彼女が立っていた。
そう、海原さんだ。
彼女は容姿も私より良く、はきはきと話し次第にクラスの中心へとなって行き、私とは真反対の人になり祐樹君の傍に居続けた。
そこで私は察してしまったのだ。彼に相応しいのは私みたいな奴じゃなく、彼女なんだと。
そして私は一度彼の事を諦めたのだ。
その後は家庭環境の事もあり、一度はこの地域を離れ別の中学校へと進学した。
いい機会なので髪型も換え雰囲気を変えようと努力し、勉学も頑張った事で中学生活は華やかになり今の様な生活に変わった。
そんなある日に鈴木と出会い、タイムリミットを刻まれ最初は動揺したが、そこから今の私を改めて見て、あの頃の気持ちが蘇り祐樹君と同じ高校へと入学したのだ。
「にしても、他の天使は人を操れたりするの? 以前海原さんの天使は人を操って、彼女に向かって水を掛けていたけど」
「あ~それはたぶん、あいつなりの手助けってやつだろ。天使にも出来る事と出来ない事はあるし、それは各個体ごとに違うんだよ」
「ふ~ん、手助けなんてしてくれるのね。まぁ、私もあんな事をして欲しい訳じゃないけど、貴方は私の手助けなんて一度たりともしてないわよね?」
すると鈴木はノートの姿からリスの小さいぬいぐるみへと変わった。
「そりゃ、お前が自分で何でも乗り越えて行くから、手助けなんて必要ないと思ってるからさ。でも、調べたりとかはしてやってるだろ?」
「確かにそうね。そう言うのもある意味手助けと言えるわね。さっきのは撤回するわ」
「俺、お前のそう言う所好きだぜ~」
「それはどうも。それじゃ、海原さんの試練内容は継続してなるべく早く調べて来てよね」
「はいはい、分かってますよ~。でも、そんなにあいつを警戒する必要があるのか? 今じゃもう、お前の方があいつより上だろ」
「いいえ、彼女は絶対に動くわ。同じタイムリミット所持者なのだから必ずよ」
私は立ち上がり、机の上に置いていた昔の写真を見つめる。
写真には小鳥遊祐樹と海原詩帆などの数人が正面に映っており、その間から偶然自分が映っている写真であった。
「この先、彼女が計画の邪魔になるのは明白。ライバルを楽に並ばせる訳にはいかないの。やっと実った恋を、そう簡単に奪わせはしない。明日から早速先手を打つわ」
「おぉ~女の戦いは怖いね~」
「恋愛は戦いなのよ。そして彼女は強力なライバル、勝たなければ私に待っているのは死あるのみ。分かるでしょ?」
「なるほどね~」
「それじゃ私はお風呂に行くから、貴方はバレない様にしてなさいね」
鈴木はリスのぬいぐるみのまま「へ~い」と返事をしたので、私は下着とタオルを持って、部屋から出て行った。
私が部屋から出て行った後、鈴木は小柄な男の子の姿に戻ると、机に胡坐をかいた状態で小さく笑う。
「いや~最高に面白い奴の見届けになれてラッキーだわ。さ~てこっからどんな展開が待ってるのか、滅茶苦茶楽しみだわ~」
その後楽しそうに笑った後、浮き上がり「さ~てと俺も仕事するかな~」と言って部屋の壁をすり抜けてどこかへと消えて行くのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「で、お前いつまでうちにいるの? あのタイムリミットも消えたし、お前の役目終わったんだろ?」
「ん? あ~確かにね~。でも、わっちにはまだ帰還命令が出てないから、暫くこっちにいるよ」
と、田中は俺の本棚から漫画本を取り出し読みながら答える。
「もしかして、うちに居る気か?」
「そのつもりだけど?」
「何、当然ですけど? 的なノリで答えてるんだよ。俺の試練を見届けたんだから、別の奴の所に行けよ。居るか知らねぇけど。お前が居たらプライベートもねぇだろうが」
「大丈夫大丈夫。わっちは屋根裏にでもいるから、気にするな~。それに、たかちゃんとうみちゃん以外には見えないから心配するな~」
な~に悠長な事を言ってるんだ、こいつは。
「悠長じゃないぞ。もしかしたら、またお前に田中リミットが出るかもしれないだろ?」
「また心読んで。てか、田中リミットって何だよ? 右手の甲に出てた数字の事を言ってるのか?」
「そうそう。だって、それ作ったのわっちだし。もしまた刻まれたら、見届ける奴がいないと困るし、わっちの職務放棄になりかねないからな~」
「つうか、またあんなの出るのかよ!? もう俺はやったんだし、そう言うのって出ないだろ一般的に」
「一般的にと言われても、人生の試練が一度きりで終わる訳ないだろ」
田中に正論を返されて、俺は反論出来なかった。
すると田中は漫画を読むのを止めて、俺の方に視線を向けて来る。
「とは言っても、ほとんど二度目の田中リミットが出る事なんてなんだけどね」
俺は軽く肩を落とす。
「おい、脅しかよ。やめろよな、もう死ぬ運命と向き合うのはこりごりなんだからよ」
「もしまた出たら手助けしてあげるから、心配すんなよたかちゃん」
「いやもう、こりごりだっての、あんなタイムリミットなんて」
この時の俺は彼女が出来た事に浮かれてるだけで、まだ知らなかった。
彼女となった麗奈や幼馴染で妹の様な存在の詩帆にも、同じタイムリミットが刻まれている事。
これから再び俺にタイムリミットが刻まれてしまう事。
そして、俺の決断でどちらかの運命を決めなければいけなくなる事を。
知っていたら何かが変わっただろうか? いや、知ってしまったらただ辛くなるだけだったし、知らなくて良かった事なのだろう。
この日から俺と麗奈と詩帆の運命のタイムリミットは、大きく加速し始めたのかもしれない。
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