表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/30

1-1 昔話

 昔々、あるところに青い衣を纏いし魔法使いがいました。


 魔法使いが使う魔法はまさに奇跡でした。


 その身に纏う強き力は天を裂き、


 その目が宿す熱き志は人々に勇気を与えました。


 その心を満たす心地良い優しさは大地を潤し、


 その口から生じる気高き意思は人々を導きました。


 その脚の悠然とした足跡は世界を安心をもたらし、


 その命が燃やした感情が生きとし生けるものに光を与えました。



 今日のお話は魔法使いの強き力のお話。


 

********************



 青い衣を纏った魔法使いには大きな力がありました。


 彼はその大きな力を使い、人の大地、ドワーフの山、エルフの森、龍の空、魔族の地下世界、更には神々の領域と様々な世界をそこに蔓延る闇と魔物を打ち滅ぼしながら旅をしていました。


 炎を燃やし、風を起こし、水を浮かべ、木を操り、大地を揺らして闇や魔物と戦いました。


 その中でも彼が得意としていた雷を落とす魔法でした。


 そんな数々の魔法を携えながら彼は旅を続けました。


 彼が人の大地を旅している最中、小さな小さな村に来ました。


 彼は村人の姿を見て驚きました。


 村人は皆飢えて痩せ衰え、顔に生気が感じられません。


 また村も悲しみに満ちていたのです。


 魔法使いは村人たちに聞きました。


「どうして皆そんなにお腹を空かせているのだい?」


 村人たちは答えます。


「ここ最近の話なのですが、我々が信仰する神が捧げ物を多く求めるようになったのです。それで私たちはお腹いっぱい食べれないのです。」


 魔法使いは村人たちに聞きました。


「どうして皆そんなに生気のない顔をしているのだい?」


 村人たちは答えます。


「ここ最近の話なのですが、我々が信仰する神がお日様を隠されたのです。それでお日様の光を浴びれず元気が出ないのです。」


 魔法使いは村人に聞きました。


「どうして皆そんなに悲しそうなんだい?」


 村人たちは答えます。


「ここ最近の話なのですが、我々が信仰する神が生贄を求めるようになったのです。それで村の娘たちを生贄に捧げてきました。明日は村長の娘の番なのです。」


 村人たちから話を聞くと最近この地を守る神様が変わったいました。


 魔法使いは言いました。


「それはきっと悪い悪魔がこの地を守る神様を隠してしまったのだ。そして神様に代わり祠に住み着き、村人たちを苦しめているに違いない。私がその悪魔を退治してあげよう。」


