052話:報酬
いつも通りの朝食を食べて、いつも通りギルドに向かう。違うのは、アザレアの肩に掛かったマジックバックだけだ。それなのに、どうしてこんなも落ち着かないのだろう?
そんな不安はギルドに入った途端にある男の一声で掻き消えた。
「ようやく来たか!」
どうやらディルセントが俺達のことを待っていたようだ。
「約束通りタチバナに治癒魔法を教えてやるぜ!」
「お前が教えるのか?」
「馬鹿言え、教えるのはシェリーだ」
「シェリーさんに教えて貰えるんですか!?」
立花さんは嬉々とした表情で声を挙げた。
「そうだ。色々と手続きを踏まなくちゃいけなかったがお前の事はシェリーが見てくれることになったぞ」
「やったー!」
「でも、一つ残念な知らせがある」
残念な知らせがあると嬉々とした表情で伝えてくるディルセント。なにか嫌な予感がする。
「いやー本当に大変だったもんでついうっかり迷宮都市のギルマスに手を借りることになっちまってなぁ」
こいつ棒読みで白々しいことを!
「でもこの街で1番の回復魔法師に習える機会は与えてやりたいなと思った優しーい俺はどうにかお前達を春になったら迷宮都市に向かわせることを条件にこの案を通したんだよ」
ニヤニヤしやがって!
「でも、ルーキーを迷宮都市に向かわせるのは危険だってことで指南役が必要になったんだよ」
落ち着け俺。こいつのペースに乗せられるな!
「ああ、暇なヤツいねえかなぁと探してもなかなか見つからねえから仕方なーく仕方なくだぞ、俺が指南役を引き受けることになったんだよなぁ」
ようやく言いたいことが終わったらしい。
「質問あるか?」
「具体的になにをするんだ?」
「文句言わねえのな。お前達になにも知らせずに推し進めていたのに」
「冬は依頼も少なくなるだろう?教えて貰えるならそれに越したことはない。幸い冬を超えられるくらいの貯蓄はあるからな」
俺が銀貨50枚ぐらい、立花さんも同様だ。合わせて金貨1枚で約100万円。今日が11月26日でこの世界は1年360日だから雪が溶け始めるまでには約3ヶ月。これまでの依頼料で2月の終わりまでの宿代は支払いを済ませているから足りるはずだ。
冒険者は怪我した時のことも考えて置かなければならないのが難しいところだ。ポーションはかなり高価だからな。戦闘技術を上げられるなら否定する要素がない。
「魔法を中心に体術の基礎もやる・・・ハードに行くぞ」
「死ぬよりはマシだろう?」
「コイツ・・・死んだ方がマシだと思うほどに鍛えてやる」
どうやら鬼教官の逆鱗に触れてしまったようだ。これはやばいかもしれない。




