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073話:報酬とダンジョンの真実

 ステラとフィラスは俺が腕を失ったことに涙を流してくれた。フィラスが治癒魔法を必死にかけてくれたが、火傷の痕は消えなかった。普通の火傷なら治癒魔法をかければ治るのでこの魔法は特別なのかもしれない。


 戦闘が終わり地面へと座って休憩しているとすぐ近くに神々しい光を放つ扉が出現した。その扉からは金髪で緑色の目をした可愛らしい10歳ぐらいの女の子が出てきた。


「どうも、こんにちわ!えっと、このダンジョンのダンジョンマスターをしているルーチェって言います!ダンジョンの攻略おめでとうございます」


「「「「え?」」」」


「あ、あのなんて言うか攻略たち成の報酬をあげるんで着いてきてください」


 外へのポータルが出現しなかった以上ついて行くしかない俺たちは、ダンジョンマスターを名乗る少女に連れられて扉の中に足を進めた。驚いたことに扉の中には草木が生い茂り、鳥の歌声が響いていた。


「ここは?」


 フィラスが少女に尋ねた。


「ここは精霊の都、たくさんの精霊が楽しく暮らしていた《←ポイント》場所だよ」


「暮らしていた?」


「まあ、色々あってみんなここに帰って来られないんだ。それは後で話すよ」


 少女は歩みを進めた。やがて天まで届くほどの高さの木の元に到着した。


「ここに座って」


 言われるとおりにその場にあった椅子に座らせてもらう。


「改めて、光雷の迷宮の攻略本当におめでとう。報酬としてはいくつかの魔法具をあげようかと思っているんだ。他に要望があればそっちでもいいよ?」


「はい!ソニアの傷を治してあげて下さい!」


 俺以外の全員が賛成した。それを見て、俺はなにも言うことが出来なかった。ただありがとうという気持ちが溢れてきた。


「そんなことでいいの?」


 ルーチェは一応確認を取った。


「わかった、すぐに元通りにしてあげる。光の精霊ルーチェが命ずる《癒せ》」


 たったそれだけで俺の失われた腕に光が集まり、気がつくとそこには自由に動く自分の腕があった。自然と頬が緩み、いつの間にか俺は笑みを浮かべていた。


「やっぱり私のソニアはこうじゃないとね」


「いつお前のになったんだよ」


「そ、それは……」


 ステラとそんな問答を繰り返していると横槍が入る。


「イチャイチャしているところ悪いんだけど真面目な話があるの。私が、いや私たち精霊がどうしてダンジョンを作ったか、それを説明させて。私にとってなによりも大切なことなの」


 ステラから精霊少女に視線を移すとそこには真剣な顔をしたルーチェと呼ばれる大精霊がいた。『格』の違う、上に立つ者だけが持つ圧に押しつぶされそうになる


「ようやく私の話を聞いてくれるみたいね。なぜ、聖剣とか呪剣はあれだけの強さを秘めていると思う?」


「精霊か?」


 やっとのことで質問に答える。


「察しがいいじゃない、ソニアくん。聖剣や呪剣には私の可愛い精霊たちが閉じ込められているんだ」


「でも、どうして……」


 ステラが口を開く。


「質問に質問で返すようで悪いんだけど、創造神サザンカって言ってわかる?」


「人族が崇めている神のことね?」


 今度はフィラスが答えた。


「大正解!あいつね、酷いんだよ!」


 可愛らしい姿でどうにか笑顔を振りまいているが、その姿にはどこか悲しそうだった。


「あいつはね私みたいな大精霊って呼ばれる存在とティーンみたいな上位精霊って呼ばれる存在を地下深くに閉じ込めた。その後、魔法の武具だと言って精霊たちを封じ込めた剣や鎧を人族に与えたんだ」


 怒りが、憎しみがそのまま伝わって来るような気がした。


「だから私たちはダンジョンを作った。魔物が住み着くスペースを用意して、魔石を求めて人が集まるようにした。人や魔物がダンジョンで死んだ時魔石以外を残さずにダンジョンに吸収されるようにしたのは、聖剣や呪剣を回収して精霊たちを助け出す為なの」


 ダンジョンが生み出された理由にみんな驚きを隠せていない。そんなことを言われても俺たちになにが出来ると言うのだろう。


「別になにかを強要したいわけじゃない。でも、もし聖剣や呪剣って呼ばれるものを見つけたら私のところに連れてきて欲しい。剣の中で私の家族が泣いて、苦しんで、悪夢のような世界に閉じ込められているんだ。だから、お願い!」


 顔をぐちゃぐちゃにして、涙を流して彼女は俺たちに頼み込んだ。


「我輩からもぜひ頼めないだろうか」


 後ろからの声がしたので振り向くとそこにはティーンがいた。


「寂しくて、皆がいないというだけで胸が張り裂けるような思いなのだ。いくら嘆いたって、いくら叫んだって我輩もルーチェ様も地上には出られない。


 ルーチェ様はダンジョンは皆を助け出すために作り上げたとおっしゃっただろう?だがな、始めはただの穴だった。地上に出て皆を自分自身の力で助け出そうと必死に女神の障壁を突破して穴を掘り、地上に繋いだ。それがこの迷宮の元々の形だ。


 太陽が見えた時のあの喜びは忘れられない!だがな!地上に出られない呪いをかけられていたことに気がついた時に、ルーチェ様があげた叫び声も我輩は忘れることが出来ない!」


 ティーンも泣いていた。泣けども、泣けども涙流れぬ体で、その心だけが泣いていた。


「俺たちに出来ることはなんだ」


 俺たちは彼らを助けたいと思った。


 ◇◇◇


 ルーチェが光雷の迷宮の入口まで転移させてくれることになった。迷宮内で使えばこの精霊の都まで転移できるという転移石も貰ってその場を後にしようとした時ティーンに声をかけられた。


「危うく忘れるところだったが、ほれ」


 ティーンが何故か俺の頭を撫でた。


 《精霊の加護を受けました》


「その顔を見るとどうやら成功したようだな」


「なにか聞こえてきたんだがなにをしたんだ?」


「なに、大したことではない。ダンジョン内でスキルを入手した際にアナウンスが流れるようにしてみたのだ。自分の成長をすぐにわかるならやる気が出てくるだろう?より挑戦者が集まるだろうよ」


 ステータスを確認すると確かに称号の部分に精霊の加護が追加されていた。確かにスキルの入手に気が付けるというのはいいのかもしれない。


「ほら、早く行け」


 既にステラたちは転移魔方陣を通り入口へと戻った。


「また会おう!」


 後ろで手を振るティーンの姿を一目見たあと、俺は転移魔方陣へと足を運んだ。


昨日、短編を三本投稿しました。


下のリンク『ラズライト 短編集』から見れるので気が向いたら見てください。

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