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私には貴方が分からない

作者: セロリア

私は42歳の奥さん。


旦那は50歳の旦那さん。


旦那はいつも無口で。


本当に何を考えてるのか分からない。


いつも帰りは遅い。


ゴルフを嫌だと言いながら高いクラブを買ってくる。


決算期が始まる前は毎晩毎晩、接待、接待で。


お酒そんなに強くない癖に。


翌朝は本当に辛そうで。


痩せたいと言いながら、上司が太ってるのに痩せたら嫌な顔されると言ってテレビを見てる、


ゴロゴロして。


手伝ってと言いたいけど、何も言わない私。


私が退職金目当てで、離婚しようとしてる事、知りもしないで。


本当に可哀想な人なのね。


結婚記念日がもう直ぐやって来る。


その日が最後。


旦那の最後のチャンスなのよ。


それなのに。


旦那は気づかないのね。


本当によく分からない人なのね。


まあ。


知らなくても別に良いですけど。


旦那が私をメイドとしか興味ないなら。


私も。


旦那をATMとしか見ないわ。


だって。



悔しい。



私だけ。



私だけ旦那を思ってるなんて。



悔しいじゃないですか。


だから。



だから最後にメイドを無くして、思い知れば良い。


泣けば良い。


電話は繋いでおくわ。


元旦那の謝る声、聞きたいものね。


謝る声を聞いてから、笑ってやってから、携帯を捨てるわ。


叩き割ってやるわ。


踏み潰すんだから。


唾も吐いてやるんだから。


楽しみにしてるんだから。


メイドに堕とされた、女の恨みを思い知れば良いわ。




思い知れば良いわ。






記念日一週間前。



夕食。


珍しく一緒。


旦那「・・なあ・・」


私が「んー?」 にこやかに。


旦那「・・今度の月曜・・有給取ったんだ・・」


私「え!?」


旦那「・・」


私「・・どうしたの急に?貴方が有給だなんて、どこか具合でも?」


まさかね。



まさかね。



旦那「・・」



私「・・」



旦那「ごほん、あー・・どっか行くか?」


私「・・どっかって・・こっちにも予定が・・」


旦那「・・何だ・・何か予定、あるのか・・そうかあ・・」


月曜日は。


結婚記念日だ。



旦那「・・そうか、解った、すまんな、そうか・・」


旦那の顔が真っ赤だ。


勇気を出したらしい。


フラれて恥ずかしいのであろうか。


可愛い。



私「・・ずらせるか、友達に相談してみます」


旦那「え!?、あ、いや、そこまでしなくても、お前が行きたいとこなら、行ってきなさい、遠慮するな」


私「・・」


ああ。


そうか。



やっと、やっと解った気がする。



私「もしかして、貴方が家事を手伝わない理由って・・私に迷惑かけるからですか?」


旦那「!?・・あ・・そのう・・まあ・・以前家事を手伝ったら、不機嫌になったから・・その・・」


私「・・そう・・そうだったの・・う、う、う」


旦那「!?ど!?どうした!?何かあったのか?」


私「い、今まで、記念日忘れてたのは?」


旦那「・・わ、忘れてなんかない!・・た、ただ、いつも思い出すのが翌日だっただけで・・」


私「忘れてんじゃない、ふふ、もう」


旦那「い、忙しいと、気力だけで仕事してるようなモンなんだよ、本当にきついんだからな!」


私「・・思い出してはいたのね」


旦那「当たり前だろ?結婚記念日じゃないか!」


私「・・ふふ、そうね、そうだよね」


旦那「あ、ああ、そうだよ?・・どうした?いきなり泣き出して」


私「お互いに・・気を使い過ぎてたのかもね」


旦那「?何が?」


私「んーん、ふふ、何でもなーい」


旦那「・・」


私「・・私達、だいぶ老けたね」


旦那「どうした?お前、変だぞ?どっか病気か?俺になんか黙ってる事あるのか?」 


本気で。


心配してる顔だ。



私「私が心配?」


旦那「当たり前だ!何言ってんだ!?夫婦じゃないか!」


私「・・私が好き?」


旦那「・・本当にどうした?」


私「・・」 見つめた。


旦那「・・おい・・」


私「・・」


旦那「・・薫・・」


私「・・」


旦那「・・好きに決まってるじゃないか、今更何を言わせる、んぐんぐ」


お茶を飲む。



薫「どんなところ?」


旦那「ぶー!げほ!げっほ!げっほ!」


私「・・」


自分でも解る。


今、私は。




顔が真っ赤だ。



旦那「・・どうした?熱でもあんのか?どれ?」 おでこを触られる。


旦那「・・熱はないか・・」


私「・・貴方、顔真っ赤よ?熱、あるんじゃない?」


私も旦那のおでこを触る。


旦那「ば!馬鹿!俺は本気で心配してんだ!」


私「ふふ」


旦那「・・わ、笑うな!」


私「・・いつぶりかしら、こんなに話をしたのは」


旦那「・・そ、そんなに・・話したかったのか?」


上目遣い。



私「私、話好きだったじゃない」


旦那「・・ふふ、ああ、確かに!」


私「あー!今何か思い出し笑いしたー」


旦那「いやいや」


私「絶対したー言えー」


旦那「いやいや、何もしてないって!何も思い出してない!」


私「嘘!言えー」 


旦那の後ろに回り、勇気を出して抱きついた。


旦那は、笑って。


笑って。


嫌がらなかった。


臭いって言わなかった。




嫌がらなかった。




嫌がらなかったのよ。






結婚記念日に予定してた一人旅行、キャンセルしたわ。


あーあ。


結構贅沢な旅行だったのに。



二人旅行になったおかげで随分質素になっちゃった。



あーあ。



ちっ。



ごめんね。



贅沢三昧の後の、悠々自適な生活のあたし。



本当にごめんなさい。



私を好きなんだって。



私を。



好きなんだって。



えへへー。



《END》


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