殺し屋とはこうあれ
1000文字ごえ、、、。
大変でした。
「お嬢様、お嬢様起きてください。学校の時間です。」
一週間前。
「それで、私のお仕事は。」
「ああ、私の娘の相手をしてくれ。」
「は?」
「知っての通り、私は大富豪だ。家族になにかあったら困る。だから、娘を守れ。」
その一言に、私は安心した。子供の御守りなどまっぴらだ。
「護衛、と言うことでよろしいですか?」
「それでいい。」
「1つ条件がございます。」
「なんだ?」
「1ヶ月でやめさせてもらいます。いいですね?」
「ああ、君のような人に1ヶ月守ってもらえるのなら安心だ。」
「それでは、明日から1ヶ月までと言うことで。」
「頼んだよ。伝説の殺し屋さん。」
そう囁くように言ったのは私の耳にしっかりと届いていた。
1日目。
「紹介しよう。私の娘、立花目目だ。かわいいだろう。傷知っての1つつけさせるなよ。」
「旦那様、何から守ればいいのですか?」
「すべてだよ。」
親バカが。
「かしこまりました。」
「目目、今日からこの人が目目の遊び相手だよ。」
「初めまして。立花目目です。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。目目お嬢様。」
「目目、この人は美景と言うんだ。」
「美景、美しい景色。綺麗な名前。」
偽名だけどな。
「それでは、何をすればいいのでしょうか?」
「そうだな、私はもう仕事に行くから、学校に送っていけ。」
「かしこまりました。」
初めに言っておこう。私は私はたたのメイドだ。
ただ副業で殺し屋をやっていたら、そっちのほうが儲かってしまい、今はフリーの殺し屋になっている。
一度は乗ってみたかった長いだけのリムジンに揺られること10分。
「学校につきました。」
「いこっか!」
「はい?」
手を引かれて連れていかれたのは教室だった。
学校は授業参観なのか、見える限り子供のそばに親らしき大人たちがいた。
中に入ると、すぐさまわかった。
彼らはみんな、殺し屋だと。
「先生!私の護衛人連れてきたよ!」
「あら目目ちゃん、これで安心ね。先生嬉しい。」
どういうことだ?今のお嬢様学校の生徒は授業にまで護衛をつけているのか。
馬鹿馬鹿しい、実に下らない。
学校が終わってからの帰りは歩きだった。
「美景はなんで家にきたの?」
「お嬢様を守るためです。」
「じゃ、話してもいいかな。」
「?」
「私ね、養子なんだ。今のパパは研究家で、自分の子供を改造してたんだって。それで死んじゃって、私を養子に引き取ったの。でも、私はその改造に適応できて、変な力が使えるんだって。だから、美景みたいな護衛を何人も雇って私という研究成果を他の人に渡さないようにしてるんだ。」
「その話は、本当ですか?」
「本当だよ。」
それは、とても低く、太鼓を鳴らしたときのように心臓に響く声だった。
「だから、命が惜しけりゃそのガキをよこせ。」
「死ぬしか、ねぇーだろーな!」
瞬間、その男の腕が私の体目掛けて投げたされる。
私はそれを左腕ではじき、そのまま相手の右腕を掴む。
と、同時に右腕を相手の左腕に捕まれる。
「へぇ、結構可愛い顔してるな。こいつは殺したあと楽しみだ!」
相手が勝った気でいた。
「私も楽しみです。なんなら、少しだけ先に。」
そう言って私は唇を差し出す。
「なんだいなんだい。のる気じゃねぇか。」
腕の力を緩める。
相手も力を抜いたのを確認する。
後はタイミングだ。
男がディープキスするつもりで舌を出したのを見て、すかさず力を緩めていた手を相手の肩におく。
それをバネに片足を相手の顎目掛けて蹴りとばす。
一瞬のうちに相手は倒れ、散らかっていく血液を見下ろしながら後ろに持っていた銃を手に取る。
「それでは。」
銃声はどこまで届いただろうか。
まあ、この時代警察なんて役に立たないのだが。
そういって歩き出した私達なのだが、靴の下にガムのような感触があり、確認すると男の舌だった。
この靴を捨てようと決めたのは言うまでもないだろう。
しばらくは無言だった。
私も少しだけ熱くなったと反省していた。
やはり子供の前であれは残酷すぎただろうか。
「ねぇ。」
そんなことを考えていると、お嬢様が何かを言った。
「あなたって、強いのね!」
喜んでる?
