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更新強化週間、本日が最終日です!
これからも更新は細々と続けますので、よろしくお願いいたします。
2017.07.10 脱字を修正しました。
「まだ恋人ではないと…ふふっ、良いでしょう。最後の質問で少しは空気も和んだでしょう。」
男はそう言って笑顔でリリィを見つめる。リリィはお尻に地面に着けていた。最後の質問に毒気を抜かれたようだった。
「では続けてそちらの質問にお答えしましょう。魔法使いに関することだけでなく、気になることがあったら聞いてください。」
"ただし、意地悪な回答になってしまうかもしれませんが許してください"と男は先に謝った。二人は何から聞こうかと小声で相談する。やはり魔法使いのことから聞こうか、それとも男が本当に魔法使いかどうかを確かめるべきか等と相談する声がマギーの元に届く。マギーはその様子を見ながら胡坐を組んだ足に肘を立て頬付きをした。
「安心してください。数の制限は設けません。いくつでも聞きたいことを聞いてください。」
幼い子供たちはお互いの顔を見合わせて頷き合った。最初の質問を決めたようだ。
「じゃあ、僕から質問します。あなたが魔法使いだという証拠を見せてください。例えば魔法とか。」
男は顔を横に振る。
「申し訳ありません。魔法使いである証拠をお見せすることは出来ません。また魔法をお見せすることも出来ません。」
その答えに二人は落胆する。二人にとってこの質問はそれほど重要だった。リリィの母ですら魔法使いに出会ったことがないのだ。少しでも男の話を信じる理由が欲しかった。そのためにも魔法使いである証拠をどうしても見ておく必要があったのだ。目に見えて気落ちする二人を見て自称魔法使いは言葉を続ける。
「そこまで魔法使いに執心されているとは…では証拠にはなりませんがそんな二人に魔法使いに関する秘密を一つ。"魔法使いは嘘をつけない"のです。正確には嘘をつくことは出来るのですがそれをするためには非常に面倒な努力がいるのです。」
男は人差し指を口元に持っていき"秘密ですよ?"と笑った。マルクはどこかで聞いた話だなとリリィの方を見た。リリィはマルクの視線に気が付いたが、無視をしてマギーに質問を投げる。
「では私から質問よ。魔法とは何?魔術や神の祝福とは違うの?」
「お答えできません。ただ一つ言えることは魔術や神の祝福とは異なります。ただし理由をお教え出来ません。そもそもお二人はその二つがどんなものかご存知ですか?」
「いいえ、知らないわ。魔族や一部の人間が使うことが出来る不思議な技が魔術、神が愛する者に与える力が祝福という認識しか持ってないの。」
二人は魔法については興味を持っているが、魔術や神の祝福ついて興味がなかった。それらについて調べたことなど一度もないのだ。男は"それではお話になりません。"と呆れた様子だ。
「お二人は興味を持っていることに関しては調べることも考えることもやってきたでしょう。ですがその他については全然のようですね。それではあなたたちの知りたい真実には近づけませんよ?」
男の説教にリリィはイラついているようだ。マルクは知っている。こういうときのリリィは落ち着くまで放置する必要がある。冷静でない野獣は放っておくに限るのだ。
「マギーさんは魔術や祝福についてご存じなのですか?」
「勿論知っています。それに二つとも使うことも出来ます。」
マルクは考えた、"魔術を使うことが出来るということは分かるが、神の祝福を使うことが出来るというのはどういうことだろうか"と。神の祝福は神から与えられ受ける物であって、決して使うとは表現しない。マルクの不思議そうな顔にマギーは"では実演してみましょう"と囁いた。
「ちょうど手持ちの触媒があります。まずは魔術をお見せしましょう。」
