クリア
第三話です!
気づけば、そこは体育館ほどの広さを持つ、無機質な空間だった。
天井は高く、壁は灰色の金属で覆われている。どこからともなく淡い光が差し込んでいるが、照明の姿は見えない。床は滑らかな石のような材質で、足音が反響する。
そしてさっきまでいたはずの子供が消えている。
「克斗さん、戻ったってことはクリアですか?」
出口へ早足で向かう自分に尾上が小走りでついてくる。
「そういうことだな」
……疲れた早く帰りたい
「俺気づきませんでしたけど、あの子が今回のNPCだったんですね」
「そうだよ、あの子を助けて怪物を倒すことが今回の任務は達成条件」
尾上は一人で……そうだったんですか……と納得した顔をしている。
「そんなことより、さっきまでの隊長呼びはどこにいったんだよ」
追いついた尾上は少し先を歩きこっちに顔を向ける。
「仕事終わったんで、もういいかなぁーと思って。それよりぃ〜、俺、走ってきたんですよ!褒めてくださいよ〜」
心なしか尾上に尻尾と耳が生えているかのように見える。
……そんなにニコニコしながら見るな……
尾上の方が年上のはずなのに、立場では自分の方が上なことが不思議で仕方がない。
……将来絶対にこんな奴にはならないようにしよう……と心に誓う。
こんな事を思いながら、返事の代わりに冷たい目線を送ってやる。
「そんな冷たい目で見ないでくださいよぉ」
おっと、わかったか、次から気をつけよう。
しかし、コイツに何も反応してやらなかったこっちが悪いのだろうか?
「……メンドい…」
「克斗さん、今何か言いました?」
「いや、何も…よくやったな、えらかったよ。六キロなんてよくはしってきたなー」
全くの棒読み。何より目に力がこもってない。
「プログラムでも、子どもには優しいのに…」
褒めてくれと言った当の本人も下にしゃがんで不貞腐れ…じゃなくて、諦めた顔だ。
……それにしても、お前がイジイジしてるのは土じゃなくて、僕の目より冷たいタイルだぞ……
それに尾上言う通り、さっきまでの世界は訓練でのプログラムでしかない。
自分の仕事が終わり、外に出て帰ろうとしていたところをコイツに見事捕まり、半強制的に尾上の訓練がスタートしたのだ(巻き込まれたんだ)。
「それにしてもよく付き合ってくれましたね。てっきり俺置いて一人で帰っちゃうかと思ってました」
もう機嫌が治ったのか立ち上がって、また歩き始める。
……お前のせいだろ!僕は説明もしないでいきなりここに連れてこられたんだぞ……とは言えず。
「当たり前だ。周りの能力が上がらなければ、僕はもっと苦労する」
……駄目な上司でも態度だけはやっておかないと……
苦笑しながら尾上はこっちを見る。
「隊長、今回はありがとうございました」
……疲れてるのに後輩に合わせるなんて、どれだけ良い上司なんだ……
「もちろんだ。お前は僕の部下だからな」
「部下って…」
「なんか言ったか?」
「いえッ!なにも」
考えていることは酷いが、さっきの褒め言葉より幾分かは感情がこもっている。きっと…
(それでも、解って言ってたんですか!とかうるさい声が聞こえてきそうだ…)
「それより、お前はもう少し鍛えたほうがいい。このまま現場に出ても邪魔扱いしかされない」
尾上が自分を追い越し、目の前に来る。
「それなら大丈夫ですよ、もう現場でたことありますから。それに、まだ邪魔者扱いもされてないんで、安心してください!」
……どうだか……
「あっ、今ちょっと失礼なこと考えてませんでした?」
尾上が覗き込んでくる。
「そんなことは置いといて、邪魔なんてそうそう口に出されて言われることじゃねぇよ」
尾上のけて出口であるゲートを通る。
「置いとかないでくださいよぉ〜」
尾上も少し怒りながら後を追いかけてきた。
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