034話:始まり
~ソニアside~
俺は体を起こした。周りを見るとどうやらどこかの病院のようだ。
ベッドから身を起こし立ち上がる。窓の外を見るとそこには多くの家々が立ち並んでいた。遠くの方には本で見たことのある魔王城が見える。王都にいく旅路だったが無事につくことは出来たようだ。
俺は『無事に』と言えるかは微妙だが。その時後ろからドアの開く音がする。
父さんとトロールに襲われていた少女、それに知らない男がそこにはいた。父さんが俺の目の前にくる。
「ソニア・・・」
「父さん」
「このバカ野郎!」
ぶっ叩かれた。俺がついさっきまで倒れていたことなど知ったこっちゃないみたいな感じで。俺は壁まで吹っ飛ばされた。
「痛ったいな!このバカ親父!」
そう叫んでやる。
「黙れ!このバカ息子!どれだけ心配したと思っているんだ!」
「うるせえ!」
そこからは取っ組み合ってお互いの髪とかを引っ張る。すぐに疲れて床へと倒れ込む。
「本当にこの子がトロールを一撃で葬ったのかい?ステラリア」
「ええお父様この男の子が私を助けてくれたの」
「へえ、君がねぇ」
男が顔をこちらに近づけてくる。
「それであんたはなんなんだ」
男は笑みを浮かべる。
「も、申し訳ございません」
お父さんが真っ青になって謝る。
「いえいえ、構いませんよ、お父さん。これぐらいの子は反抗心が少しぐらいある方が可愛らしいものだ」
その間に女の子が俺の前に立つ。
「感謝しなさい。貴方を学園へと招待してあげるわ」
「学園?」
「それは私から説明しよう。まあ、私はどこにでもいるしがない一人の父親なのだけれどね、学園を運営する理事長という立場にいるんだ」
「それで?」
「私の娘を助けてくれた心優しい少年を是非私の学園へと招待したいのだよ」
「嫌だ!」
「・・・」
男が押し黙る。
「自分の名前も種族も教えない奴は信用しちゃダメと父さんに教えられたんだ」
「ソニア!」
父さんが真っ赤になって俺を叱る。
「怒る必要はないですよ。貴方の育て方は間違ってなんかいませんよ」
「お、おおお」
父さんが跪いてありがたがる。なんでだよ。
「それじゃあ自己紹介をさせてもらうね。私の名前は、サフラン・ナスタチウム。魔王なんてものをさせてもらっている。よろしく頼むよ、私の娘の小さな英雄、ソニア・ジャスミンくん」
・・・一応聞いておこう。
「魔王ってさ、 あの魔王様だよな」
「多分、その魔王だと思うよ」
「あそこに建っている城に住んでいて」
窓から見える城を指さす。
「うんうん」
「とっても強くて」
「うんうん」
「絵本とかに出てくるみんなの憧れ魔王様だよな」
「そうだよ」
魔王は肯定した。
「それじゃあ、そのことを踏まえてもう1度聞くよ。私の学園に来ないかい?」
そして俺に手を伸ばして握る返すことを期待しているようだが
「断る!」
「「「・・・」」」
嫌な雰囲気になった。
「ど、どうしてかな?」
魔王様は諦めなかった。必死に娘のために説得しようとするのであった。
「簡単だ、妹の面倒を見る人が居なくなる」
「ごめん、もう1回お願いできるかな?」
「俺が王都の学院に通うことになったら妹の面倒を見るやつが居なくなる」
残念、ソニアくんは妹のことが大好きだった。それ以上大切なものはないと思えるほどに妹のことが好きだった。もちろん家族として。
「妹ちゃんは何歳なのかな?」
魔王様は諦めない。
「シルクは今9歳だ」
「それなら君達2人共が入学してくれて構わない。君は娘と同じ中等部に、妹ちゃんは初等部の4年生として入ってくれないか」
「父さん良いのか?」
「ああ、構わないぞ。もうお母さんに確認はとったからな」
親の了解は得た。魔王様の手ではなく、偉そうにこちらを見る少女の手を俺は取る。
「よろしくね」
いきなり手を取られたことに動揺したのか、彼女は頬を染めた。そんな彼女を夕陽が照らす。夕陽よりも赤く美しい彼女の髪が光を受けて輝きを増していた。
「よ、よろしくね」
彼女の笑顔は夕陽色に染まる視界の中でなによりも美しく見えた。




