046話:勇者部隊と特異個体
~康介side~
俺達の任務はいつもと同じように国内各地に現れた魔物の討伐だった。いつかは前線に配置されるのは分かっているが・・・それまでは絶対に1人も失いたく無かった。
俺は光輝のように勇者なんて言う肩書きを自分から背負って生きていきたいとは思わない。戦争でクラスメイト全員が誰一人欠けることは無いとも思えない。でも、戦争に参加する頃には配置換えもあると思っていた。そこまで粘ればこの勇者部隊なんて言われる場所から外されて生産系の部隊へと移ることが出来る奴もいるだろう。そんな甘い考えがこの事態を引き起こしたのかもしれない。
俺は目の前の無残な死体を見ながらそう考えていた。
◇◇◇
キャンプしていた俺達の元に魔物が襲撃して来た。
魔物図鑑で一度見たことがあったビッグクロウと呼ばれる猿の魔物だ。討伐ランクもランク4と比較的高い方だったが全員が職業ランク4を越えるこの部隊がきちんと連携すれば勝てない相手ではないはずだった。
しかし、違った。そいつはただのビッククロウとは全くの別物だった。闇魔法を操り暗闇に潜み姿を見せた瞬間には1人が殺されていた。突然の死に混乱が生じてその隙に2人殺された。
どうにか戦闘態勢をとり1箇所に集まり、次の襲撃に備えた。ビッククロウは見事警戒を向けていた方向に現れ、こちらへと真っ直ぐ向かって来た。おかしいと思った俺はそれが魔法によって創られた幻影だと理解した。光輝の指示に従ってみんなが魔法を放つ。
止めようとしても間に合わない!
あそこに幻影を配置したなら次襲ってくるのは幻影に魔法が直撃し掻き消えたその瞬間。みんなが警戒を一瞬解く時だろう。そう考えた俺は「やったか!」という声が周りから聞こえた瞬間に警戒を強める。部隊の左後方に光る目を見つけた。
「《金剛化》」
全力の身体強化を両腕に付与してその爪を弾く。まるで金属を打ち合わせたような音が鳴り響く。その音にいち早く反応したのはやはり我らが勇者光輝だった。
「はぁ!」
少しでも攻撃を速く当てるためになんのスキルも使わずにその腕を斬り落とす光輝。右腕を落とされたビッククロウは一度俺達から距離をとった。陣内に置いておいた警戒用の松明がその身を照らす。暗くて良く見えなかったがそのビッククロウには多くの黒い線が入っていた。血管のように張り巡らされたその線はビッククロウの特異性を表すのに十分だった。
「あれも魔族の実験体なのかな」
「かもしれねえな。でも殺ることは変わらない」
殺す。
クラスの全員が警戒を強める中ビッククロウは逃げ出した。間を置かずに魔法班が追撃を仕掛ける。凄まじい猛攻を全て避けたビッククロウは森へと身を潜める。そして、全く警戒を解いていなかったにも関わらず目の前にビッククロウが突然現れる。幻影・・・ではない!本物だ!その両爪を振り下ろし俺達を殺そうとする。
「《轟雷爆破掌》」
飛び上がってその顔面に最大火力の技を放つ。魔法によって爆発が発生しビッククロウは吹き飛んでいく。その反動により自分自身も吹き飛ぶ。なんの支えもない場所で吹き飛んだ俺は左腕が曲がっては行けない方向に曲がり、右手は爆発のせいで大火傷を負った。
それでも俺は声を上げる。
「みんな!気をつけろ!そいつ腕が再生しているぞ!」
奴は両爪で攻撃を仕掛けてきた。つまり光輝に斬り落とされた腕が再生していた。奴には再生能力がある。俺が必死の思いで与えたダメージも再生して・・・いない!?もしかして火傷や凍傷などは再生できないのか?奴は魔法を避けていた。そこに勝機があるかもしれない。




