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王立学園の死神は放課後に命を弄ぶ ~両親を殺された侯爵令嬢が死神となって悪人を楽しくざまぁする異世界近代魔法ミステリー!?~  作者: 猫月九日
第三幕 スラム調査編

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第28話 嗅覚と役割

「アリア……」


 メッセージは受け取った。後は助けに行くだけ。

 急速にリーネの心が冷静になっていく。


(改めて考えれば、魂石にしたところでアリアの場所が聞こえるかはわかりませんしね)


 相手は人間ではなく、犬の魔物だ。心の声が聞こえたところで、それが犬語だったりしたら意味がない。


(この匂いを辿るしかないですね)


 犬の魔物につけられた香水の匂いはかなり濃い。

 その匂いを辿っていければ、アリアの場所までたどり着けるかもしれない。

 しかし、普通の人間には無理な話だ。それこそ、犬並みの嗅覚がなければ。


「だったら、犬並みの嗅覚を手に入れればいいだけですよね」


「何をするつもりだい?」


 つぶやいたリーネの言葉に、レイヴンが反応をした。


「死神の力を使って、私の嗅覚を犬並みに強化します。それでこの匂いを追っていくのです」


「なるほど……確かにこれだけ強い匂いであれば、ところどころに匂いが残っていてもおかしくはないけど……それは大丈夫なのかい?」


「……大丈夫とは?」


「犬の嗅覚は人間の百倍以上も優れていると聞いたことがある。そんなのを人間が感じたら、どうなるかわからないぞ」


「……」


 レイヴンの指摘はもっともだった。

 そんな嗅覚を人間が手に入れたら、頭がおかしくなってしまうかもしれない。


「でも、やるしかないでしょう? それとも別の犬を用意しますか?」


 もちろん、そんなことをしている場合はない。濃い匂いとはいえ、時間が経てば薄れていく。

 一刻も早く向かう必要があるのだ。


「……その役割、僕ができないかな?」


「は?」


 レイヴンの言葉に、リーネは思わず、顔を上げてレイヴンの方を見た。

 レイヴンはいつものヘラヘラとした表情ではなく、真剣な表情を浮かべていた。


「リーネ嬢、僕は貴方の使徒だ。そういう役割は僕の仕事だろう?」


「レイヴン様……」


「それに万が一、リーネ嬢に何かあったらそれこそ大変なことになるからね。その点、僕がやれば君に治してもらうことができるだろうし」


 合理的だろう? と笑うレイヴン。

 しかし、その笑顔の裏には強い決意が見え隠れしていた。


「……どうなるかわかりませんよ?」


「大丈夫だ。それにどうなっても、リーネ嬢がなんとかしてくれるだろう?」


「……わかりました。あなたの命は私が預かりましょう」


 リーネも覚悟を決めて頷き、レイヴンに近づいた。

 リーネが手を差し出すと、空気を読んだレイヴンがリーネの前にしゃがみ込んだ。


「レイヴン様に祝福を……」


 リーネはレイヴンの頭に手を置き、死神の力を注ぎ込んでいく。


(ゆっくりと……これは冗談ではすみませんよ)


 さすがのリーネもここでは慎重にならざるを得なかった。


「……っ……ぁ」


「大丈夫ですか?」


「ぁあ……少しふらついただけだ……まだ……だけど、ごめん、少し黙るよ……」


「わかりました」


 レイヴンが苦しそうに顔を歪めてふらついた。

 しかし、感覚的にまだ足りないみたいだ。

 リーネは慎重にしかし、さらに死神の力を注いでいく。


「……ぅ……ぁ……っ!」


 時折呻きながらも、レイヴンは耐えている。

 そして、しばらくして、レイヴンの身体がそのまま崩れ落ちた。


「レイヴン様!?」


 慌てて、注ぎ込むのをやめて、レイヴンの身体を抱きかかえるリーネ。

 今度は回復の祝福を注ぎ込んでいく。


「……ぅ……ぁ……」


「レイヴン様! 大丈夫ですか!?」


「……ぁあ……大丈夫、一瞬、意識が飛んだだけ……だよ……」


 レイヴンはふらふらとしながらも、ゆっくりと顔を上げて、震える足でそのまま立ち上がった。


「……わかったよ、アリア嬢の場所が……案内しよう」


「でも……」


「早く助けに行こう」


「……わかりました」


 レイヴンはまだ辛そうだ。リーネの回復でも、その精神疲労までは回復しなかったのだ。

 しかし、レイヴンはそれでも前を向いて歩き出した。

 休ませたほうがいいという理性が働くが、リーネはレイヴンの決意を尊重した。


「案内をお願いします」


「うん、任せて」


 言葉少なく、ただ、しっかりとした足取りで歩き出したレイヴン。

 リーネはその後ろをついていくことしかできなかった。



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