068話:恥ずかしがりや
第九層までの攻略を終えて、目の前にある扉の先にいるボスを討伐すれば十層も攻略完了だ。
「さあ、行くわよ!」
ステラが元気よく扉を開ける。とてもじゃないがボス戦に挑む姿勢ではない。ため息をつきながらボス部屋に入った。
ボスの名前は光の従者。近距離では槍による攻撃のみ、遠距離では光魔法でしか攻撃して来ない。言い方が悪いが雑魚だ。唯一の強みは光魔法によって生み出された魔物のため魔力が切れるまで手足を斬り落とそうと再生するところだろう。
ボスの解説が終わったところで戦闘開始だ。
俺とマリーが近接、ステラとフィラスは魔法での遠距離からの攻撃を行う。俺が右腕を斬り落とし、武器を奪う。マリーが左足を斬り、体勢を崩す。そこにステラとフィラスが魔法を打ち込む。それだけで光の従者・十層ボス(笑)は消滅した。
「雑魚かったわね」
「楽勝ね」
「当然の結果と言えるでしょう」
ステラとフィラスが胸を張ってそれをマリーが持ち上げる。いつものパターンだ。
「このまま二十層まで一気に行くわよ!」
俺達はダンジョンを深く、より深く潜っていった。
◇◇◇
えー、現在第十五層。ついにお嬢様2人がバテました。5日で十五層まで来たのは確かにすごいと思うけど、俺達のことも考えてくれ。マリーを見ろ!セーフティーゾーンに着いて安心しすぎて寝てるぞ!あのさあ、1ヶ月まるまるあるんだからそんなに急がなくてもよかったと思うんだ。
そう思いながら手元のダンジョンカードを見る。
◇◇◇
ダンジョン名 攻略階層
光雷のダンジョン 第十四層
◇◇◇
これが第二十層攻略となったらおしまいだ。これからはもう少しペースを落として行こう。さすがに俺も疲れが溜まっていいたのか腰を下ろして目を閉じた。
◇◇◇
「ほら、起きてください!」
顔に水をぶっかけられて目が覚めた。
「なんで水をかけたんだ?」
目の前で笑っているマリーに問いかける。
「いえ、主従揃って濡れ鼠になってもらうのもいいかなと思いまして」
「いい訳ないだろう」
そう言いなが魔法で髪を乾かす。
「お嬢様2人は?」
「まだ寝ておられます」
「そうか、なんで俺を起こしたんだ?」
「風魔法の威力調節のコツを教えて貰いたくて……」
「どういうことだ?魔物を相手にするにしても十分な威力を出せていると思うが?」
「いえ、あの、私もお嬢様の髪を乾かしたりしてあげたいなって」
マリーが少し赤くなって言う。
「それなら手伝ってあげますよ。まずは普通にウィンドを発動してください」
「《ウィンド》」
「次はゆっくりと使う魔力を減らして……」
「こうですか?」
「後は使う魔力を調節して丁度いい加減を見つけてください」
マリーは何度も試すがなかなか上手くいかない。
「あんた達……なにしてんの」
眠っていたはずのフィラスがいつの間にか後ろに立っていた。
「なんでぇ、今度はあんたがソニアとイチャイチャしてんのよ」
フィラスがマリーに詰め寄る。まだ少し寝ぼけているようだ。
「なによぉ、裏で男子達にぃ『可愛いけどあんだけ気が強いとなぁ』とか言われている私への嫌がらせ?」
やはり寝ぼけているようだ。ところどころ変な感じになっている。いつもはこんな風にはならない。
「え、え。イチャイチャなんて……そんな」
「じゃあ2人で肩をくっつけあってなにしてたのよ」
「それは……その……」
どうやらマリーは俺に魔法の威力調節を教えて貰っていたことを隠しておきたいようだ。それからもフィラスがマリーに問い続けるが埒が明かなさそうだ。先に限界に達したのはマリーの方だった。
「お嬢様、しつこいですよ!《スリープ》」
フィラスはその場に座り込んでまた眠ってしまった。
「さあ、もう少し手伝って貰えますか?」
マリーが自分のところのお嬢様を容赦なく魔法で眠らせたことに驚きを隠せないまま、俺は引き続き魔力調節のコツを教えることになった。




