第1話 魔神の始まり
――――――――――此処は何処だ・・・・・・俺は誰だ。
何も見えず、何も聞こえず、ただただ暗く、闇しか存在しない。
そんな空間で、意識だけがボンヤリと夢見心地の様にふらついている。
感覚は無く、思考も緩やか。
揺蕩う意識に抗うことは敵わず、このまま目覚めることなく揺らめいていたい。
そんな希望を妨げるかのように、一つの光が差し込んでくる。
目を開けておらず、視覚も機能していない感覚なのにも関わらず、この闇の中に一筋の光が輝きを放つ。
光が、闇を照らし晴らす。
◆◆◆
――――――ガタンゴトン、ガタンゴトン
規則正しい音色と緩やかな衝撃が身体を揺すり、沈下していた意識が緩やかに浮上する。
だが意識は何秒経過してもハッキリとせず、未だに夢見心地だ。
うっすらと瞼が上がろうとするが、眩い光が眼球に差し込まれて開けられない。
――――――ガタンゴトン、ガタンゴトン
(・・・・・・ここは・・・電車の中か?)
進行方向の側面を向いて椅子に座っている感覚。
対面の窓から差し込む強い光で目が開けられず、朝日なのか夕日なのかも分からない。
――――――ガタンゴトン、ガタンゴトン
(・・・・・・そもそも、何で電車に乗って寝てんだっけ?)
規則的な物音と振動が心地よく、再び意識が落ちようとする。
どうにもならない無駄な抵抗を試みているところ、
「ああ、ようやくお目覚めかい」
不意に聞こえてきた女性の声に、意識が再度浮上した。
声が聞こえた方向から対面にいる事は分かっているが、変わらず日差しが眩しく目が開けられず、その姿を見ることが出来ない。
・・・・・・何となく美人な気がする。
「おやおや、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。当然と言えば当然なことだけど」
・・・・・・性格は残念な気がする。
「一応言っとくけど聞こえてるからね?」
・・・・・・・・・・・・
「」