032話:衝撃
俺達が夕食の用意を遂に終えようとしたときその轟音は響いてきた。そして、何度も鳴り響く轟音。奥の方から聞こえてくる。アザレアが向かった方向だ。
「アザレアになにかあったのかもしれない!」
カルミアが立ち上がり奥へと向かう。
「斗賀くん行こう!」
俺達も奥へと向かう。そこではアザレアがオーク達に追われていた。
「カルミア!来るな!」
アザレアが叫ぶ。それを無視してカルミアが魔法を放つ。
「《ホーリーアロー》」
得意と言っていたしかなりの数の矢だ。全部で12本か。それら全てがオーク達へと降りかかる。
余りダメージは入らなかったようだが1本がオークの目に突き刺さったようだ。オークは怒り狂ってこちらへと歩みを進める。
「広い場所までおびき出すからアザレアもついて来い」
もうオークはこちらにも目をつけている。一緒に戦った方が良いと判断してくれたのか、はたまたカルミアを守るためにかこちらへとアザレアは向かって来てくれる。俺達は全速力で走りオーク達と共に洞窟から外へと出る。
「《ライト》」
カルミアがライトの魔法を追加してくれる。光の球が2つになり外でも問題なく周りが見えるようになった。
「敵は全部で5体!1匹ずつ片付けるぞ!」
俺達のオーク退治が始まった。
「まずは片眼のあいつを倒す!みんなは陣形を整えてくれ!」
皆が陣形を形作る。立花さんと俺が前衛、アザレアが中衛、カルミアが後衛だ。オークと戦う際の基本陣形として4人で決めておいたのだ。俺はまずは右目を失い怒り狂ったオークへと向かう。後衛に目をつけられると陣形を崩されるからな。
「《スラッシュ》」
一撃の元に葬り去る。首を撥ねられたオークはそのまま地面へと倒れ込んだ。仲間を殺されたことに怒ったのか後からついてきた方のオークの視線が一斉に俺に向けられる。
1体を除いて……。ひと回り大きいそいつは余裕綽々といった風に俺達のことを見回す。
「ぐががぐが」
周りに命令したのだろうか?
「があががぐ」
周りのオークはそれに答え3体共立花さん達の方へと向かう。それに合わせてひと回り大きなオークは俺の方向に棍棒を振りかぶって
「《ゴギッギグゲーゴ》」
大きな声で叫びをあげた。
なぜか、俺とオークの間の地面は砂埃をあげる。不味いと思った俺はその場から離れる。強い衝撃波が俺の真横を通っていった。スキルを使いやがったのか。これまでスキルを使ってくる魔物なんていなかったのに!皆との距離が少し空いてしまったじゃないか!
「そいつ多分オークジェネラルです!オークの上位種です!」
カルミアが教えてくれる。きっとオークがスキルと思えるものを使うのを見ていたのだろう。
こいつを向こうには行かせられないな。
「こいつは俺が抑える!その3体相手にできるか?」
「大丈夫だよ!」
立花さんからの返事が聞こえた。今すぐに助けに向かいたい。だけどそんなことをすれば状況が悪化してしまう。立花さん達はまだ1体もオークを倒せていないし、オークジェネラルはスキルを放ちながらゆっくりと俺に近づいてくる。少しずつ状況は悪くなっていく。
「あっ」
カルミアが体勢を崩す。そこに3体のオークの攻撃が迫る。1体目の攻撃を避ける。2体目の攻撃も避ける。3体目の攻撃・・・あれは避けられない。近距離での戦いに慣れていないのだろう。
そう判断した俺は剣を投げる。オークジェネラルは俺が投げた剣を避けるが目的はそこではない。3体目のオークに剣が突き刺さる。俺が剣を投げたタイミングでオークジェネラルが迫って来ている。俺の手に剣はない。このままでは殺されるだろう。
あれがただの剣であれば......残念ながらあれは呪われた剣だった。俺を呪い、過去を見せ、罪を自覚させようとするソニア・ジャスミンに呪われた剣だった。あの装備は外せない。俺から離れることはない。
3体目のオークが後ろへと倒れた。刺さっていた剣は宙を舞いながら手元へ戻って.....来なかった。
「ああぁぁぁああああ!」
剣は確かにディルセントの時と同じように宙を舞いながらこちらへと向かってきた。その間にいたオークジェネラルの肩を斬り裂きながら。そこまではよかった。だが俺の左足へと突き刺さった。目の前で肩を斬り裂かれたオークジェネラルがその棍棒を落とす。
だがそれに意識が向けられるか!俺の足には呪剣が刺さっている。俺の中にナニカが入り込んでくる。それはあの男の記憶だった。
《警告 ソニア・ジャスミンによる呪いが進行しました》
《魂の親和性が50%を超えました》
俺の視界が黒く染まる。誰かから俺が奪い取ったあの男の存在が俺の罪を自覚させようとする。俺の視界が黒い炎に包まれる。




