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八咫烏  作者: 千田幸兎
3/7

クリア

第三話です!

 気づけば、そこは体育館ほどの広さを持つ、無機質な空間だった。

天井は高く、壁は灰色の金属で覆われている。どこからともなく淡い光が差し込んでいるが、照明の姿は見えない。床は滑らかな石のような材質で、足音が反響する。

 そしてさっきまでいたはずの子供が消えている。


「克斗さん、戻ったってことはクリアですか?」


 出口へ早足で向かう自分に尾上が小走りでついてくる。


「そういうことだな」

 ……疲れた早く帰りたい

「俺気づきませんでしたけど、あの子が今回のNPCだったんですね」

「そうだよ、あの子を助けて怪物を倒すことが今回の任務は達成条件」


 尾上は一人で……そうだったんですか……と納得した顔をしている。


「そんなことより、さっきまでの隊長呼びはどこにいったんだよ」


 追いついた尾上は少し先を歩きこっちに顔を向ける。


「仕事終わったんで、もういいかなぁーと思って。それよりぃ〜、俺、走ってきたんですよ!褒めてくださいよ〜」


  心なしか尾上に尻尾と耳が生えているかのように見える。

 ……そんなにニコニコしながら見るな……

 尾上の方が年上のはずなのに、立場では自分の方が上なことが不思議で仕方がない。

 ……将来絶対にこんな奴にはならないようにしよう……と心に誓う。

 こんな事を思いながら、返事の代わりに冷たい目線を送ってやる。


「そんな冷たい目で見ないでくださいよぉ」


 おっと、わかったか、次から気をつけよう。

 しかし、コイツに何も反応してやらなかったこっちが悪いのだろうか?

 「……メンドい…」

 「克斗さん、今何か言いました?」

「いや、何も…よくやったな、えらかったよ。六キロなんてよくはしってきたなー」


 全くの棒読み。何より目に力がこもってない。


「プログラムでも、子どもには優しいのに…」


 褒めてくれと言った当の本人も下にしゃがんで不貞腐れ…じゃなくて、諦めた顔だ。

……それにしても、お前がイジイジしてるのは土じゃなくて、僕の目より冷たいタイルだぞ……

 それに尾上言う通り、さっきまでの世界は訓練でのプログラムでしかない。

 自分の仕事が終わり、外に出て帰ろうとしていたところをコイツに見事捕まり、半強制的に尾上の訓練がスタートしたのだ(巻き込まれたんだ)。


「それにしてもよく付き合ってくれましたね。てっきり俺置いて一人で帰っちゃうかと思ってました」


 もう機嫌が治ったのか立ち上がって、また歩き始める。

……お前のせいだろ!僕は説明もしないでいきなりここに連れてこられたんだぞ……とは言えず。


「当たり前だ。周りの能力が上がらなければ、僕はもっと苦労する」


……駄目な上司でも態度だけはやっておかないと……

 苦笑しながら尾上はこっちを見る。


「隊長、今回はありがとうございました」


 ……疲れてるのに後輩に合わせるなんて、どれだけ良い上司なんだ……


「もちろんだ。お前は僕の部下だからな」

「部下って…」

「なんか言ったか?」

「いえッ!なにも」

 考えていることは酷いが、さっきの褒め言葉より幾分かは感情がこもっている。きっと…

(それでも、解って言ってたんですか!とかうるさい声が聞こえてきそうだ…)


「それより、お前はもう少し鍛えたほうがいい。このまま現場に出ても邪魔扱いしかされない」


 尾上が自分を追い越し、目の前に来る。


「それなら大丈夫ですよ、もう現場でたことありますから。それに、まだ邪魔者扱いもされてないんで、安心してください!」

 ……どうだか……

「あっ、今ちょっと失礼なこと考えてませんでした?」


 尾上が覗き込んでくる。


「そんなことは置いといて、邪魔なんてそうそう口に出されて言われることじゃねぇよ」


 尾上のけて出口であるゲートを通る。

「置いとかないでくださいよぉ〜」

 尾上も少し怒りながら後を追いかけてきた。

 


良ければ、読んで、リアクションをしてもらえると嬉しいです!

(プラス感想をいただければ作者が泣いて喜びます)



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