057話:物は試しに
宿に帰ると満面の笑みで迎えくれる立花さんとカルミア、そして燃え尽きたのかのようなアザレアが食堂でご飯を食べていた。
「おかえり斗賀くん」
「ただいま」
「私達は治癒魔法を覚えられたよ!斗賀くんはどうだった?」
「ああ、無事にとは言わないが水魔法が使えるようになったぞ」
「今、見せようか?」
「うん!お願い!」
「あ、その前に注文だけさせてくれ。ラタムさん!今日のオススメランチ1つ!」
「あいよ!オススメ1つ!」
奥からラタムさんの大きな声が聞こえてくる。ここのオススメランチは絶品だから楽しみだ。
「じゃあいくぞ!」
俺は魔法を発動させる。
「水の刃を今ここに《ウォーターナイフ》」
剥ぎ取り用のナイフと同じくらいの大きさのナイフが俺の手の中に現れる。やっぱりいいな魔法。かっこいい。
「私にも貸して!」
立花さんにウォーターナイフを手渡す。受け取った彼女はウォーターナイフを様々な角度から見る。ついに時間が来てウォーターナイフは消えた。
「あ、消えちゃった」
まるで反応がシャボン玉が割れてしまったことを悲しむ少女みたいだ。
「ねえ、水の鏡は作れない?あったら嬉しいんだけどな」
言われたら作りたくなってしまった。
「水で鏡なんて作れるはずがないでしょう。そんな魔法はありませんから」
でも、やってみたいよな!
確か鏡は反射率?が大切なんだっけ?まあ、水たまりにも写るしどうにかなるだろ。
まずは魔力を使って水を生成する。2つに分けて、片方に空気中のチリやホコリを集めさせる。綺麗なままの水と濁り切った水が混ざらないように付け合わせて、鏡の完成だ。片方はほんとにただの濁った水だがもう片方は鏡になっている。写りはとてつもなく悪い。だが、鏡と言わせてくれ。
カルミアは空いた口が塞がらないようだが、そんなにすごい事でもないだろう?歪んだ像が映るだけだ。まあ、立花さんは喜んでくれているから構わないが。そこにラタムさんがやってきた。
「お待ちどうさま!今日のオススメランチのコッコのバター焼きだよ!召し上がれ!」
今日のオススメランチを受け取り、代金を払う。
「お!鏡なんて持っていたんだね。今日の依頼の報酬で貰ったりでもしたのかい?銀を使わないといけないから高価だよね」
その発言のすぐ後に水の鏡は消え去り、ラタムさんは動揺を隠せないようだ。
「そりゃ水魔法で作った鏡ですから消えますよ」
「へえ、水魔法で鏡ねえ。最近は魔法もやっぱり進んでいるんだね。なんて名前なんだい?」
「名前なんてないですよ。今作った魔法ですから」
「へえ、凄いもんだ。新しい魔法の開発者には報奨金がギルドから与えられるそうだから行ってみるといいよ。あと、冷めないうちにどうぞ」
「いただきます」
熱々の肉を食べた後は未だに一言も発さない真っ白になったアザレアと驚きが限界突破して無口になったカルミア、そして髪を整えることが出来てご満悦な立花さんを連れてギルドに向かった。




