058話:夢か?
まさか自然魔力併用型複合魔法を使いやがるとは。
自然魔力併用型複合魔法、自然魔力併用型複合魔法、自然魔力併用型複合魔法......言いにくいんだよ!くそっ!
そんな言いにくい魔法の呼び名はともかく魔法を使うの、絶対に初めてなんかじゃねな、あいつ。
あれ?なにか落ちているな?さっきあいつが作った泥のナイフじゃねえか!まだ残っていたのか。ナイフを拾い、手に持った瞬間衝撃が走る。
「なんだこれは・・・」
俺は急ぎシェリーの元に走る。今なら職員用の休憩室にいるはずだ。案の定そこにはシェリーがいたので声をかける。
「どうかしたの、ディル?」
シェリーが2人の時に使う愛称で俺の事を呼ぶ。
「見てくれシェリー、この剣糸みたいに魔力と魔力を編み上げて作ってやがる」
泥のナイフをシェリーに見せる。
「へえ、凄いじゃない。あの子が作ったの?」
「そうだ」
「貸してみてよ」
シェリーに泥のナイフを渡す。シェリーはそれを様々な角度から眺めて
「魔道騎士団でもここまで上手に編める人は少ないわね。魔国全体で見ても魔力操作だけなら結構いい線行くんじゃないかしら」
「でも、魔法を使うのは今日が初めてらしい」
「化け物ね」
「人の教え子に化け物はないだろう」
「ごめん、ごめん」
「そっちはどうだったんだ」
「約束通り教えてきたわよ。2人とも今日でヒールを覚えたわ」
「2人?」
「ええ、アザレアくんを怪我人役にする代わりにカルミアちゃんにも教えてあげたの」
「そうか。二人とも覚えられたみたいでよかったじゃないか」
アザレア、可哀想に。という言葉は心の奥底にしまっておく。
「なんだか下の階が騒がしいな」
「行きましょう。誰かが喧嘩しているのかもしれない」
「そうだな」
部屋を出て1階へと向かう。騒ぎの現場に目を向けるとそこには何枚もの鏡が浮かんでいた。非現実的だ。鏡は銀を使うから何枚も作れないし、このギルドにも1枚しかない。
俺は夢でも見ているんじゃないだろうな?
1枚買うだけで金貨が何枚も飛んで行ったのは苦い思い出だ。それなのにそんなものが何枚も!宙に浮いている。その中心にはトガがいた。それを見て俺は考えを改めた。
「すまない、シェリー。訂正させてくれ」
「なにかしらディル」
「これは夢じゃないし、あいつは化け物だ」




