059話:疲れた
2019/09/21 投稿一本目
ギルドに行くと大騒ぎになった。まさかここまで大きな騒ぎになるとは思いもしなかった。鏡を何枚も作らされて、魔力を使いすぎた。もう疲れた。だるい。近くの椅子に座る。
「おい、これはなんだ」
ディルセントが俺の隣に座る。
「見てわからないのか?鏡だよ」
「それぐらいわかる。どうやって用意したんだ」
「さっき教えてもらった水魔法を応用したら出来た。魔力の使いすぎで頭が痛いんだ。少しだけ休ませてくれ」
「これ飲め」
ディルセントは水を持ってきてくれた。なんだかんだで、優しいギルマスさんだ。
「ありがとう、少しだけ楽になった」
「それでこれはどんな風に作ったんだ?」
「今、ギルドに申請書出したからそれ後で見てくれよ」
「新魔法開発報奨金の書類は俺の管轄外、直接王都の魔法省に送られる」
「わかったよ。説明する。書類に書いたことをそのままにだけど」
「おう」
「まず、これは無詠唱魔法だ。詠唱は組み方を完璧には知らないから俺は作らない。
やり方は最初に魔力を使って水を生成して、そのあと水を2つに分けて、片方に空気中のチリやホコリを集めさせる。綺麗なままの水と濁り切った水が混ざらないように付け合わせて、鏡の完成だ。
濁らせる水は暗い色になった方が写りはいい魔法で作った水は風が吹いても波紋が立たないから最終的には及第点が貰えぐらいの出来にはなったと思うよ」
「お前なぁ。あれで及第点かよ」
ディルセントが少し遠くの鏡を指差す。
「まあ、いいけどな」
「明日は武術だよな」
ここらで1度会話を終わらせたい。頭も痛いし、疲れてきた。
「でもお前、明日もやらかしそうで怖いよ」
まさかの教えてもらえないパターンなのか!?
「まあ、明日もこいよ。午前中は基本的に空いているからな」
案外暇なのか?まあ、一言だけ残して離れてくれたからいいけど。問題はこちらにゆっくりとゾンビのような足取りで近づいて来ているアザレアだ。さあ、どうしようか。
「兄貴は・・・凄いですね。それに比べて僕は何も成長していません。他3人ともが新しく魔法を覚えたのに僕は・・・ははっ」
どうしろと!これどうしたらいいんだよ。暗い!アザレアが暗い!いつも元気なアザレアがテンション下がりまくってもう別人だ。
「なにか嫌なことでもあったのか?」
◇◇◇
「そうか」
俺と離れていた間になにがあったのかを聞いたがそう答えればいいのかがわからなかった。
「・・・」
「・・・」
話しにくい!慰めればいいのか?そんなことで落ち込むなと慰めればいいのか?わからない。
「どうせ僕は成長していません。みんなが先に進んでいるのに僕だけずっと立ち止まったままなんです」
「そんなことは無い!」
なにを言うべきかわからなかった。でもこいつが1歩も進めていないなんてことは絶対にない。
「お前はお姉ちゃんのためにって寒い中、雪に埋もれてラララビットを狩ることが出来ただろう?1射目を外しても冷静に2射目を放って仕留めただろう?1年前のお前がどんなやつだったかは知らない。でも、1年前のお前にはそれができたか?」
「いえ、出来ませんでした。狩りの成績でもいつもビリで・・・何も出来なくて」
「もういい。今、出来るようになったんだろう?それならまず自分を悲観する前に出来るようになったことを考えろ。昨日の自分なんて見ていて悲しくなるだけだ。今日、何が出来るようになったのか、なにを続けることが出来ているのかを考えろ。そうすれば自信がつくようになる。だからそんな顔をしないでくれ」
「兄貴ぃ」
「ほら、男だろ。泣くな」
「兄貴ぃ」
目を真っ赤にしたアザレアの背中を優しくさすってやった。
◇◇◇
「ご迷惑をお掛けしました」
「いいよ、これぐらい」
鏡が消えてしまったからか立花さんとカルミアもこちらに来た。
「戻ったのね。アザレア」
「おお、いつもの元気なアザレアくんだ」
真っ白に燃え尽きていたアザレアがいつもの雰囲気に戻っていることを2人は気がついたようだ。元を辿ればこの2人のせいだが、アザレアには不幸な事故だとでも思ってもらおう。結局は治して貰えた訳だし。
「そういえば、明日もディルセントさんに教えてもらうの?」
「明日は武術だって」
「お疲れ様。でも少し行きたいところがあるから午後は空けておいてくれない?」
「どこに行くんだ?」
「それはお楽しみにとって置いてよ」
「わかった」
明日の午後は立花さんと過ごすことになった。




