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004話:夜空の下で

 

 2人がテントに入って数刻がたった頃。1人テントから出てきた。ムクゲンさんだった。


「見張り変わろうか?疲れるだろう?」


「いえ、構いませんよ」


「そんなに警戒しないでくれよ」


 無言を返す。


「釣れないね。君たちのことが知りたいんだよ」


 俺は見張りを続けながら彼の話を耳に入れておく。


「君たちの事がさっぱりわからないんだよ。できる事なら知りたいんだよ。オークを一撃で倒せるような人なのに魔石の埋まっている場所すら知らなさそうだった。それにアイテムボックス持ち2人だけのパーティーなんてなかなかいない」


 それは盲点だったな。アイテムボックス持ちなのは隠した方がいいのかもしれない。


「おまけにどこの商会に行ってもすぐさま買い取って貰えるダンジョンでしか育たない魔法植物オウバイの実を山ほど持っている。あれってかなりのお金になるよ。街についたらわたくしに売ってくれないかな」


「売ってもいいぞ」


「本当かい?」


「ただ、適正価格で買い取ってくれよ」


「もちろんだとも」


 彼は大きくうなずいた。


「ねえ、話を戻すけど君達は一体何者なんだい?」


「できれば話したくないな」


「ワケありなのかな?でもさ、君達はここら辺の人じゃあないでしょ?」


 異世界出身ですと言って信じてくれる人はいないだろうしな。


「本当に強情だね。まあいいけど」


 ムクゲンはふざけた態度ではなくしっかりとこちらを向いて言う。


「わたくしムクゲン商会の代表取締役をしているエルフのムクゲンというものだ。今回は護衛をしてくれてありがとう」


「斗賀だ。雇ってくれて助かった」


「種族は?」


「ヴァンパイア・ツヴァイだ」


「ヴァンパイアだったのか……」


 ムクゲンが申し訳なさそうにしている。


「なんだ」


「いや済まない。それが警戒されていた理由だったんだね。村のことを思い出させてしまったかな?」


「どういう風に伝わっている?」


 問いかけると新聞のようなものを見せてくれる。


「新聞にも出ているよ、『ヴァンパイア達の村は全てが人族の襲撃を受けて壊滅した。我らが英雄、第八軍団軍団長ソニア・ジャスミンは少しの休暇を取られたようだ』ってね」


「そうか」


 ムクゲンさんから新聞を貸してもらい読ませてもらう。ていうかあいつ休暇取ってから俺達のこと殺しに来ていたのか。笑えないけど笑える。


 これでまた一つ情報が得られた。どうやら今この世界では、戦争が起こっているようだ。


「君がギルドカードも持ってないことは理解できた。身分証明書なんかも持ってこられなかったんだろう?」


「ああ」


 一応、そう返しておく。


「冒険者になるなら、わたくしが保証人になろう。無理に詰め寄ったことを許してくれないかな」


「そこまでしてもらわなくても構わない」


「君は良い取引相手になるしこれぐらいはさせてくれ」


 もしかすると、ただのいい人なのかもしれない。


「ところでオウバイの実はいくつぐらい持っているのかな?」


「なぜ今聞く」


「商人ですから」


「食えない奴だな」


「我々の業界では褒め言葉だよ」


「大体200個だ」


「お取引ありがとうございます!」


 満面の笑顔を浮かべやがる。


「本当に食えない奴だな」


 夜はふけていった。


2019/05/07 一部表現を変更しました。

2019/05/19 一部表現を変更しました。

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