019話:埋め合わせ
2019/05/06 三本目
俺はディルセントに飯をおごって貰っていた。
「ほら、お前らムクゲンが連れてきただろ?」
「ああ、色々と助けてもらった」
「お前らの剣もかなりの業物だろ?」
「かなりいいほうではあるんじゃないか?」
「それで思ったわけよ。こいつら戦うことに関してはズブの素人だって」
「それに関しては否定しないがなんでだ?」
「装備をムクゲンに貰って振り回したいだけの奴らなんじゃあねえかと」
周りからはそう見えていたわけか。
「けどもよ。晩飯に誘われた時にな、あいつに聞いたらオークを1撃で仕留めて助けられたんだなんて言いやがってよ」
「事実そうだが?」
「まあ、とにかく俺は信じられなかったのさ」
「それで今日、決闘をしちまえとなったのか」
「そういうこった」
「なるほどわかった」
「でもおめえさんよ。反応速度はいいんだが、剣の振り方がなってねえ」
「それはわかる」
「なにがわかるってんだ?」
「例えばさっきの試合、俺がしっかりと構えてきちんと握っていたら、あんなに簡単に剣は打ち上げられなかっただろう」
「その通りだ。なんなら俺が教えてやろうか?」
「いいのか?」
「これでもギルマスだからな。まだランクの低い奴らを集めてまた今度の『講習会』でも剣の講座を開くとするぜ」
「『講習会』?」
「ああ、冒険者になりたての奴らを集めて色々と教えるのが目的でな。ベテラン冒険者の技術が廃れたりするのを防ぐのも目的の1つだ」
「ありがたいな」
「それに実力が近い奴らが集まるからそこで仲良くなってパーティーを結成したりする奴もいる。人が多い方がパーティーの生存率も高まるからな」
「いいことずくめだな」
「それが冒険者ギルド全体の力を高めてくれるってわけよ」
俺は拍手を送る。
「まあ、俺の仕事が増えるのが唯一の欠点だがな」
なんか可愛そう。
その時!目で追うことすらできない速さでディルセントに拳骨が振り下ろされ、彼は机へと沈んだ。
「なに馬鹿なこと言っているんですか」
受付嬢だった。怒っているようだ。
「痛いぞ」
ディルセントが頭をあげる。
「痛いぞじゃないですよ。わたし達の仕事も増えるんですからね」
なんかすみません。
その横には立花さんがいる。
少し怖い笑顔を浮かべている。
一体俺がディルセントと飯を食っている間に受付嬢となにを話してきたのだろうか。
立花さんは俺に指を指して言う。
「勝手なことした罰として、一個言うこと聞いてもらうから!」