「毎日いろんな人が護衛するんだけど、その日のうちにみんな死んじゃうの。でも、あなただけは、あなただけは死なない。すごい。強い!」
「はあ、まあ、有難うございます。」
2日目。
時刻は朝方4時。
私は服を着替えて身支度を整える。
「目目お嬢様。朝でございます。」
「んん。ん。はい。」
「早く起きてください。今日も学校がございます。」
ガチャ、と扉の開く音が聞こえる。
「いや美景。その子が行きたくないのなら行かせなくていいぞ。だってそいつは俺の遺伝子を施した子供だぞ。天才なんだよ。」
「かしこまりました。」
現在、七日目。
なぜここまでとんだかと言えば簡単だ。
なにもなかったからだ。
男に襲われることも。なにも。
「お嬢様、お嬢様起きてください。学校の時間です。」
今までの一週間を振り返ると、とても楽な仕事だと思えた。
子供の相手をし、それを1ヶ月。
とても簡単で、今までの仕事のなかで一番簡単だと思う。
何もなければ。
その日も学校が終わり歩いていた。
できる限り歩数はお嬢様に合わせ、なるべくくっつくように歩く。
その時だった。
「お父様だ。」
「え?」
看るとそこには、旦那様がいた。
軍隊をかかえて。
「やあ美景君。いままでご苦労様だった。給料は必ず払うよ。だからどきなさい。」
「旦那様、なにをするのですか?」
「私の研究をこの米軍さん達に見てもらうんだよ!」
「どきません。」
「なんだって?」
「自分の娘を大事にしない人に、この子は渡しません。私の仕事はこの子を守ること。すべてから。」
「私からも守ろうと言うのか?」
「その通り。よくそんなちんけで人の気持ちを考えれない頭で思い付きましたね。」
「私を侮辱するのも、いい加減にしろー!!撃て!撃て!」
銃声が鳴り響き、辺りが夜になったかのようにキラキラと輝く。
「仕方ありませんね。」
透明雨
こちらに向かっていたはずの弾丸はすべて向きを変え、その場に静止する。
「これが、私の力ですよ。旦那様。そしてこうすれば。」
弾丸はずれることなく全て出てきた銃へと戻っていく。
「あとは何で戦いますか?」
「いいだろう。私が相手だ。」
そう言って突っ込んでくるのはマンガの世界でしか知らない。
だがこいつは突っ込んでくる。
馬鹿みたいに、なげやりに、無理矢理に。
本当にこの人は。
「父親失格ですね。」
その言葉を口にすると、自然と力が入ってしまい、旦那様を見えないなにかで貫いてしまった。
「お嬢様、申し訳ございません。。」
「いいよ。私には美景がいてくれるもん。残りの1ヶ月、私と一緒にいてね。」
「ずっとお側にいます。」
「無理だよ。だって私、あと1ヶ月で死ぬもん。」
その言葉を聞いて下げていた頭を上げると、お嬢様は笑っていた。
「なぜ、そんな、笑っていられるのですか?」
「美景のおかげだよ。ありがとう。」
零れそうになった涙は下を向いて隠そう。
でも、溢れだしそうになった感情は、表情にするしかなかった。
「あなたは、私が守ります。すべてから。死というものからも。」
残りの23日を、私は生きてると実感できるだろう。
たまたま読んでいただいたのであれば有難うございます。