男がズボンのポケットから何やら小さな石を取り出した。血のような真っ赤なその石を両手で包みこみ、ボソボソと何かを呟いたかと思うと男の手の中が光った。男はゆっくりと手を開くと先ほどの石が燃えていた。"これが魔術です。まぁ見ただけじゃ分からないでしょうが…"と石を片手でグッと握った。再び開くと火は消えており石も黒く濁っていた。マギーは"次は祝福の実演です"と落ちている木の実を拾う。先ほどと同じように木の実を両手で包むと、手の中にふぅと息を吹きこんだ。男が手を開くと先ほどの木の実が僅かに光っていることが分かる。そこにあるのは神の祝福を受けたそれだった。
「さて、実演はこんなところにしましょう。他に質問は?」
男は手に持った木の実を口に運んで、次の質問を要求した。あっけにとられていたマルクは慌てて次の質問を考える。
「そうだ!先ほど僕に何をしたんですか?何か魔術のようなものをかけたんですか?」
マルクはマギーと目線が合ったときのことを思い出す。あのとき襲われた感覚は何だったのかと男に問いかけた。
「いいえ、ただあなたたちのことをよく見ようとしていただけです。変わった二人だなぁと。魔術でも何でもありません。だからこそ、あなたが反応を示したことに驚いたのです。」
マルクは少し引っかかったが、納得することにした。
「そういえば最初にリリィがあなたに質問したとき真面目に答えてないと言っていましたが、あれはどういう意味ですか?」
「ああ、あれは私が名乗った名前に問題があったんですよ。私が名乗った名を覚えていますか?」
「マギー・ナムレスですよね…?」
「そう、そのナムレスという名のせいで質問に真面目に答える気がないと思われてしまったのです。ナムレスと言うのは正しく発音するとナムンロスと言います。ナムンロスとは古い言葉で名無しという意味なんですよ。」
"いやぁ、まだ年若い神の眷属が古き時代の言葉を知っているとは思いませんでした。ハッハッハッ"と笑いながらマギーは頭をかいた。マルクは嘘をついた自称魔法使いに対して不満を感じた。
(魔法使いは嘘をつけないって言ったのに…)
そして苛立っている小狼はそれに対して噛みついた。
「あなた、魔法使いは嘘をつけないって言ったじゃない。なら嘘をついたあなたは魔法使いじゃないのね。この話は終わり。あなたは用済み、お母様にあなたのことを報告して終了よ。」
"これ以上、この男の話を聞いてもしょうがない"と大きな遠吠えをあげる。自分の一族を呼んだのだ。だがそれに対しての応答がいつまで経っても来ない。不審に思ったリリィはマギーを睨んだ。この男は自分の母にも気付かれずにこの森の入ってきた。それだけの力があると判断できる。それだけの力を持った男が自分の行動を妨害することなど造作もないことなのだろう。リリィは自身とこの自称魔法使いにどうしようもない力量の差があることを認識し、自分の手に負える存在ではないと判断した。リリィは思考を即座に切り替える。そんな純白の狼を見ていた金髪の男は笑顔で言う。
「他の守護者を呼ばれては困ります。それに私は言ったはずです、"努力をすれば嘘をつける"と。私が魔法使いでないという証明にはならないはずですが?」
「…そうね、確かにそうだわ。…早とちりをしてごめんなさい。」
リリィは時間を稼ぐことにした。少なくとも自分とマルクが森に入ったことは母親が気付いているはずだ。もしかしたら異変に気が付いて助けに来てくれるかもしれない。マギーは今のところ自分たちとの会話を嫌がっている様子はない。このままの調子で会話を続けようと考えた。
「さて、お話を続けましょう。人と話すなんて久しぶりなので楽しくて楽しくて。えっとお名前は何でしたっけ?」
二人は自分の名前を男に伝える。
「マルクさんとリリィさんですね。ではマルクさん、何か私に言いたいことがあるようですが何でしょうか?」
マルクは男をじっと見つめて言った。
「マギーさん、あなたを本物の魔法使いだと思ってお願いします。僕に…僕たちに魔法を教えてくれませんか?」
少年は自分が2年前に諦めた夢を叶えるため一歩踏み込んだ。
マギーは本当に魔法使いなのでしょうか。
そしてマルクたちは魔法を教えてもらえるのでしょうか。
次回もお楽しみください。
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