014話:大変な事
「おいしー」
私は今とっても感動している。宿自慢の温泉から出たあとにあるものを見つけたのだ。瓶詰めの牛乳だ。これは飲むしかない!そう思った時にはもう手にとっていた。
そして、飲み切る。うまい。
「いやぁ。いい飲みっぷりだね」
他の女性の方から賞賛の言葉を頂いた。
「美味しいですもん」
「そうかい、そうかい。代金はここに置いておいてくれ」
宿の作業員の方だったようだ。怒られなくてよかった。
「はい!」
しっかりと瓶の前に書かれていた代金を置いてその場を去る。ロビーに出ると斗賀くんがもう出てきていた。
「いい湯だったね」
「ああ、そうだな」
素っ気ない返事だったがさっぱり出来てとても嬉しそうだった。
「もう部屋に向かう?」
彼が聞いてくる。
「そうだったね。鍵は受け取ったけど部屋は見に行って無いもんね」
「夕食はここに来る間に出店で済ませてきたし、まだ早いけどもう寝てもいいかもね」
そうだ。彼は洞窟から出たあともずっと起きて夜も見張りをしてくれていたんだよね。もう眠らせてあげるべきだよね。
「じゃあ部屋に向かおうよ」
私達は、部屋へと向かった。扉を開く。私達はとんでもないことに気づいた。思ったより部屋が広くて嬉しかったが1つ問題があった。
ベッドが1つしか用意されていなかった。そういえばお金を払ったとき二部屋にしてくださいとは言ってなかった。
「俺、もう1部屋とってくるね」
そう言って斗賀くんがロビーの方に向かおうとする。
「待って」
その腕の裾を掴む。
「充分広いし良いんじゃないかなって私思うの。ほら、お金ももったいないしさ」
「立花さんがそういうならいいけど」
そして私達は部屋へと入った。それぞれの部屋にもお風呂はあるんだね。うん、普通の旅館みたいな感じだね。少し広めかな。
どこにでもあるような部屋だね。ベッドへ私達2人は腰掛ける。
「・・・」
「・・・」
気まずい。これからどうして行くかの話しをしておこうと思っていたけどなんか気まずくて言い出せない。
「・・・」
「・・・」
時間だけが過ぎてゆく。
「あの、そろそろ寝てもいいかな」
空は真っ暗になっていた。もう部屋の中も暗くなっており壁の方になにがおいてあるかもわからない。そんな時間になってようやく問いかけてきた。
「うん、そろそろ寝ようか」
「じゃあ俺はベッドの右側で眠るから」
「じゃあ私は左側ね」
そう言って背中合わせになりながら眠る姿勢になる。ベッドは少し狭くて背中がくっついてしまう。とってもドキドキする。心臓の音聞こえたりしないかな、なんてベタなことを考えていたしまうほどに緊張している。
落ち着け、私。ただ単に薄暗い洞窟の中で必死になっている姿がかっこよくて、一生懸命で、大きな牛の頭の化け物に正面で戦って勝った。その上で人助けもちゃんとするし外に出た後もしっかりと初めて会う人達に対応して、寝床まで用意してくれたただそれだけの人なんだから。
ちょっと気になってなんかしてないし、受付嬢の人におすすめのデートスポットの案内を渡された時も一緒に行きたいなんか思ってもいないんだから。
思ってなんか無い、たぶん。
なにもありませんでした。
2019/05/19 一部表現を変更しました。




