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思案ノアカリ
風呂から去った後のアカリの話。
少し短いです。
窓から見える月の明かりが部屋を満たしている。
電気のスイッチはこの家に入った時に見たのを、真似したら消すことが出来た。
少し得意げな気分になるが、多分こっちでは常識なのだろうと思い少し自嘲気味に笑う。
ベッドに座り、今日の出来事を振り返る。
本当に良い人に出会う事が出来た。シズエさんは少し変な人だが、甥っ子思いの優しい人。
そして、タクマは見ず知らずの私を助け、私の話を聞いても怪しむ事もなく受け入れてくれた。
「やはりタクマは…。」
呟き、自分の考えをかき消すように首を振る。
例えタクマがそうであったとしても、彼のような優しい人がこちらの都合で利用される事などあってはならない。
(でも今は…。)
あの心優しき人達に頼る以外に生き抜く術はない。
それも事実である。
布団の中に入り、焦燥感と安心感に包まれながらも目を閉じる。
体は思った以上に疲れていたらしく、直ぐに睡魔が襲って来た。
意識が途切れる直前に考えていたのは、明日の買い物の事だった。