レポーター
第五話です!
今回は少し長めです。(結構)
「お疲れ様でした隊長!」
ゲートの外にはタオルを持った白衣の着た女の人が立っている。
「ごめんね綾香、こんな夜中に……。誰かさんのせいで滅茶苦茶疲れたよ」
「とんでもないです!むしろ、もっと私を頼っちゃってください。こんなあほよりも……」
綾華が差し出してくれたタオルを受け取り首に巻く。
「聞こえてますよ!綾香さん。それに隊長も聞いてないで俺のために反論してくださいよ」
「別にしなくたっていいだろ、事実だし」
「隊長⁉さっきまで『オマエは僕の部下だから仕方ない』とか言ってませんでし……」
「いいように解釈しすぎだアホ」
尾上が慌てて何か言っていたが、ギロリと自分の方を向く綾華の目力で抑えられた。
「誰よ、『隊長、隊長』とか言って、説明もしないで連れてったのは」
わっ、すごい目だ。今後、綾華は怒らせないように気をつけよう……。
突然尾上が慌ててこっちに振り向く。
俺、何も言わなかったけ?……とか思ってる顔でこっちを見るな。
「俺説明しませんでした?」
「しなかった。突然ここに入れられたかと思ったら突然訓練が始まったし。それと、さっきお前に言った事と今疲れているのは全くの別問題だ」
「尾上ぃー、何してんのよぉ。これだから新人は」
綾華はやれやれといった顔で首を振る。
「すみません隊長。俺てっきり説明したものだと思ってて……」
すごい勢いで頭を下げてくる。
「まぁ、次からはちゃんと用を話してから連れてってくれ」
「ほんとすみません…次から気をつけます」
尾上は頭を下げてさっきよりしょげている。
「とっ、というか、綾華さんも俺とあまり変わらないじゃないですか〜」
まさに流れるよに話題を変えるとは、このことだと思う……。
シュンとしたり、怒ったり、尻尾を振ったり……忙しい奴だ。
「何言ってるのよ、私は用事も伝えないで隊長を連れてったりしないわよ」
「隊長の話じゃないですよ、年の話です」
この二人、なんだかんだで仲がいいよな。喧嘩するほどってやつか。
でも……。
「綾華もっと怒ってやってよ。勝手につれてこられただけじゃなくて、"尾上が来るまでスキルを使えない"っていうオプション付きだったんだから」
火に油を注ぐ。でも1回、コイツは本気で怒られたほうがいいと思う。右腕一本分ぐらいはな……。
「中々格好が変わらないなぁーと思ってたら、そんなことになってたんですか!?こっちに言ってくださいよぉ」
綾華の顔が怒りから焦りに染まっていく。
「えぇー!?そんな事になってたんですか?俺全く知らないです」
尾上が自分に向き直りながら全力で手を振る。
「あっごめん、羽黒クンの設定変わってた? 多分俺のせいなんだけど」
袖に縫い止められた金の八咫烏が目立つ男と、眼鏡をかけた小柄な男が、音もなく綾華の後ろから現れると、二人の顔が一気に固くなった。
「いやぁ~"どうなるかなぁ〜"と思って見てたけど、案外スキル無しでもしっかり対応できるじゃん」
ヘラヘラと笑いながら話を進める。
苦手だ。
「羽賀。お前か僕の設定変えたのは」
「別に羽黒クンのことが嫌いだからって訳じゃないよ」
「むしろ、それが本音だったら大問題だ」
「確かにねー」と羽賀がまたヘラヘラ笑う。
一様これでも歴とした第四部隊の隊長というのだから恐ろしい。
なんとなく尾上ではないと思っていたが、羽賀だったか……。
「羽賀さんでしたか、次からはやらないでくださいよ。勝手に設定を変えるなんて、ホントに危ないんですから」
「でもさ、実戦どんな状況になるかなんて、誰にも分からないからないじゃない。慣れといたほうがいいと思うけどね。一部隊の長なら、なおさらさ」
綾華も呆れながらも納得したようだ。
この人なら設定を何も言わずに変えてしまう、と。
「そんな言い訳、今しないでくださいよ。今回はうちの隊長がすみませんでした。少し目を離したすきに…」
羽賀の隣に立っていた眼鏡の人が頭を下げてくる。
君等の隊長は子供なのかな?目を離した隙にって…
「ほら、隊長も謝ってください。例え隊長自身の考えがあったんだとしても、現に相手を困らせたんですから」
「悪かったね、羽黒クン、綾華ちゃんも。じゃ、俺は“設定変えちゃった”って伝えに来ただけだから、これで」
そう言って手をひらひらさせながら、羽賀は部屋を出ていった。
横に立ってた男も「すみませんでした」とこちらに一礼してから、羽賀の後を追いかけ部屋を出ていった。
「俺には謝罪ないんですかぁ?」
羽賀が出ていった数秒後、尾上が大声、なわけはなく、尾上がとなりでボソッと呟いた。
「絶対俺が犯人扱いされてたの聴いてましたよね、あの人……」
尾上の言っていることは理解できるが、そもそもの論点がズレてきている。
「お前だってあの人のこと知っているだろう。ああいう人だ」
これはまた長話になりそうだ。めんどくさくならないうちにさっさと帰ろう。
「ああ、そういえば――今日はもう上がるよ」
時計を見ながら、何気ない調子で言う。
「隊長、もう帰られるんですか? 夜道、気をつけてくださいね」
綾華が柔らかく微笑む。
指を鳴らすと、隊服の装いが解け、いつもの服に戻る。
「じゃあ、また明日。尾上は反省文な」
「えっ!? ちょ、隊長それ初耳――」
「当然だろ。それより筋トレメニューのほうがいいか?」
「えっ⁉ゔ、うーん…」
顎に手を当て本気で考えだしている尾上の横で、綾香が小さく吹き出している。
「冗談だ」
尾上が固まった。
「今日の報告書です。もうまとめてあります」
綾香から差し出された紙束は、まだインクの匂いが残っていた。
確認すると、訓練が終わってまだ数十分しかたってないのに、完璧な報告書が出来上がっている。
「仕事早いな。助かる。ありがとう」
「いえ。隊長こそ、お疲れ様でした」
軽く手を振り、ドアへ向かう。
背後で尾上が何かを言いかける。
「俺はーー……」
だが、その続きを聞く前に扉は静かに閉まった。
よし、聞かなかったことにしよう。
廊下は夜の静けさに包まれている。
今日も一日、無事終了。
――さて、帰るか。
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