038話:帰還
「依頼のオークの魔石だ」
オークの魔石と依頼書を受付嬢に渡す。
「新人講習会の依頼ですね?」
「ああ、そうだ。この3人と行ってきた」
「では、4人分の報酬をどうぞ。あと新人講習会に参加された方は魔石を1度返しますので、ギルドマスターに見せに行ってきて下さい。今ちょうど居られると思うので案内しますね」
渡された報酬の半分をカルミアに渡した後、俺達は受付嬢に連れられてディルセントの元に向かった。
「お前達で最後だな!時間かかったみたいだな!オークを見つけられなかったのか?」
「昼過ぎに出て夜まで見つけられなくてな」
「ほう、そうだったのか。なら、夜にオークと戦ったのか?」
「そうだ」
「大変だっただろう?実際どうだった?お前ら感想を言って見てくれ」
「厳しかったです」
「わたしは不安で仕方がなかったわ」
「力不足を感じました」
「死ぬかと思った」
アザレア、カルミア、立花さん、俺の順番で答える。
「そんなにきつかったのか。夜に魔物と戦うのは初めてだったのか?」
「ああ、そうだ」
「とんだ温室育ち野郎だったという訳か」
「否定はしない」
剣を持つこと自体なかった。せいぜい喧嘩をしていたぐらいだ。
「私なんて喧嘩もしたことが無かったですしね」
そりゃそうだよな。喧嘩好きの立花さんなんて想像もできない。したくない。
「めんどくせえ奴らだな。なんの問題もなくお前達が無事に帰ってきて良かったよ」
ディルセントは頭を掻きながらも嬉しそうに笑いかけてくる。やっぱりこいつは悪い奴ではないな。
「ああ、魔石はこっちに渡してくれるか?」
魔石をディルセントに渡す。
「よし!これで依頼の達成を認める。なにか聞きたいことがあれば聞いてやるぞ!」
「はい!はい!パーティを正式に組むにはどうしたらいいですか?」
カルミアが手を挙げて訊ねる。
「普通に受け付けに行ってパーティの申請をすればいいぞ」
「ありがとうございます」
これでもう席を立たせて貰おうかなと考えた時。
「兄貴、兄貴!あの魔石のこと聞きましょう」
アザレアが俺に提案してきた。いいかもしれない。黄色い魔石のことを聞いてみよう。
「なんなんだ?あの魔石って?」
「ああ、実はな・・・」
オークジェネラルの魔石を取り出す。
「こんな魔石を手に入れたんだ」
「この魔石はどこで・・・」
ディルセントはかなり驚いている様子だ。
「オークを率いていたオークジェネラルと思われる個体から手に入れた魔石だ」
「一応、確認してもいいか?」
「別にいいぞ」
ディルセントは魔石を手にとって観察し始めた。
「お前が『死ぬかと思った』なんて言ったのを冗談か何かだと思ったがこの分ならかなり大変だっただろうな」
「その通りだ」
「そのオークジェネラルになにか特徴はなかったか?」
「スキルか魔法かは分からないがソニックブームの超強化版みたいな攻撃と辺り一面に土の槍を創り出す攻撃をしてきたな」
「そうか」
それだけ言ってディルセントは黙り込む。
「なにか問題があったのか?」
「お前達が戦ったのはオークジェネラルの特異種だろう。魔物は一定以上の魔力的な干渉を受け続けると環境に適応して行くものなんだ。だから火山には火の魔法を、海や湖には水の魔法を使う魔物が多い。それも魔物の特徴だな。だから特異種は魔物のある種の進化と言えるだろう」
ディルセントは眉間を抑えながら続ける。
「問題は無い。問題は無いんだが」
次は唸り出すディルセント。見た感じ大問題に思えるんだが。
「お前達・・・迷宮都市に・・・行きたくは・・・ないか・・・」
とても勧める側の発言の仕方ではない。
行って欲しくないみたいに聞こえる。
「迷宮都市ってなんだ」
俺と立花さんが尋ねる。
『・・・』
ディルセント、アレア、カルミアは『こいつ、まじか・・・』みたいな目で見てくる。止めて貰いたい。
「大迷宮『土塊の迷宮』がある都市のことだけど知らないのか?一番近くの迷宮都市といえばあそこに決まっているだろう。お前達はどこで生きてきたんだよ」
こことは違う世界ですがなにか?。
「まあ、それで迷宮都市がどうしたんだよ」
「オークジェネラルの特異種を4人パーティで討伐するような奴らをこんな温泉地に置いておいたら上から怒られちまうんだよ」
「それで?」
「いや、このあいだ迷宮都市のギルマスにお前のこと話したら興味を持たれていな。こっちに連れてこいなんて言うぐらいなんだよ」
「つまり?」
「期待のルーキーくんは良い判断をしてくれると信じている」
うわー、辛い。断りにくい。
「・・・どうしようか?」
立花さんに投げよう。
「とりあえず話をもう少し聞こうか」
そう返されてしまった。確かにしっかりと話は聞いた方が良い。