 魔法使いは村人と協力して村長の娘に化けて沢山の貢ぎ物と一緒に村近くの森にある神様を祀る祠に行きました。


「お父様、今までお世話になりました。今日から私は神様に嫁ぎ神様の元で暮らします。お父様、これからも村を導いていってください。」


 魔法使いは村長の娘になりきり、村長に挨拶しました。


 村長たちは頷いて村へ帰って行きました。


 するとどうでしょう。祠から声が聞こえてくるではありませんか。


「娘よ、こちらにおいで。私に顔を見せておくれ。」


 魔法使いは答えます。


「この地を守る神様でいらっしゃいますか。私が今宵の生贄でございます。」


 魔法使いは続けます。


「神様、私には神様がどちらにいらっしゃるか分かりません。どちらにいらっしゃるのでしょうか。」


 祠の声が答えます。


「私は目の前にいるよ。ほら祠へ近づいておいで。」


 魔法使いはゆっくり祠に近づきます。


「さぁ娘よ、早くベールを上げておくれ。」


 祠の声が早く早くと魔法使いを急かします。


 魔法使いはゆっくりと焦らすようにベールを上げていきます。


「おぉ、何と美しい唇だろうか。まるで人が育む赤い果実のように美しい。」


 魔法使いはベールをさらに上げていきます。


「おぉ、何と美しい鼻だろうか。まるでドワーフが鍛える光り輝く剣のように美しい。」


 魔法使いはベールをさらに上げていきます。


「おぉ、なんと美しい頬だろうか。まるでエルフが煎じる霊薬を飲んだかのように美しい。」


 魔法使いはベールをさらに上げていきます。


「おぉ、なんと美しい瞳だろうか。まるで龍がその手に握る水晶のように美しい。」


 魔法使いはベールをさらに上げていきます。


「おぉ、なんと美しい髪だろうか。まるで魔族が産み落とす黒き太陽のように美しい。」


 魔法使いはベールを捲り上げ、祠の方に目を向けます。


「なんと美しい顔立ちだろうか。まるで神々そのものを見ているようで感動すら覚える。」


 魔法使いは言います。


「この地を守る神様、どうか私にも御姿をお見せください。」


「いいだろう。」


 祠の声が聞こえたと同時に突然風が吹き荒れました。


 風が止むと目の前に大きな口に鋭い牙、真っ赤に血走った目に尖った耳、そして骨のような翼を持った化け物が現れました。


「それが貴方様の御姿なのですね。この地を守る神様、今まで捧げられた貢ぎ物はどこのいったのですか?」


 魔法使いの問いに化け物が答えます。


「私は食いしん坊でね、全て食べてしまったよ。」


「この地を守る神様、お隠しになったお日様はどこに行ったのですか?」


 魔法使いの問いに化け物が答えます。


「私はお日様が苦手でね、祠の中に隠してしまったよ。」


「この地を守る神様、今まで捧げられた村の娘たちはどこのいったのですか?」


 魔法使いの問いに化け物が答えます。


「私は美しい娘が大好きでね、私の周りに浮かぶ宝石に変えてしまったよ。」


 魔法使いは最後の問いを投げかけました。


「この地を守る神様、本当の神様はどちらに隠されたのですか。」


 その問いに化け物が豹変します。


「貴様は何者だ、村の娘ではないな?村の娘以外に用はない、今すぐに食ってやろう。」


 魔法使いの言う通り、この地を守る神様は悪魔と入れ替わってしまっていました。


「やはり悪魔の仕業だったのか。この青き魔法使いが退治してくれよう。」


 魔法使いが悪魔の戦いが始まりました。


 魔法使いが炎の魔法を放ちます。


「がはははは、なんと小さな火よ。我が口が吐き出すマグマの方が容易に全てを燃やし尽くせよう。」


 魔法使いが風の魔法を放ちます。


「がはははは、なんと優しいそよ風よ。我が翼が起こす竜巻の方が容易に重たい物を持ち上げよう。」


 魔法使いが水の魔法を放ちます。


「がはははは、なんと心地良い雨よ。我が手が放る水弾の方が容易に岩まで貫けよう。」


 魔法使いが木の魔法を放ちます。


「がはははは、なんと貧弱な蔓よ。我が尾が編む鎖の方が容易に敵を束縛できよう。」


 魔法使いは地の魔法を放ちます。


「がはははは、何とか弱い地震よ。我が脚が鳴らす足音の方が容易に地を揺らそう。」


 魔法使いの魔法はどれも悪魔に効きません。


「さぁ、小さな魔法使いよ。私に生きたまま食べられてしまうがいい。」


 悪魔は大きな大きな口を開けて魔法使いに迫ります。


「なんと強い悪魔だろうか。ならば私の最高の魔法でとどめを刺してやろう。」


 魔法使いが空に手を掲げると、どこからともなく現れた黒い雷雲が空を覆います。


 雷雲はゴロゴロと雷鳴を響かせます。


 魔法使いが手を振り下ろすと大きな光とともに雷が落ちてきました。


 雷は悪魔に直撃しました。


「ぎゃーーーーー!」


 悪魔は叫び声を上げながら、逃げて行きました。


 するとどうでしょう、悪魔の周りに浮いていた宝石たちが村の娘たちに姿を変えていくではありませんか。


 娘たちが言います。


「青き魔法使い様、お助けくださりありがとうございました。魔法使い様、お願いがあります。この地を守る本当の神様が祠の中にお日様と一緒に隠されています。どうかお助けください。」


 魔法使いは頷きます。


「いいだろう。この地を守る神様も助けてあげよう。」


 魔法使いは祠の中にある壺を割りました。


 すると中からお日様と美しい神様が現れました。


 神様は言いました。


「青き魔法使いよ、助けてくれてありがとう。お礼に貴方とこれから生まれるであろう貴方の子供に神の祝福を与えます。」


 そう言って魔法使いに祝福を与えて神様は消えていきました。


 その後、魔法使いと村の娘たちは村に帰りました。


 娘たちを連れ帰った魔法使いは大層村人たちに感謝されました。村人たちに魔法使いを招いて三日三晩宴を開きました。


 魔法使いはその後、村長の娘と結婚して幸せに暮らしましたとさ…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