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047話:違和感

「みんな!奴は火傷が再生出来ていない!魔法だ!魔法を当てるんだ!」


 どうやら光輝も同じ考えに至ったようだ。みんなはその指示に従って次々に発動させる。


 やはりビッククロウは魔法を避ける。どうやら予想はあっていたようだ。またビッククロウは森の中に逃げ込む。魔法も止み、ビッククロウも隠れている。その間に俺は風上さんの治療を受けた。相変わらず巫女の職業を持つ彼女の治癒魔法は凄まじい効果を発揮する。


 何度見ても筋肉の繊維と繊維が結びつくのには慣れないが、火傷は赤みを残すだけで刺すような痛みはもうない。骨折も見たところ元通りだ。無理をすればまた折れるだろうけど。俺が気を抜いてしまったその瞬間に森の中からビッククロウが飛び出してきた。魔法班が魔法を放つが避けようともせず真っ直ぐ向かってくる。


 おかしい。凄まじい悪寒を感じた俺は風上さんの静止を振り切ってビッククロウの元に向かう。予想通りと言うべきか言わないべきか異常事態が発生した。ビッククロウに当たった魔法が吸収されていくのだ。魔法を吸収する度にビッククロウの爪は鋭さを増し、長くなった。


 魔法班は衝撃を隠せていない。光輝が声をかけるが効果はない。光輝も何をしているのか・・・勇者ならみんなの前に立って、みんなの剣に、盾になりやがれ!


「くそがぁぁあああ!《超・金剛化》」


 まるでハサミのように両爪を使って魔法班を上下真っ二つにしようとしていた所に割り込む。魔法班のみんなを突き飛ばす。《金剛化》の上位身体強化魔法の《超・金剛化》を発動させる。《超・金剛化》は動けない代わりに鋼の如き硬さを手に入れられる魔法だ。


 ビッククロウの鋭い爪が俺の身体を打つ。俺の身体は宙を浮き、空を飛ぶ。俺は地面を転がる。ビッククロウの意識はまだ俺に向いている。近くで腰を抜かしている魔法班を無視してでも俺を仕留めるべき相手だと判断してくれたようだ。


 光栄だな。全く嬉しくはないが。


 《超・金剛化》を解いてビッククロウと向き合う。


「魔法班は支援魔法を、弓班は牽制を、近接戦闘班は隙を見て確実に攻撃を当てろ!」


 使えない勇者様は放っておいて俺が指示を出す。みんなはしっかりと指示に従ってくれて徐々に押していく。


「待て!」


 またも身を翻して森に戻ろうとするビッククロウ。再生を許す訳にはいかない。俺は一瞬で間合いを詰めて俺の使える最大の技を放つ。腕が吹き飛ぶかもしれないが知ったことではない。こいつはここで仕留める!


「《金剛爆・・・」


 技を放とうとしたその瞬間ビッククロウがこちらを向く。しまった!罠だったのか!そう思った瞬間ビッククロウの鋭い爪が俺の腹を貫いていた。


「よくやった康介!」


 目の前のビッククロウの爪が俺の胸を貫いたのを見て、口から血を吐いているのに聞こえてきたのはそんなふざけた言葉だった。なにが『よくやった』なんだ!


 横から光輝が入ってきてビッククロウの頭を落とす。それと同時に俺も地面に打ち付けられる。肺に血が入っているのだろう。いや、肺を貫かれたのだ。まるで溺れているかのようだ。呼吸もできず口からは溢れ出るだけだ。


 こんな世界大嫌いだ。家に帰りたい。俺が最後に目にしたものは誰かが森の中から急ぎ足で出てきたことだった。


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