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八咫烏  作者: 千田幸兎
5/7

レポーター

第五話です!

今回は少し長めです。(結構)



「お疲れ様でした隊長!」

 

 ゲートの外にはタオルを持った白衣の着た女の人が立っている。

 

「ごめんね綾香、こんな夜中に……。誰かさんのせいで滅茶苦茶疲れたよ」

「とんでもないです!むしろ、もっと私を頼っちゃってください。こんなあほよりも……」

 

 綾華が差し出してくれたタオルを受け取り首に巻く。

 

「聞こえてますよ!綾香さん。それに隊長も聞いてないで俺のために反論してくださいよ」

「別にしなくたっていいだろ、事実だし」

「隊長⁉さっきまで『オマエは僕の部下だから仕方ない』とか言ってませんでし……」

「いいように解釈しすぎだアホ」

 

 尾上が慌てて何か言っていたが、ギロリと自分の方を向く綾華の目力で抑えられた。

 

「誰よ、『隊長、隊長』とか言って、説明もしないで連れてったのは」

 

 わっ、すごい目だ。今後、綾華は怒らせないように気をつけよう……。

 突然尾上が慌ててこっちに振り向く。

 俺、何も言わなかったけ?……とか思ってる顔でこっちを見るな。

 

「俺説明しませんでした?」

「しなかった。突然ここに入れられたかと思ったら突然訓練が始まったし。それと、さっきお前に言った事と今疲れているのは全くの別問題だ」

「尾上ぃー、何してんのよぉ。これだから新人は」

 

 綾華はやれやれといった顔で首を振る。

 

「すみません隊長。俺てっきり説明したものだと思ってて……」

 

 すごい勢いで頭を下げてくる。

 

「まぁ、次からはちゃんと用を話してから連れてってくれ」

「ほんとすみません…次から気をつけます」

 

 尾上は頭を下げてさっきよりしょげている。

 

「とっ、というか、綾華さんも俺とあまり変わらないじゃないですか〜」

 

 まさに流れるよに話題を変えるとは、このことだと思う……。

 シュンとしたり、怒ったり、尻尾を振ったり……忙しい奴だ。

 

「何言ってるのよ、私は用事も伝えないで隊長を連れてったりしないわよ」

「隊長の話じゃないですよ、年の話です」

 この二人、なんだかんだで仲がいいよな。喧嘩するほどってやつか。

 でも……。

「綾華もっと怒ってやってよ。勝手につれてこられただけじゃなくて、"尾上が来るまでスキルを使えない"っていうオプション付きだったんだから」

 

 火に油を注ぐ。でも1回、コイツは本気で怒られたほうがいいと思う。右腕一本分ぐらいはな……。

 

「中々格好が変わらないなぁーと思ってたら、そんなことになってたんですか!?こっちに言ってくださいよぉ」

 

 綾華の顔が怒りから焦りに染まっていく。

 

「えぇー!?そんな事になってたんですか?俺全く知らないです」

 

 尾上が自分に向き直りながら全力で手を振る。

 

「あっごめん、羽黒クンの設定変わってた? 多分俺のせいなんだけど」

 

 袖に縫い止められた金の八咫烏が目立つ男と、眼鏡をかけた小柄な男が、音もなく綾華の後ろから現れると、二人の顔が一気に固くなった。

 

「いやぁ~"どうなるかなぁ〜"と思って見てたけど、案外スキル無しでもしっかり対応できるじゃん」

 

 ヘラヘラと笑いながら話を進める。

 苦手だ。

 

「羽賀。お前か僕の設定変えたのは」

「別に羽黒クンのことが嫌いだからって訳じゃないよ」

「むしろ、それが本音だったら大問題だ」


「確かにねー」と羽賀がまたヘラヘラ笑う。 

 一様これでも歴とした第四部隊の隊長というのだから恐ろしい。

 なんとなく尾上ではないと思っていたが、羽賀だったか……。

 

「羽賀さんでしたか、次からはやらないでくださいよ。勝手に設定を変えるなんて、ホントに危ないんですから」

「でもさ、実戦どんな状況になるかなんて、誰にも分からないからないじゃない。慣れといたほうがいいと思うけどね。一部隊の長なら、なおさらさ」

 

 綾華も呆れながらも納得したようだ。

 この人なら設定を何も言わずに変えてしまう、と。


「そんな言い訳、今しないでくださいよ。今回はうちの隊長がすみませんでした。少し目を離したすきに…」 


 羽賀の隣に立っていた眼鏡の人が頭を下げてくる。

 君等の隊長は子供なのかな?目を離した隙にって…


「ほら、隊長も謝ってください。例え隊長自身の考えがあったんだとしても、現に相手を困らせたんですから」

「悪かったね、羽黒クン、綾華ちゃんも。じゃ、俺は“設定変えちゃった”って伝えに来ただけだから、これで」

 

 そう言って手をひらひらさせながら、羽賀は部屋を出ていった。

 横に立ってた男も「すみませんでした」とこちらに一礼してから、羽賀の後を追いかけ部屋を出ていった。

 

「俺には謝罪ないんですかぁ?」

 

 羽賀が出ていった数秒後、尾上が大声、なわけはなく、尾上がとなりでボソッと呟いた。

 

「絶対俺が犯人扱いされてたの聴いてましたよね、あの人……」

 

 尾上の言っていることは理解できるが、そもそもの論点がズレてきている。

 

「お前だってあの人のこと知っているだろう。ああいう人だ」

 

 これはまた長話になりそうだ。めんどくさくならないうちにさっさと帰ろう。

 

「ああ、そういえば――今日はもう上がるよ」


 時計を見ながら、何気ない調子で言う。


「隊長、もう帰られるんですか? 夜道、気をつけてくださいね」


 綾華が柔らかく微笑む。

 指を鳴らすと、隊服の装いが解け、いつもの服に戻る。


「じゃあ、また明日。尾上は反省文な」

「えっ!? ちょ、隊長それ初耳――」

「当然だろ。それより筋トレメニューのほうがいいか?」

「えっ⁉ゔ、うーん…」


 顎に手を当て本気で考えだしている尾上の横で、綾香が小さく吹き出している。


「冗談だ」


 尾上が固まった。


「今日の報告書です。もうまとめてあります」


 綾香から差し出された紙束は、まだインクの匂いが残っていた。

 確認すると、訓練が終わってまだ数十分しかたってないのに、完璧な報告書が出来上がっている。


「仕事早いな。助かる。ありがとう」

「いえ。隊長こそ、お疲れ様でした」


 軽く手を振り、ドアへ向かう。


 背後で尾上が何かを言いかける。


「俺はーー……」


 だが、その続きを聞く前に扉は静かに閉まった。

 よし、聞かなかったことにしよう。

 廊下は夜の静けさに包まれている。

 今日も一日、無事終了。

 ――さて、帰るか。

良ければ、読んで、リアクションをしてもらえると嬉しいです!

(プラス感想をいただければ作者が泣いて喜びます)



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